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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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セレーネ達の試合の感想

 控え室に戻ってきたセレーネとフェリシアは、レイアーに迎えられた。


「お二人とも、お見事な試合でした。ですが、セレーネ様は、少々やりすぎだったかと」

「最後の?」

「はい。使用可能な魔力のほとんどをお使いなられたと思います。あのままフェリシア様が潜り抜けてきた場合の備えがありませんでした。あれで倒せると踏んでいたとしても、三つの魔術陣で十分だったかと」


 レイアーの指摘は、最後の魔術の数に関するものだった。リーシアとの約束の魔力量ギリギリを攻めたものだったが、その後の備えはしっかりと考えておくべきだったということを言っているのだ。


「むぅ……分かった」


 リーシアの指摘はもっともだったので、セレーネも素直に頷いた。


「フェリシア様は、最後にもう少しだけ粘れると良かったかもしれません。【氷海樹氷】の制御は見事でしたが、そこから空中にいるセレーネ様への対処を諦めてしまいましたから」

「あの数の剣を見たら、さすがに無理だと思いますよ」

「結界で防ぎつつ、魔術で攻撃することもできました。セレーネ様の魔力の残量が少なくなっていることはわかっていたはずです。絶対に勝てなかったとは言わせませんよ?」


 そう言われて、フェリシアは少し考える。先程の試合を振り返り、最後の場面を思い起こすと、


「確かに……そう言われると、早々に諦めていたかもしれません」

「最後に一矢報いる気持ちを持つと良いでしょう。フェリシア様の技術があれば、勝ちを拾える確率は大きいので」

「分かりました」


 レイアーとの反省会を終えたところで、セレーネはフェリシアの膝に乗って血を飲む。そうして失った血液を取り戻していき、次の試合に備えていく。


────────────────────


 控え室での反省会をしている一方で、貴族観覧席では、ラングリドが安堵のため息を零していた。


「ふぅ……心臓が止まるかと思ったぞ」

「あなたはセレーネを弱く見過ぎだと思います。あの子も高等部に入り、様々な経験を経ているのですよ? もう少し信じてあげても良いのでは?」

「そうは言うがな……」


 ハラハラとした状態で試合を観ていたラングリドに対して、ミレーユは冷静にそう言った。ミレーユとしても、心配する場面はあったが、それでも最後までセレーネの無事を信じていた。

 そんなラングリドとミレーユの横で、ライルとテレサも二人の試合の感想を言い合っていた。


「セレーネも凄いが、フェリシアの方も負けず劣らずの強さだな。ただ、魔術の構築速度に関しては、セレーネの方が優れているようだ」

「あの子は、空間魔術の研究をしているから、複雑な魔術陣の構築もかなり慣れているのよ。対して、フェリシアは魔術の選択が正確で判断が早い。そこでセレーネと張り合えているのね」

「風魔術の使い方はどうだ? テレサは得意だっただろう?」

「どっちもいまいちかしら。【風槌】を上手く使っていたけれど、セレーネも風を使って浮く事が出来れば、あの高さに行っても、何も問題なかったはずだから。フェリシアも【風槌】の範囲を広げれば、対応出来たはず。もう少し風魔術を利用しておくべきね」

「辛口だな」


 テレサの評価に、ライルは苦笑いでそう言った。それに対して、テレサは淡々と答える。


「甘やかすばかりが愛じゃないわ」

「それもそうか。そういや、セレーネが最後に使っていた魔術に関しては、何か知っているか?」

「知らないわ。でも、セレーネの事だから、研究をしている内に思い付いたとしても不思議じゃないわね」

「なるほどな。確かに言えている。計十三本の剣……あれは結界か。それがフェリシアを狙って動き回る。制御はセレーネがしているとすれば、相当な処理能力だな。魔術陣から何か分からないか?」

「一瞬しか見えないのに、判別なんて出来ないわ」

「無理か」


 そんな会話をしているライルとテレサから離れた場所で、ユイはルージュ公爵家の席に座り、内心唖然としていた。


(私が基礎化を頑張っている魔術をあそこまで使いこなすって……てか、さりげなく魔術陣がある程度簡単になっていたような……私の簡略化案を元にしているみたいだったけれど……ちょっと複雑な気持ちね……)


 苦笑いしながらユイはそう思っていた。自分の努力を平然とした顔で追い抜くセレーネに、少しの嫉妬の気持ちと大きな尊敬の気持ちを抱いていた。


(ただ、この試合を一回戦でやったのは失敗よね。次からの試合がおままごとのように感じてしまうかもしれないもの……セレーネ達へのちょっかいを止めさせるためのお父様達の考えは分かるけれど、他の生徒達がやる気を失わないかが心配ね。それに、やっかみが増える可能性もあるわね。セレーネ達が少しやり過ぎたというのもあるけれど……私の方でも、それとなく動いてみた方が良さそうね)


 ユイは、今の試合を観て、そう決意した。


────────────────────


 観客席で、カノン達もセレーネ達の試合に関して話していた。


「フェリシア様も良いところまで行ったのにね」

「お嬢様の方が一つ上だったかな。まぁ、これが終わったらお説教だけど」

「あははは……さすがに、【風槌】で自分を飛ばすのはやり過ぎですもんね」


 カノン達は、セレーネが【氷海樹氷】を避けた方法を、しっかりと見ていた。氷が広がる直前に自分に対して【風槌】を当てて高く跳び上がるという方法だった。セレーネがそれを思い付いた理由は、自分がフェリシアの【風槌】の余波で空高く飛んでしまったからだ。

 そこからの流れは見事と言う他ないが、カノンとしては自分に魔術を当てて飛ぶという方法は認めたくなかった。出来る事なら、もっと安全を確保してからにして欲しいと思うので、その事に関して説教する事が決まった。

 マリアは、セレーネがむくれる姿を想像して思わず笑いながらも同情していた。それと同時に周囲を見て少しだけ警戒しているような雰囲気になる。


「でも、今の試合の流れもやり過ぎだったかもですね」

「はい。素直な賞賛の言葉が多いですが、中には嫉妬等のやっかみもあります。お嬢様の周りには気を配っておきましょう」

「何か力になれそうな事があったら言ってね。私もセレーネ様達を守りたいから」

「ありがとう、スピカ」


 そう言って手を繋ぐ二人を見て、


(私の周りって、イチャイチャするのに人目を気にしない人多過ぎじゃない?)


 と思ってしまうマリアなのであった。

 続く試合は、セレーネ達の試合程の迫力はなかったが、それでも緊張感のある拮抗した戦いで、観客達も盛り上がっていた。試合の盛り上がりに関して、ユイが感じていた心配は、取り敢えずのところ杞憂で終わった。

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