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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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新しい生徒

 今日の授業が終わったところで、セレーネはミーシャの元に駆け寄る。


「ねぇ、ミーシャちゃん! 魔術結晶ってどうやって作るの!?」


 ミーシャは片付けをしながら答える。


「魔力結晶の錬金時に、魔術陣を取り込ませれば出来なくはないです。成功確率がかなり低いです。魔術陣を入れるタイミングなどが重要になってきますね」

「これって入れられる?」


 セレーネは、【空間倉庫】の魔術陣を見せる


「多重魔術陣ですか……大分厳しいと思われます。この規模の魔術陣を封入するとなると、魔力結晶も大きなものでなければなりません。持ち運びは難しくなるでしょう」

「そっか……確かにダンジョンコアは大きいし、この大きさは無理だよね……」

「はい。設置型の倉庫として扱うのなら、これでも大丈夫でしょう。これなら普通に使った方が良いでしょう」

「むぅ……魔術結晶を使うアイデアはない?」


 セレーネの再度の確認に、ミーシャは少し思考する。セレーネが悩んでいる事に対して、雑な回答はしたくないと思っているからだった。


「そうですね……この規模の魔術陣を封入するとなると無理としか言えないでしょう。それこそ、最上質の素材を使って出来るかもしれないといったところでしょうか。シローナ様に採ってきて貰いますか?」

「シローナちゃんを雑に扱い過ぎじゃない?」

「シローナ様であれば、喜んで採ってきますよ?」


 シローナを便利に扱っている気がしていたセレーネだったが、それをシローナが望んでいる事だと知って、何も言えなくなる。


「でも、危険じゃない?」

「シローナ様は、戦闘が得意ですので、大抵の事は危険ではないですね。戦闘に限っては、私とリーシア様よりも強いです」

「え、そんなになの?」


 セレーネの確認にミーシャは頷く。


「シローナ様は、リーシア様の血を引いているという事もあり、かなり器用な方です。なので、魔術薬も錬金術も並以上に出来ますが、それ以上の才能が戦闘方面にありました。クリムソン家の血でしょう」

「えっ……? うちの血って好戦的な血なの?」

「代々騎士を輩出していますので、戦い好きは多いかと」

「まぁ、間違ってはいないわよね。セレーネも動き回るのが好きじゃない。受け身よりも攻めの方が性に合っているでしょう?」

「うっ……」


 身に覚えのあるセレーネは、少しむくれながら、フェリシアに寄り掛かる。この場にいる全員がそういうところだと心の中で思っていた。


「じゃあ、もし素材があったらお願いって言っておいて。私が直接言えれば良いんだけど……」

「シローナ様には、セレーネ様のお屋敷に向かうようにお伝えしておきましょう。それとお屋敷に錬金釜を送りましょうか?」

「どういう事?」


 ミーシャの言っている事が理解出来ずに、セレーネは首を傾げる。


「私のお下がりになってしまうのですが、使っていない錬金釜がありますのでお渡しする事は出来ます」


 ミーシャからそう言われて、セレーネはカノンの方を見る。貰っても大丈夫なのか、一応確認しておかないといけないと思ったからだ。


「奥様に確認をして、部屋の二つを実験室に改装する事は出来ます。それまではお待ち頂けると」

「だって!」


 セレーネはキラキラと輝かんばかりの笑顔でミーシャを見る。そんなセレーネを見て、ミーシャはセレーネの頭を撫でた。


「では、準備が出来次第送りましょう。リーシア様のお古の魔術薬用器具もお持ちしますね」

「うん!」


 セレーネは新しい研究が出来る事を喜んでミーシャに抱きつく。ミーシャは、そんなセレーネの頭を優しく撫でた。


(小さな頃のシローナ様のようですね。最もシローナ様は研究資材などよりも遊んであげた方が喜びましたが)


 ミーシャと魔術結晶に関する話をしてから、セレーネ達は研究室へと来た。すると、そこには見覚えのない鮮やかな赤髪赤眼の女子生徒がいた。レイアーとミルズが話しているのを見て、セレーネとフェリシアは、新しく研究室に入ってきた新入生だと察した。


「邪魔だった?」

「構わん構わん。どうせ、お前達の後輩になるんだ。今の内に挨拶をしておけ」


 説明中なら邪魔になるかと思って気を利かせたセレーネだったが、ミルズはそんな事は気にしないで良いと中に入るように手招きした。


「この二人が研究室の先輩だ。お前よりも年下だけどな」

「あ、えっと、ユイ・ルージュです。よろしくお願いします」


 ユイが自己紹介すると、フェリシアは驚いていた。セレーネの方は特に何も感じている様子はない。


「セレーネ・クリムソンです」

「フェリシア・ウルトラマリンです。よろしくお願いします」

「クリムソンの……なるほど。貴方が件の方でしたか」

「ん? どゆこと?」

「ちょっ!? セレーネ!」


 何を言っているのか分からず、セレーネはいつも通りの調子で首を傾げる。すると、フェリシアが、即座に口を塞ぐ。


「構いませんよ。学園に通っている間は、身分の差は関係ありませんから。それに、公爵も侯爵もあまり変わりません」

「ん~?」

「ユイ様は、ルージュ公爵家の方なのよ。つまり、クリムソン侯爵家よりも上の家なのよ」


 フェリシアの説明で、セレーネはようやく納得した。フェリシアが焦っている理由などもそこ由来だろうと考える事が出来る。


「クリムソン侯爵家は、ルージュ公爵家の分家筋に当たると言われています。遠い昔の話ですが」

「う~ん……聞いた事があるような……あっ! カノンの授業でやったかも」

「ようやく思い出したわね……」


 研究以外の事になると、そこまで興味がない事も多いので、セレーネは言われるまで完全に忘れていた。


「先程も言いましたが、この学園では、お二人の方が先輩ですので、なるべくなら対等に扱って頂けると幸いです」

「じゃあ、ユイも同じで良いよ。私達年下だし」

「ちょっ!? セレーネ!?」

「そう? じゃあ、そうするわ。よろしくね。セレーネ、フェリシア」

「うん。よろしく」

「よ、よろしく……」


 ここまで来ると、フェリシアも同じにしなければ、相手の意思を蔑ろにしていると思われかねないので、少し緊張しながらもセレーネと同じように砕けた口調で話す事にした。


「自己紹介は終えたな。ユイは、魔術の分析を学ぶために、この研究室に来たらしい。これから課題なども渡すが、何かあればセレーネ達も助言してやってくれ」

「うん。良いよ」

「はい」

「よろしくね」


 こうして、新しく研究室に所属する生徒が入ってきた。これも新学期ならではの事だった。だが、悲しい事にユイ以外に新しく所属する生徒はいなかった。

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