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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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学年末

 それから更に二週間が経ち、高等部での一年が終わった。研究のレポートの提出と期末テストを終えたセレーネとフェリシアは、ミルズの研究室に来ていた。今しているのは、ミルズとの面談だ。


「それで、来年はどうするつもりだ?」


 これは研究室を変えるのかどうかの確認だった。


「このままで」

「私も同じです」

「分かった。セレーネは、空間魔術の研究室を作る事も出来るらしいが、それでも基礎魔術研究室で良いか?」

「うん」

「分かった。まぁ、お前の研究は、他の生徒には引き継ぎも何も出来ないものだから、このままここにいた方が良いかもな」


 ミルズも中間レポートなどを逐次貰っているので、セレーネの研究の進捗状況は知っている。そこから考えると、セレーネの研究はセレーネにしか出来ないものという結論を出す事出来るのだった。


「最後のレポートには、部屋の製作に難航中あるが、構築そのものが無理なのか?」

「えっと、構築自体は出来るけど、部屋の形の調整が難しいの。調整するために魔術陣を変えるんだけど、その変更を正確にしないと、形が歪になるから」

「なるほどな。確かに、この魔術陣なら微細な変化が大きく影響してくるだろうな。レイアーと相談しながらやると良いだろうな。魔術陣に関しては、学院の中で右に出るものがいないからな」

「うん。分かった」

「それじゃあ、今日はもう帰って良い。次の学年からは、より専門的な事を習う事になる。カノンだけではなく、他にも講師が付く事になる予定だ。クリムソン家からの紹介でな」

「ん? 何も聞いてないよ?」


 セレーネ自身ラングリドやミレーユからそんな話を聞いていないので、少々困惑していた。それに対して、ミルズは片手を振ってから答える


「そこは次の学期の楽しみにしておけ。ここから一週間の休みは、学園の施設のほとんども休みになる。そこは覚えておけ」

「はい」

「は~い」


 セレーネ達は、そのまま家へと帰ってきた。帰ってきてからする事は、やはり研究だった。セレーネは、【空間倉庫】の中に入って、中の様子を確認する。現在、生ものは一つも存在しない。その理由は、普通に腐ったからである。

 【空間倉庫】内が無菌状態だったが、持ち込んだ生ものには微生物が付いているので、そのまま腐ってしまうのだ。


「野菜の保管とかには、冷蔵庫が必要だし、肉とかは冷凍庫が好ましいよね。部屋割りは決めてあるから、これの構築魔術陣を見つけるだけ……後は、その部屋に付与効果を付ける。回復効果はどうしよう。付けられなくはないけど、普通に要らないよね。いや、もしかしたら、回復効果があれば痛みが少なくなったりするのかな?」


 疑問点が出て来たセレーネは、【空間倉庫】を出て、自室に戻る。そこで掃除をしているカノンに飛びつく。音でセレーネの動きが分かっていたカノンは驚きもせずに受け止める。


「どうされましたか?」

「回復魔術って、痛んだものにも効果ある?」

「痛んだもの……どうでしょうか。効果がないとは言えないですね。鮮度維持にも使えるかもしれません。実験しますか?」

「うん。素材とかの鮮度維持とかもしたいから、ちょっと試す」

「では、素材を用意してきます」

「うん」


 カノンが実験材料を用意してくれている間に、セレーネは魔術陣の見直しをしていく。構築する部屋は全部で五つ。冷凍庫、冷蔵庫、乾燥庫、食料冷蔵庫、食料冷凍庫の五つだ。食料と素材で、冷蔵庫は分ける事にしていた。これは衛生面を考えての事だ。

 なので、セレーネは区分けの魔術陣とそこに付与する効果を繋げて、一つの魔術陣にしていく。その間に、カノンは傷み始めた素材などを持って部屋に来ていた。


「持って参りました」

「ありがとう。じゃあ、テーブルに置いて」


 カノンが素材をテーブルに置いてから、セレーネは即席で回復効果を持つ結界を張る。スピカから教えを受けた事で、セレーネはこのくらいの結界なら、すぐに張る事が出来るようになっていた。これは、フェリシアも同じだ。

 張った結界は三種類。そのどれも回復効果を持たせているが、その強さを変えている。


「ひとまず観察かな。私、ちょっと外に出て、部屋作りの魔術を確認してくるね」

「はい。私は、変化を見守っておきます」

「うん。お願い!」


 セレーネは大きな庭で部屋割り結界の確認をしに向かう。セレーネが部屋を出たのを見て、クロから身体を起こす。


「行ってきても良いよ」

「にゃ~」

「うん。お願いね」

「にゃ~」


 クロは、セレーネを追って部屋を出て行った。それと入れ替わりに、フェリシアがマリアを連れて部屋に戻って来た。


「クロが勢いよく飛び出して行ったのだけど、セレーネは庭に?」

「はい。魔術の確認をするために向かいました」

「そう。せっかくだから、セレーネに見せてあげようと思ったのだけど。また後でになるわね」

「完成していましたか。どうでしたか?」

「良いものにして貰ったわ」


 フェリシアは、腰から一本の棒を取り出した。その棒の先端にはセレーネがくれた魔術結晶が埋め込まれている。フェリシアが魔力を通すと、その柄の両端から氷が伸びていって、氷の槍が出来上がった。無骨ながらも洗練された意匠の槍になっている。


「綺麗な槍になりましたね」

「ええ。手に馴染むから助かるわ。強度も普通の【氷槍】よりも高くて、破損すれば、私の魔力を吸い上げて勝手に修復する機能があるから、一々自分で魔力を通す必要がないのよね。大分有り難いわ。それで、悪いのだけど、後でカノンさんに模擬戦を頼んで良いかしら?」

「はい。お嬢様が帰ってきましたら、庭でやりましょう」

「ありがとう。助かるわ」


 フェリシアとカノンがそんな話をしていると、廊下の方からクロが走ってくる音が聞こえてきた。そして、扉が勢いよく開いて、セレーネを乗せたクロが入ってくる。


「クロ。廊下を走るなと何度も言っていると思うけど?」

「にゃ!」

「カノン! 成功した!」


 クロが返事をした直後に、セレーネが身体を上げて大きな声でそう言った。それはセレーネの実験が成功したという報告の言葉だった。


「それはおめでとうございます。ですが、クロを廊下で全力疾走させるのはおやめください」

「は~い。クロ、ありがとうね。早速魔術陣の整理をしないと!」


 セレーネはすぐに机に飛びついて、紙に魔術陣を転写して考え込み始める。その傍にクロが寝転がる。それを見てから、セレーネの事をマリアに任せて、カノンとフェリシアは庭で模擬戦をしていく。

 次の学年が始まるまでの間、セレーネとフェリシアは、それぞれのやるべき事をして準備を進めていった。

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