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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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【空間倉庫】

 それから二週間が経ち、セレーネの別空間収納魔術【空間倉庫(くうかんそうこ)】の魔術陣が一応完成を迎えた。一応という風になっているのは、まだセレーネ自身が納得出来る段階ではないからだった。

 【座標指定】【空間接続】【空間拡張】【座標変更】【座標記録】【結界棚】を組み合わせた魔術陣を三重に重ねた多重魔術陣で作り上げたものなのだが、かなりの複雑さと消費魔力になっていた。

 なので、セレーネは唇を尖らせながら【空間倉庫】の中を歩いていた。


「う~ん……部屋の構築までは出来なかったなぁ。あのテントと同じ感じにしたいのに……」

「テントの魔術陣の分析は、どのくらい出来たの?」


 一緒に【空間倉庫】に入っていたフェリシアが訊く。


「八割くらいかな。魔術陣自体がテント全体に広がっているから、割と読みにくいんだよね。でも、部屋を構築している結界魔術は、半分くらい分かってるんだ」

「そうなの?」

「うん。問題は、その魔術陣を付けようとしたら、魔術陣が一つ増えるって事。加えて、多重魔術陣にするために繋げる魔力線を考えるのと、部屋をどう構築していくのかっていう問題があるだけ。現状、倉庫の半分に棚を配置したシンプルな構造でしょ? この半分の他にどういう部屋が必要なのかとかを考えないといけないし、その部屋をどういう環境にするのかも考えないといけない。そうなると、魔術陣が更に複雑になるんだよね……テントの魔術陣ももっと無駄をなくせるようなものだったし」


 セレーネは肩を落としながらそう言う。現在の【空間倉庫】の環境は常温常圧常湿の状態になっている。この状態は、セレーネが特に弄らなくても勝手に維持される環境だった。これがシンプルな【空間倉庫】の状態だということもあって、一応の完成という事になっている。


「必要な環境となると、冷蔵と冷凍かしら?」

「後は湿度の高さと光源の有無。今は、周囲の壁が何故か光っているから、周囲が見えるけど、この光源が駄目な素材とかもあるかもしれないから、そこを考慮しないといけないかな。何にせよ、全部追加していく形だねぇ……消費魔力が増えるし、魔術陣も増える……本格的に私達しか使えない魔術になるんだよね……」


 セレーネ達しか使えない魔術というのが何を意味するのかと言うと、消費魔力が異常に高い事を意味する。つまり、使うのに消費魔力を気にしておかなければいけないという事になるのだ。セレーネが完成としたくない理由は、こういうところにある。


「最初の想定の二十倍くらい違うんだよね……理想通りとはいかないなぁ……」

「でも、ここに住めるくらいの場所になっているじゃない。こういう使い方も出来るのは良い事でしょう?」

「いや、ここの空気がどこまで保つか分からないから、そこまで良い事でもないよ。そこの検証もしないと。色々な物を置いて、時間経過でどんな変化があるかとか」

「ああ、それもそうね。その荷物は、検証用なの?」

「うん。色々と入れてきたから、棚に置いていくの。生ものとかもあるよ」

「生ものはやめておいた方が良いと思うのだけど……」

「駄目だよ。全部の検証はしておかないと。フェリシアも手伝って」


 セレーネは持ち込んだ荷物を棚の上に置いていく。食堂から貰った生魚や生肉、生野菜なども置いていった。


「取り敢えず、これで良いかな。クロ~! 外に出るよ~!」


 【空間倉庫】を全力疾走で遊んでいたクロが、セレーネの元に戻ってきて甘えてくる。セレーネは、クロの首をわしゃわしゃと撫でていく。


「楽しかった?」

「にゃ~!」


 クロが元気に返事をしたので、十分に楽しんでくれたのだという事が分かる。


「クロの運動場としては十分な能力を持っているみたいだね。そういう用途のためのものじゃないんだけどね」

「にゃ~!」

「まぁ、クロからしたら嬉しいね」

「にゃ~」


 カノンのように言葉を完全に理解出来るわけじゃないが、クロの鳴き声に含まれる感情くらいは、セレーネもある程度分かるようになっていた。今は、クロの楽しい嬉しいという気持ちを読み取って会話をしていた。クロの大きな頭を撫でた後、セレーネ達は【空間倉庫】から出て行き、入口を閉じた。


「明日から一日毎に調べて行く感じかな。時間が掛かるけど、時間経過でどう変化するのかは重要だからなぁ……その間に、魔術陣の見直しかなぁ……スピカは?」

「教会よ」

「むぅ……仕方ない。自分で頑張ろう」


 セレーネは、魔術陣を空中に投影して、多重状態のまま魔術陣の見直しを始める。セレーネが集中し始めたのと同時に、フェリシアは自分の机に向かって、自分の研究を始める。

 フェリシアは、特に何も思い付く事がなかったので、自分の得意な氷魔術を広く研究していく事にしていた。そのために、まずは氷魔術に関する論文を片っ端から読み漁っている。

 そこに部屋の掃除を終えたマリアがやってきた。


「新しい論文を用意しますか?」

「そうね。生産分野でお願いしようかしら」

「分かりました。学園の図書室で調べておきますね」

「ええ。お願い」


 今日は休日なので、平日になった際にフェリシアが授業を受けている間に学園の図書室からフェリシアが望む論文を探してくるという約束をする。マリアがこうして影ながらサポートしてくれるので、セレーネ達も論文探しに時間を大きく割く事はなく研究を続けていられる。


「セレーネ、テントはもう片付けて良い?」

「駄目! ちゃんと描き写してくる!」


 セレーネは庭に張りっぱなしになっているテントに向かって駆け出していく。


「ちょっ! セレーネ! メモ忘れ……もう! クロ! フェリシア様をお願いね!」

「にゃ」


 マリアにお願いされたクロが返事をすると、マリアはセレーネの筆記用具を持ってセレーネを追いかける。それと入れ替わりにカノンが部屋に戻って来た。


「にゃ~」


 クロは、カノンに向かって鳴く。それを聞いて、カノンはクロの頭を撫でた。


「お嬢様とマリアさんは庭に行かれましたか?」

「はい。テントの魔術陣を全部写すと言っていました」

「そうでしたか。【空間倉庫】の方はどうでしたか?」

「問題ないと思います。空気もありましたし、クロも全力で駆け回れましたから」

「空間自体の強度は問題なさそうですね。後は、部屋の構築の問題ですか……研究は来年も続きそうですね」

「消費魔力の問題などもありますので、ほぼ確実だと思います」

「お嬢様は、理想が高いですからね」


 改善点の炙り出しと機能検証など、まだやらないといけない事や問題点はある。だが、それでも【空間倉庫】が実用出来る段階になり始めている事は間違いなかった。

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