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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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結界魔術のアドバイス

 年始を本邸で過ごした後、セレーネ達は学園が始まるまでを別邸で過ごしていた。そこにはテレサの姿もある。セレーネはテレサに膝枕をして貰いながら、自分で書いたメモを見直していた。


「そういえば、お姉様って、来年卒業?」

「そうね」

「卒業したらどうするの?」


 メモを見直しながら、セレーネはテレサの進路について訊く。テレサが何をするのかによっては、王都から離れる事もあり得るので、そこの確認をしておきたいと思ったのだ。


「魔術研究所で研究員になるわ。戦闘魔術研究室だから、ダンジョンへの遠征に参加する事もあるのよ」

「そうなんだ。気を付けてね」

「分かっているわ。それより、研究は順調?」

「空間魔術の見直し中。もっと簡易的にして、魔術陣を簡単にしないと常用出来るような魔術じゃなくなるから。必要なものは揃ってるから、最適化に向けて準備中」


 セレーネが確認しているメモは、空間魔術の最適化案を纏めたものだった。それらを見て、実際にその最適化が可能なのか等の検証をしている。


「結局、新しい空間魔術も開発したのでしょう? セレーネ一人で、空間魔術の分野を何十歩も進めているわね」

「そんなに?」

「画期的な魔術ばかり開発しているのだから、大分進めているわよ。それこそ、アカデミーの学生以上にね」

「そうなの?」

「空間魔術自体研究をしている人は少ないもの。扱いきれる人が少ないから」

「魔力の消費量が多いもんね」


 テレサに頭を撫でられながら、研究をしているセレーネは紙から顔を上げて、扉の方を見る。その理由をテレサも察していた。

 ノックの後に扉が開けられ、カノンとスピカが部屋に入ってきた。


「スピカ。いらっしゃい」

「お邪魔します。本日は、セレーネ様にお話があり参りました」

「うちで暮らすって話でしょ? 良いよ。部屋はカノンと同じ部屋になってるから」

「ありがとうございます」


 スピカは深々と頭を下げて感謝する。

 カノンとスピカの部屋に関しては、フェリシアからセレーネに意見をしていた。それに対して、セレーネは即断で許可を出していた。なので、既にカノンも屋敷の広い部屋に移動している。


「クロが勝手に遊びに行く事もあるけど大丈夫?」

「はい。私は構いません」

「じゃあ、良かった」


 クロは時折屋敷を徘徊して、使用人達と遊ぶ事がある。かなりの巨体だが、使用人達からもクロは人気なので、どの使用人も普通に接している。飼い主であるセレーネに一番懐いているが、言葉が通じるカノンの元にもよく来ている。

 そのため、スピカが居てもクロがやって来る事があり得た。その確認はしないといけない。因みに、この場にクロはいない。今は、フェリシアとルリナと一緒に外の庭で遊んでいる。


「引っ越しは?」

「既に荷物は纏めていますので、近日中に行います」

「そっか。その時はカノンを呼んで良いから」

「はい。ありがとうございます」


 そこまで話したところで、セレーネは一つ気付いた事があった。テレサの膝から降りてスピカに近づく。


「そうだ! スピカ! スピカって、結界魔術に詳しいよね!?」

「え? あ、はい。守りの魔術は聖女にとって必要なものになりますので」

「じゃあさ! 棚に使うこの結界魔術の最適化って出来る!?」

「え? 結界魔術の最適化ですか? 既に最適化されていると思いますが……」

「見直し! こうして、棚にして使うの。普通の棚よりも確実に固定されるから、これが一番良いの。別空間収納に組み込むから、簡易化されている方が良いの! 手伝って!」


 セレーネは、キラキラとした目でスピカを見る。その視線を受けたスピカは、横にいるカノンを見る。カノンは、微笑みながら頷いた。カノンからも、セレーネを手伝ってあげて欲しいと言われた気がした。

 それを受けて、スピカはセレーネに微笑み掛ける。


「では、一緒にやってみましょうか」

「うん! ありがとう!」


 セレーネが机に向かうので、その後にスピカも付いていく。そこにカノンが椅子を持ってきて、セレーネの隣に座らせる。そして、セレーネは自分が使おうとしている結界魔術の魔術陣と組み合わせる空間魔術の魔術陣を見せて、色々と説明を始める。その間に、カノンは部屋の片付けをしていく。


「良かったの?」


 ベッドに近づいてきたカノンに、テレサがそう訊く。せっかくスピカとの時間が出来たというのに、セレーネに時間を取られて良いのかという事だった。


「はい。お嬢様に必要な事ですし、こうしてお嬢様とスピカが仲良くしているところを見るのが好きですので」

「そう。カノンが良いなら良いわ。私はルリナと買い物に行って来るわね。何か必要なものはある?」

「…………いえ、特になかったと思います」

「分かったわ」


 テレサは、軽く手を振ってから部屋を出た。カノンは頭を下げて見送る。それと入れ替わりに、少し汚れたフェリシアがやって来た。


「カノンさん……悪いのだけど、着替えをお風呂に持ってきてくれるかしら? クロと泥に入ってしまって」

「はい。分かりました。クロの方は?」

「先にお風呂に行って貰ったわ」

「分かりました。では、私も一緒に入ってクロを洗います。スピカ、お嬢様をお願い」

「うん。任せて」


 カノンはフェリシアの服とタオルを持って、フェリシアと共に浴場へと向かっていった。

 部屋に残ったセレーネは、特に気にした様子もなく、スピカの意見を聞きながら魔術陣を組み立てている。


「ここの複雑な部分を一つに纏められないかな?」

「こちらは、結界の強度と座標の二つに作用している魔力線ですね。いっその事、【座標指定】を入れるのも有りだと思います」

「丸ごと取っ払うって事?」

「はい。セレーネ様の求める形にするのなら、こちらの方が正確な配置が出来るかと」

「でも、魔力の消費量が増えない?」

「【座標指定】の中身を少し弄って、複数の結界の座標を同時に指定すれば、数を減らす事が出来ますので、総合的に見て魔力の消費量は下がると思われます」

「そっか。一つ一つの【座標指定】を設定するんじゃなくて、複数を一遍に指定すれば、少しは軽減出来るのか……でも、その変更が難しくない?」

「そこはセレーネ様の腕の見せ所ですね」


 スピカは空間魔術には、あまり詳しくない。なので、その改良はセレーネ自身に任せるしかなかった。


「むぅ……じゃあ、結界魔術の方は手伝ってね?」

「はい。結界を等間隔に配置するやり方を教えます。これで、使う結界魔術の数を減らす事が出来ます。そうですね……十列を一つに纏めましょう」

「そんな事出来るの?」

「はい。普段はそこまで多くしませんが、こうして、等間隔に結界を並べるという事は戦術的によくやる手法です。戦術方面での結界魔術の論文は読まれませんでしたか?」

「読んでないかも……」

「自分の研究範囲ではないとしても、軽く読んでみるのも良いかもしれません」

「うん」


 スピカに適宜アドバイスを受けつつ、結界魔術に関して勉強をしていく。実際に結界魔術を使い続けているスピカのアドバイスは、セレーネにとっても参考になっていた。結界魔術と空間魔術の組み合わせも相談出来たため、空間魔術の見直しにも繋がった。

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