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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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小鬼の巣窟のボス

 休憩を挟んだセレーネ達は、とうとう小鬼の巣窟のボスに挑む。


「ここのボスは、ゴブリンジェネラルと呼ばれる上位のゴブリンです。身体に金属製の鎧を着ており、手足などの剥き出しになっている部分にのみ攻撃が有効と考えて下さい。ただし、魔術はどの部位でも有効です。出来れば鎧を貫く類いのものが良いでしょう。私達は危なくなった時に割り込みます。基本はお二人で戦って下さい」

「うん」

「分かったわ」


 セレーネとフェリシアは、氷の剣と氷の槍を持って、ボス部屋に入っていく。カノン達は、いつでも介入出来るように最大限の準備をして後ろに付いていった。

 部屋の中央には、カノンが言っていた通り、鎧を着けたゴブリンが大斧を持って座っていた。これまでのゴブリンと違って、全体的に身体が大きい。セレーネ達よりも二回り程大きいだろうか。

 それでもセレーネとフェリシアは臆せずに突っ込んだ。ゴブリンジェネラルもセレーネ達に気付いて立ち上がり、咆哮する。


『ギギャアアアアアアア!!』


 おおよそ人型の生物が発するとは思えないような甲高く気味の悪い咆哮だった。それを無視して、セレーネとフェリシアは、同時に【氷槍】を放つ。セレーネが放った【氷槍】は、大斧により砕かれたが、フェリシアの放った【氷槍】は、ゴブリンジェネラルの脇腹に突き刺さった。その箇所から凍結が広がる。


『ギアアアアアアア!!』


 ゴブリンジェネラルは、叫びながら脇腹に刺さった氷の槍をへし折る。その間に、セレーネはゴブリンジェネラルの顔面に向かって跳ぶ。無防備に空中にいるセレーネを見て、ゴブリンジェネラルはニヤリと笑い、大斧を叩き付けようとしてくる。

 そのゴブリンジェネラルの背後から足に向かって、フェリシアが【氷槍】を二本放つ。それに気付いたゴブリンジェネラルは、その場でジャンプして避ける。そうして避けたゴブリンジェネラルの顔に向かって、セレーネが氷の剣を突き刺す。兜の隙間を的確に狙って刺した氷の剣は、ゴブリンジェネラルの片目を潰す。


『ギャアアアアアアアア!!』


 甲高い悲鳴が響き渡る。

 セレーネは、氷の剣から手を離し、片手をゴブリンジェネラルの顔に向ける。そこから放たれたのは、火魔術【火纏(かてん)】。魔術陣から放たれた火は、触れた生物を飲み込んでいく。飛距離が一メートルもないため、こうして接近しなければ使えない。


『ガアアアアアアア!!』


 甲高い叫び声が響き渡る。その間に、フェリシアは【氷槍】に魔力を込めて、更に大きく一撃を強くしていた。

 ゴブリンジェネラルは、その場で藻掻き続けている。【火纏】の効果が切れて、黒焦げになったゴブリンジェネラルが、膝を突く。そこにフェリシアが用意していた【氷槍】が突き刺さり、ゴブリンジェネラルは地面に縫い付けられた。

 セレーネは、縫い付けられたゴブリンジェネラルの首に向かって、大きく作った【氷剣】を真上から振り下ろす。首を刎ねられたゴブリンジェネラルは、大斧を残して灰となり吸収されていった。


「ふぅ……」

「やったわね」


 セレーネとフェリシアはハイタッチをする。一体だけだったので、大きな苦戦をせずに倒す事が出来た。加えて、二人の打ち合わせ無しの連携が上手く言ったというのもある。


「カノン! どうだった!?」

「ゴブリンジェネラルの視線を上に向けて、フェリシア様を意識外に出したのは良かったですが、少々危険を冒しすぎです」

「むぅ……だって、それが一番だと思ったんだもん。一応、結界は張れるようにしておいたよ?」

「その点は良い点ですね。危険を冒す事で生まれるチャンスも確かにありますが、そのタイミングや対策は、しっかりと考えておいてください。絶対ですよ?」

「うん」


 一応、セレーネが対策を取っていたのは分かっているが、それでもカノンは釘を刺しておいた。どこかで慢心により、対策を怠り怪我をしてしまう事などを避けたいのだ。例え再生能力が高いとしても、怪我をしないに越した事はない。


「フェリシア様は、もう少し攻撃に時間差を設けても良いかもしれません」

「時間差……ゴブリンジェネラルの足を狙った時の事ね?」

「はい。二本とも避けられるよりは、避けたところを狙うもしくは避ける先を先読みして狙うなどをしておく方が良いかと思います」

「そうよね。分かったわ」


 フェリシアは、一回の攻撃に攻撃力を集中させるという戦い方をしていた。そのため、カノンの言うことに素直に納得していた。


「結果的に、ゴブリンジェネラルを倒す事が出来たので、お二人の連携は良いと思います。互いに動きを阻害しないようにしつつ、互いを援護していくのは良いですね。トドメは刺せる方が刺すというのも良いと思います。取り敢えず、注意した点は意識しておくと良いかと。特にお嬢様」

「は~い」

「分かったわ。それで、この大斧はどうすれば良いのかしら?」


 フェリシアは、ゴブリンジェネラルが落とした大斧を指してそう言う。


「これはこれで売れるので、回収しておきましょう。フェリシア様の鞄の中身をお嬢様の方に移して、その中に入れる方が良いでしょうね」

「分かったわ」


 セレーネとフェリシアで荷物を整理している間に、テレサ達は周囲の警戒をしていた。カノンは、二人を手助けしている。そうして、中身の移動を終えたところで、フェリシアの鞄に大斧を仕舞う。大きさ的にギリギリだったが、問題なく中に入った。


「では、奥のダンジョンコアを見に行きましょうか」

「うん!」


 セレーネが浮かれるので、カノンは即座にセレーネと手を繋ぐ。勝手に行動して、ダンジョンコアが壊れてしまっては、このダンジョンがなくなってしまうからだ。

 セレーネは、カノンと手を繋いでダンジョンコアがある部屋へと入る。ダンジョンコアの周りにはいくつもの魔術陣が広がっており、ダンジョンコアの周辺に結界が張られていた。


「結界?」

「こちらは、本来はないものですね。ダンジョンの保護のために定期的に結界を張っているのです。なので、不用意に触らないようにお願いします。下手すると、ダンジョンが壊れる事に繋がりかねないので」

「は~い」


 セレーネはそう返事をしてから、ダンジョンコアをジッと見る。ダンジョンコア自体は、紫色の大きな結晶だった。その中央に魔術陣らしきものが見える。


「あの魔術陣は?」

「わかりません。私もダンジョンコアの中身に関しては、そこまで詳しくないのです」


 カノンも、さすがにダンジョンコアの中身までは知らなかった。なので、セレーネはスピカの方を見る。この中でダンジョンの論文を読んでいるのは、スピカくらいなので、確認するならスピカだと考えたのだ。

 セレーネの視線に気付いたスピカは、困ったように笑う。


「申し訳ございません。私もそこまでは……ダンジョンコアに関する論文は本当に少ないのです。そもそもダンジョンコアを下手に調べれば、ダンジョンそのものを消してしまうかもしれません。国からすると、資源が採れるダンジョンはなるべく残しておきたいものですので、コアの研究は中々進まないらしいです」

「そうなんだ。じゃあ、見える範囲だけ描き写そうかな」


 セレーネがダンジョンコアの中に刻まれている魔術陣を頑張って描き写している間に、ゴブリンジェネラルが復活したので、テレサの援護を受けつつ、フェリシアが倒した。

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