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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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枠組み完成?

 セレーネの研究にテレサも加わり、魔力の密度を上げる事に関しての研究が始まった。ダンジョン内という事で、周囲への被害をそこまで考えなくて良いという利点があり、テレサは、密度を上げた魔力を使って魔術の行使を試みていた。

 フェリシアは、一旦キャンプ地に戻って休息を取っている。


「駄目ね。基礎的な属性の基礎魔術は発動しないわ。魔力の密度が上がっている状態だと、魔術陣が魔力量に耐えきれないみたいね」


 テレサの実験の結果、魔力の密度を上げた状態で魔術を行使すると、基礎魔術の類いは、ほとんどが発動しなかった。発動前に魔術陣が崩壊してしまうのである。密度を上げる事が、そのまま魔力量が増える事に繋がると考えたテレサは、この崩壊が魔力の過多によるものだと考えた。


「でも、空間魔術は起動したよ?」

「やろうとしていた事は、魔力の中に空間を生み出す事でしょう? そして、実際に空間は作る事が出来た」

「うん。でも、維持が出来ないの。やっぱり無限に空間を作り出す事は出来ないみたい」


 セレーネは最初の実験を思い出してそう言う。それに対して、テレサは頷く。


「そうね。でも、そことは違う理由もあるわ。セレーネは、上下の空間も無限にしようとしていたでしょう? そうなると、どうなると思う?」

「え? う~ん……あっ……仕舞ったものが落ち続ける?」


 無限に広がる空間という最高の倉庫を作り出すために、欲張って全方向に無限を広げていたセレーネだったが、その場合仕舞いたいものは常に落下している状態になってしまう。ある意味では、その方が安全かもしれないが、どちらかといえば、しっかりと安置した方が良いだろう。


「そうよ。だから、下限は設けた方が良いわね。上限の方も必要になるかもしれないから、そこは都度調整していくとして、前後左右は、無限に続く空間にしても大丈夫なように出来ないかしら?」

「う~ん……フェリシア達と考えていたけど、結構厳しそう。一部でも無限だと破綻しちゃうみたいなの」


 ここら辺は、テレサが来る前にセレーネも試していた。だが、それでも一部を無限にすると、空間が破綻する。ただし、魔術が発動しない訳では無い。空間は確実に広がっていた。だが、その広がった空間の維持が無限になると出来ないのである。


「無限は無理があるって事ね。そもそも無限に広がる空間は、外に飛び出さないの?」

「うん。座標の中に広がっていった感じだった」

「【座標指定】が魔術の効果範囲を制限してくれているのね。でも、空間は破綻するから使い物にならないと。他の問題で言えば、常に同一空間を開けるかどうかという事ね。何度か試してみましょう」

「うん」


 セレーネは再び魔力を集めていく。何度かやっているので、コツを掴み始めて最初よりもスムーズに密度を上げる事が出来ていた。


「そういえば、まだ無限じゃない空間は作ってなかったかも」

「なら、【座標指定】と【空間拡張】だけね」

「うん」


 セレーネは、再び【座標指定】と【空間拡張】を使う。すると、指定された空間が広がっていった。拡張出来る限界を感覚的に導き出したセレーネは、ギリギリのところで止める。

 そのまま十秒が経過した。空間は崩壊していない。


「出来た……出来たよ!」

「そうね。【座標指定】で指定された座標の空間を伸ばすというよりも魔力で覆われた空間を作り出して広げるという感じね。真っ白な空間……カノン、検査器具はないわよね?」


 二人を見守っていたカノンを見ながら、テレサが問う。それに対して、カノンは首を横に振った。


「持ち歩いているものはございません。魔術による検査しかないかと」

「そうね。空気は私の方でも検査が出来るから、そのまま空間を維持しなさい」

「うん」

「…………空気はあるようね。濃度も問題なし。後は、この空間を何度も開けるかどうかよ。取り敢えず、物を入れてみるわ」


 そう言って、テレサは近くにある岩を入れる。岩は、セレーネが広げた空間の中に落ちていき割れた。


「開いている場所は空間の上の方なのね。下に移動出来る?」

「え? どうやって?」


 セレーネとテレサは、互いに顔を見合わせて固まる。開く事は出来るが、開く箇所を選ぶ事はまだ出来ないからだ。


「仕方ないわ。取り敢えず、同じ空間を開けるかの検証だけはしておきましょう」

「うん」


 空間を閉じると、中に入れた岩も消えている。しっかりと、空間の中に入った事が分かる。

 場所を移動して、もう一度空間を開くと、同じように岩が落ちているのが見えた。


「同一空間を開けたようね。場所は相変わらずだけれど」

「うん」


 【座標指定】の設定を、自分を中心として設定しているので、場所を移動しても問題は無かった。これは、セレーネが理論的に考えていた通りだった。


「容量は……分からないわね。全体が白いから、見ただけでは境界が分からないわ」

「液体を入れるのはどうでしょうか?」

「液体の総量を調べるなら、魔術で出来るから良いかもしれないわね。セレーネ、そのまま空間を広げていなさい」

「うん」


 セレーネが広げている空間にテレサが水魔術で水を入れていく。そうして入れた水の量を調べて行く。


「……ちょっとした湖が出来そうな量ね。具体的にどのくらいと言いづらいわ」

「でも、限りある空間で、このくらいの広さがあるなら良いよね?」

「そうね。十分だけれど、この規模の空間を開くのに魔力を相当使うでしょう?」

「うん。大分消耗してる。後、一回が限界かな」


 一回一回の消費魔力はそこそこ大きく、最適化もしていないためセレーネも限界が近いところまで来ていた。


「頻繁に開けるようにしておかないといざという時に使えないという事になりかねないわ。後、この水を排出する方法も見つけないといけないわね。それと時間をおいて、内部空間がどうなるのかの検証も必要だわ。ちゃんとメモはしているかしら?」

「うん。後で整理しないと」


 セレーネが持っている紙切れには、びっしりとメモが書かれている。その内容を整理する必要があるので、セレーネのやることはどんどんと増えていく一方だった。

 セレーネ達がキャンプ場に戻ってくると、部屋の入口で柔らかい壁に身体を突っ込む事になった。


「むぎ……」

「あ、ごめんなさい」


 フェリシアがそう言うと、柔らかい壁が消える。転びそうになったセレーネをカノンが支える。


「何今の? 柔らかい結界?」

「ええ。部屋全体に広げて維持出来る時間を増やしていたのよ。耐久力も付いてきたから、もう少しで完成かしらね」

「良いなぁ……私は調整に時間が掛かりそう」

「でも、形は出来ているのだから良いじゃない」

「むぅ……」


 セレーネは、フェリシアの隣に座って紙にメモを清書していった。その間に、フェリシアは周囲からアドバイスを貰いながら、結界の調整をしていく。休息時間は、それぞれの研究を進めていく時間となり、ゆったりとしながらも実りのある時間となっていった。

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