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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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次の大きな一歩

 テレサとルリナも休憩を挟んで、ダンジョン探索が再開する。セレーネとフェリシアの接近戦訓練は順調に進んでいき、魔術を交えての戦闘がスムーズに出来るようになっていた。加えて、二人での連携も良くなっている。こちらに関しては、元々良かったのが、さらに磨きが掛かってきたという事だ。

 そうして実力を付けていき、十層に着いた。


「ここは安全層なので、ここでも休憩して行きましょう」

「あれ? じゃあ、最初からここで休憩すれば良かったんじゃないの?」

「お嬢様達には、ダンジョンでの事をしっかりを教えていきたいと思いましたので。実際、安全層で休む事よりもああいった場所で休む事の方が多いので」

「へぇ~、そうなんだ」

「本当の事よ。中には、安全層がないダンジョンもあるわ。どんな環境でも休める事に加えて、見張りの間眠らずに居られる事が重要になっていくのよ。セレーネ達は、カノンとマリアがいるから、見張りはあまりしないかもしれないけれど」


 テレサの補足にセレーネはカノンの方を見る。


「はい。主人に見張りをさせる訳にはいきませんから」

「ここら辺は、使用人のプライドって感じですね」

「そういえば、マリアも早く起きてたかも」


 そう言うセレーネにマリアは胸を張っていた。マリアは、カノンとスピカが交代するタイミングで起きていたので、しっかりと見張りの仕事もこなしている。


「とにかく、ダンジョンにおいては休める時に十分に休んでおくというのが鉄則になります。自分がどの程度の休憩で、どの程度回復するのか。これを理解しておく事が重要なのです」

「ふ~ん……カノンは?」

「私は三日程度であれば寝ずに行動出来ます。三時間休憩があれば、基本的には問題なく動けますね」

「ふ~ん……ちゃんと寝てね」

「平時であれば、五時間近くは寝ているので大丈夫ですよ」


 セレーネは、やはりカノンの睡眠時間が短いという事を知り、それは良い事なのかと心配になっていた。カノン自身は問題なく動けるために、あまり気にしていない。

 セレーネ達は安全層の中にある小部屋の一つにテントを建てて本格的な休憩を始める。調査と違い、そこまで急ぎで攻略したい訳でもないので、こうしてゆったりとする時間がある。


「ねぇ、カノン! 実験したい!」

「実験ですか? そうですね……こことは別の場所でやりましょうか。すみません、マリアさん見張りをお願いします」

「はい。お任せ下さい!」


 サムズアップで答えるマリアに頭を下げてから、カノンはセレーネを連れて、キャンプ地から離れる。その後にフェリシアとスピカも付いてきた。二人ともセレーネの実験が気になるからだ。テレサ、ルリナ、マリアは、荷物を守るために留守番だ。他に冒険者がいる可能性もあり、それが善人であるとは限らないので、こうした留守番は必要になる。

 離れた場所に着いたセレーネは、その中央に立つ。


「じゃあ、始めるね」

「はい」


 セレーネは両手を身体の前に出して、魔力を放出する。放出した魔力を操作して一箇所に集める。


「……あれ? 上手くいかない」


 ダンジョンを形成している空間を模倣するために、まずは魔力の密度を上げるところから始めようとしているのだが、中々に上手くいかなかった。集まりはするが、密度が上がる気配がない。


「これだと沢山の魔力を集めているだけ?」

「そのようね。もっと濃縮させる事を意識してみたらどうかしら?」

「濃縮? 濃縮……」


 セレーネは放出する魔力をより一箇所に集中させていく。段々と魔力が集まる範囲が狭まっていき、セレーネの両手の中に収まる程になっていく。すると、その箇所で空間が歪み始めた。

 それを見て、カノン達も少し驚いていた。まさか、普通に成功するとは思わなかったからだ。


「出来た。でも、これじゃあ、ただ濃いだけの魔力だよね?」

「そうですね。ダンジョンの壁の向こうにある物質にはなっていないように見えます。本当に高密度の魔力でしかないのでしょう」

「じゃあ、もう少し密度を上げよう」


 セレーネは、更に魔力を放出して範囲は変えずに密度を上げていく。魔力の密度はどんどんと上がっていき、空間がどんどんと歪んでいく。


「お嬢様。お身体に違和感はありませんか? うん。特に何も」


 カノンは時折体調を確認する。魔力の放出だけだが、それでも、何か異変が起こる可能性があるからだ。


「これでもダンジョンは出来ないのかしら?」

「これを見るに魔力が集まる事だけがダンジョンの生成条件ではないのでしょう。ここに何かしらの魔術的作用が掛かる事でダンジョンとなるのかもしれません」

「自然発生した魔術って事?」

「はい。正直なところ、あそこまで魔力を集めているところは見た事がありません。あれが自然に発生したとして、その魔力が勝手に魔術を形成するという事がないとは、私も言い切れません」


 フェリシアの疑問にカノンはテキパキと答えていった。


「つまり、あそこに魔術を発動すれば、ダンジョンが出来るって事?」

「ダンジョンとは限らないけど、その可能性はありそうじゃない?」

「う~ん……まぁ、それはあるかも」


 大分高密度な魔力を作り出したセレーネは、感覚敵にこれが限界だと察した。


「これ以上は無理っぽい」

「飽和状態になったという事でしょうか。ダンジョン生成にはこれ以上の魔力が必要になるのかもしれませんね」

「じゃあ、これで空間魔術を使うよ」

「最大限気を付けて下さい」

「うん」


 セレーネは常々考えていた通りの魔術を使う。【座標指定】【空間接続】【空間拡張】の組み合わせだ。【座標指定】で高密度の魔力を指定し、座標の上下左右前後を【空間接続】で繋げて、その中央にある高密度の魔力に対して【空間拡張】を使用する。高密度の魔力が【座標指定】の中で弾ける。魔力は【空間接続】によって指定された座標内に留まり、【空間拡張】によって、その内側に大きな空間を生み出す。

 セレーネの手のひら大に生じる無限とも呼べる空間。だが、その維持は出来ずに、作り出した無限の空間は消えていった。


「あ、あれ? 何で……空間を繋げていたのが悪かった? 【空間拡張】は閉鎖空間を広げるためのもの……無限の空間を作り出すのは、無理がありすぎたって事? でも、これじゃないと、容量が限られ過ぎる……でも、高密度の魔力が新しい空間を生み出せるのは分かった。これは大きな一歩だ」


 セレーネは紙切れにどんどんとメモをしていく。結果的には失敗だが、この失敗は実りのある失敗だった。ここから次の一歩に繋げられる可能性が高いからだ。


「カノン! しばらく実験してて良い?」

「はい。時間はまだありますので、構いませんよ。テレサ様にお伝えして参ります。スピカ、お二人をお願い」

「うん。任せて」


 許可を得たセレーネは、今の実験を条件を変えながら続けていく。フェリシア達は、それを見守りながら、適宜自分が感じた事を伝えていった。

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