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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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ダンジョンでお泊まり

 それから三日が経過した。日帰りダンジョン探索は、順調に進んでいき、今日からはダンジョンに泊まる事を視野に入れて、深く潜る予定だった。


「荷物ってこれで全部?」

「はい。お嬢様とフェリシア様の鞄に入る分で終わりです。この魔術は凄いですね。ダンジョンに深く潜るのに、ここまで荷物を少なく出来るのは、本当に有り難いです」

「ふふん。ミーシャちゃんに教わっておいて良かったでしょ?」

「そうですね」


 必要な荷物を全て詰め込んだセレーネ達は、小鬼の巣窟に入っていく。戦闘は変わらず、セレーネとフェリシアに経験を積ませる形で進んでいく。背後の危険は、テレサとマリアが対処しているので、危険はかなり少なくなっている。

 セレーネとフェリシアも大分戦闘に慣れてきて、効率の良い戦闘の仕方を学び始めていた。【氷槍】に込める魔力も調整して最低限にし、ゴブリンを確実に仕留められる箇所に撃ち込む。また、同時に複数体に攻撃を当てる事も出来始めていた。


「ねぇ、カノン。私とフェリシアは接近戦の練習はしなくて良いの?」


 セレーネは魔術による戦闘に慣れた事もあって、そう確認した。今後ダンジョンに潜る事が増えれば、接近戦もやらなければいけなくなっていく。その練習は必須だと考えたのだ。


「そうですね……確かにそれはしておきたいところなのですが、やはりお嬢様達の年齢から考えると、少々早い気がしてしまいまして」

「キリルから色々と教わってるし、駄目駄目ではないと思うけど……」


 キリルとの鍛錬は、頻度が減ったものの続いている。身体を動かす目的に加えて、護身術をしっかりと覚える事で、対人戦の訓練にもなる。

 それをしているからこそ、セレーネも遠くから魔術を放つばかりではなく、どのような場面でも戦える力を付けるべきではないかとも考えていた。


「分かりました。ですが、接近戦で勝つ手段をお持ちなのですか?」

「う~ん……氷の剣とか?」


 セレーネは、氷魔術【氷剣(ひょうけん)】を使い、カノンが持っているくらいの短剣を氷で作り出す。


「セレーネ、もう少し刃を研いでおきなさい」

「こんな感じ?」

「そうね。加えて、その剣は耐久性に難があるわ。常に補修しながら戦いなさい」

「うん!」


 セレーネは、テレサのアドバイスに素直に頷く。フェリシアもセレーネと同じく【氷剣】を使うが、いまいち手に馴染まなかった。


「フェリシアは、槍を教えて貰っていたのだから、槍を使えば良いと思うわよ。【氷槍】を放たずに手で持ちなさい」


 テレサのアドバイスに従って、フェリシアは【氷槍】を使い氷の槍を作って手に持つ。そして、そこから実用性を持たせるためにアドバイスに従いながら調整していく。


「それで良いわ。フェリシアも、セレーネ同様補修しながら戦う事を覚えておきなさい」

「はい」

「テレサ様、ありがとうございます」

「良いの。私達が援護をするわ。二人は自由に動きなさい」

「うん!」

「はい」


 これで接近戦での戦い方を学ぶ準備は出来た。そのままダンジョンを歩いていくと、ゴブリン四体を見つける。カノンが事前に索敵していたので、セレーネ達もしっかりと準備が出来ていた。

 セレーネが飛び出し、四体のゴブリンの内、一体の首を氷剣で斬る。テレサのアドバイスに従っていたため、ゴブリンの首が深めに斬れる。しかし、氷剣の方も小さく刃毀れしていた。


(思ったよりも刃の耐久性がない……耐久性を落として切れ味を良くしているって感じなのかな。短期決着を望むなら、こっちの方が良さそう)


 そんな事を考えながら、セレーネに飛び掛かろうとしていたゴブリンに対して、【水球】を放つ。顔面に【水球】を受けたゴブリンは、顔に纏わり付く水によって呼吸が出来なくなり、パニックに陥る。

 そのゴブリンの首にフェリシアが氷槍を突き刺して斬る。そこに近づいてくるゴブリンをフェリシアは石突きで弾き飛ばし、真上から振り下ろした穂によって斬り裂いた。その間に、セレーネはもう一体のゴブリンの首に刃を突き刺して首を落とす事で倒していた。


「どう?」


 セレーネはカノンの方を見て訊く。自分達の戦い方が、ちゃんと通用するかどうかの確認だ。


「お二人とも申し分ない動きでした。特にフェリシア様は、自身の間合いを把握されている動きが出来ていたかと思います。お嬢様は、魔術を併用しての動きが見事でした。ですが、それが通用する相手ばかりではない事を頭に入れて置いてください」

「うん」

「フェリシア様は、その調子で大丈夫ですが、石突きの方の補修が疎かになっています。槍を扱う場合は、槍全体の状態を意識しておくと良いかと」

「そうね。分かったわ」


 カノンに指摘されて、フェリシアも自分の槍の石突きに小さく罅が入っているのが分かった。戦闘に使えるので、強度言えば問題ないのだが、継続戦闘をする上では不安要素が残る。

 セレーネとフェリシアは、改めて自分達が用意した武器の弱点を意識してダンジョン探索に挑む。

 しばらくの間、セレーネとフェリシアで接近戦の訓練をしていった。セレーネは水魔術を巧みに使い、ゴブリン達を窒息というパニック状態にして自分達に有利な状況を作り出していた。

 フェリシアは穂と石突きを巧みに使い分け、相手の間合いの外から的確に致命傷を与えていった。

 そして、二人とも常に氷の武器を補修し続けていたので、魔力の操作の訓練にもなっていた。そんな調子で進んでいき、八層まで降りてきた。このダンジョンは二十層構成なので、先はまだまだ長い。


「ここら辺で休憩を挟みましょう」

「どこで休憩するの?」

「行き止まりにある小さな部屋で休憩します。入口が一箇所だけなら見張りも楽を出来ますから」

「ふ~ん、そうなんだ」


 セレーネ達はカノンの案内で奥にある小部屋に移動した。そこで、セレーネの鞄から寝袋を取り出す。


「では、時間になりましたら起こしますので、お嬢様とフェリシア様はゆっくりお休みください」

「カノン達は?」

「ダンジョンでは誰かが見張りをしないといけません。今回は、私とスピカが交代で見張りますので、ご安心ください」

「分かった。おやすみ」

「はい。おやすみなさい」


 セレーネはフェリシアと同じ寝袋に入って眠る。そして、交代で見張りをするためにスピカ、マリアも眠りに就いた。


「私とルリナは、そこら辺を調べてくるわ」

「分かりました。お気を付けて」

「ええ。ルリナ、行くわよ」

「はい」


 テレサは、ルリナを連れてダンジョンの探索に向かって行った。だが、これは建前で、正確にはセレーネ達が安眠出来るように魔物の数を減らしに向かったのだ。その事にカノンも気付いていた。

 カノン達の尽力により、セレーネとフェリシアは、ダンジョンの中でも、ゆっくりと休む事が出来たのであった。

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