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先祖返りの吸血鬼は、気ままに研究がしたい  作者: 月輪林檎
学園高等部

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一歩前進

 そこから二日間は、浅い階層での慣れに費やした。そのおかげで、セレーネ達にもある程度の余裕が生まれた。だからといって、油断する程セレーネ達も調子には乗っていない。いざという時に対応出来るような心構えだけはしていた。

 そうして四日目。ここからは、更に一、二層深く潜っていく事になる。ずっと同じように行動していたので、いつも通りにセレーネとフェリシアを間に入れて、ダンジョンを進んでいく。


「そういえば、ダンジョンってこんなに広いけど、地盤とか大丈夫なの?」


 セレーネはダンジョンが地下に広がっている事を考えて、この場所が崩落しないのかと疑問に感じていた。なので、その事について隣にいるスピカに訊く。この二日で、スピカもセレーネ達と打ち解けていた。


「そうですね。一応大丈夫ではあります。この場所は、外界とは別の場所にあるという風にされているので」

「別の場所?」


 セレーネは、興味津々でスピカの話に耳を傾ける。内容が自分の研究に関係ありそうだからだ。


「実際には、通常の地盤が広がっています。ダンジョンの入口から先は別の世界という風に考えるのが良いかもしれませんね」

「それ初耳だけど」


 セレーネとスピカの会話を聞いていたカノンが後ろをちらっと見てそう言った。


「うん。最近判明した事だからね。私もこの前教会にあった論文を読んで知ったくらいだし」

「ダンジョン系の論文か。あまり読んでなかったかも」


 カノンは内心反省していた。ダンジョン系の論文にそんなものがあったとは知らなかったからだ。これはセレーネの研究に直接繋がるかもしれないものだった。


「ねぇ、それ詳しく教えて」

「ダンジョンは魔力が濃く集まる場所で発生します。その発生の時点で空間が捻れるという風にされています。どこの空間に繋がっているのかはわかりません。ですが、本来ダンジョンがあるはずのところまで地面から掘った際、ダンジョンの通路には一切到達しなかったという報告があります。なので、ダンジョンは入口から入った途端に別空間となるのです」


 スピカの説明はそれだけだった。論文に書かれていたといっても、ダンジョンの全てが書かれている訳では無い。論文著者が調べた事だけが書かれているので、詳しいところの説明は出来なかった。

 だが、それでもセレーネには十分だった。


「う~ん……魔力が濃い事が重要? でも、それだとダンジョンになる?」

「ダンジョン生成の条件的に言えば、濃い魔力が自然に集まって出来るみたいな幹事じゃなかったかしら?」

「はい。条件的には、自然に集まった時となっています。そもそも人工的に集められるような濃さではないと思いますので、ダンジョンにはならないかと」

「じゃあ、自分で濃い場所を作れば別空間を生み出せる?」

「どうでしょう? ダンジョン生成と別空間生成では、少し違う可能性もありますから、要検証といったところでしょうか」

「お嬢様。実験はまた今度にしてください。ここでやるのは危険ですから」

「うん。教えてくれてありがとう、スピカ」

「いえ。お役に立てて光栄です」


 研究のヒントを思わぬところで掴む事が出来たセレーネは、いつもよりも少しやる気が上がっており、張り切って魔物を倒していた。四層まで降りたところで、今日は帰りになった。

 宿に戻った後、セレーネはテレサ、フェリシア、マリア、ルリナと一緒にお風呂に入っていた。


「ねぇ、お姉様。魔力を一部に集中させるって研究している人いる?」

「聞かないわね。どちらかといえば、ルリナのように身体強化で一箇所に集中させるくらいしかないわよ。体外に放出して一箇所に集中させるメリットがないもの」

「じゃあ、可能性はあるよね」

「そうね。でも、それで生じた別空間が安全かの検証。物資の保存に適した環境かの検証。どこで開いても同じ場所で開くかの検証。やることは多いわ。ただ、それもこれも魔力を集めて空間を生み出せたらの話よ」

「う~ん……だよね」


 まだ魔力を集めて空間を付くる実験はしていないので、検証のしようもなかった。


「集める魔力量にもよるけれど、普通の人には使えなさそうね」

「確かにそうですよね。セレーネの魔力だから、【空間接続】とかも割と楽にやっていますけど、普通は気軽に使えない魔術ですからね」

「多分、獣人の私達は厳しいですね。通常の魔術でも注意していないと枯渇しますから」

「まぁ、誰でも使えるようにするって考えてはいないから、大丈夫!」


 現状は誰でも使える汎用性よりもしっかりと魔術を構築する事が重要だと考えていた。汎用性云々は、そこから考えれば良いのだ。


「どのみちルリナは無理だと思うし」

「うっ……魔力量が少なくてすみません……」


 ルリナは魔力が少ない獣人の中でも、更に少ない方の部類に入る。ここばかりは個人差なので、どうしようもない部分ではあった。


「でも、ルリナって魔力が枯渇した事ないよね? 前線で戦い続けているのに、なんで魔力が減りすぎないの?」

「ルリナは、魔力量が少ないけれど、魔力の使い方が上手いのよ」


 ルリナではなく、テレサが答える。


「攻撃が当たる一瞬に魔力を込める事で、最小限で適度な効果を出しているの。後は、獣人特有の魔力の回復速度で補っているだけよ。言ってしまえば、器用なだけね」

「えへへへ……」


 ルリナは、少し照れていた。若干褒められたか怪しいところだったが、ルリナ的には嬉しかった。

 そんな話をしていった後、お風呂から出て、セレーネ達は部屋に戻っていく。そして、戻って来た部屋でセレーネは紙に理論を書いていく。


「うん……うん……よし! マリア、ちょっとやってみるから見てて」

「駄目だよ。ここは宿屋なんだから、そんな気軽に実験しようとしないで」


 マリアはセレーネの頬を摘まみながらそう言う。宿屋でどうなるかも分からない実験をされると、下手すれば色々な弁償が発生するため、マリアも了承する事は出来なかった。

 セレーネは、早く自分の理論が正しいか試したい欲があったため、そこを考えていなかった。


「むぅ……」

「仕方ないわよ。今は理論を纏めていくところで我慢しましょ。これからダンジョンに入っていく内に、新しい事が分かっていくかもしれないじゃない。それに、今は興奮して見落としも多いかもしれないわよ」


 フェリシアからそう言われたセレーネは、少し落ち着いて、ベッドにいるフェリシアに抱きついていた。


「寝る」

「そうね。もう寝ましょうか。マリアさん、悪いのだけど」

「はい。構いませんよ。フェリシア様をあまり困らせないようにね」

「ん~」


 セレーネはフェリシアに抱きつきながら返事をしていた。それを見て、マリアは小さく笑いながら、部屋の電気を消してから、少し離れた場所にある自分のベッドに入った。

 研究が一歩進むヒントを得たセレーネ。だが、ダンジョン遠征はまだ始まったばかりなので、容易に実験は出来ない。多少のもやもやを抱えつつも、ひとまずは理論の構築に挑む事となった。

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