魔女は君に好きだと言いたい
魔女の名はミキ、彼女は今恋をしている。
ミキと彼は運命的な出会いをした。それは魔法では再現出来ないほど偶然だった。
「あ、えっと、あ」
ミキは目をグルグルさせながら彼と話そうとしている。何故彼女がこんなにもテンパっているのかは数分前まで遡る。
ミキは魔女だ。普通の人間と違うルーティンを持っている。彼女はお昼過ぎになるといつも火球を乱発する習慣がある。なぜそんな無駄な行為をするかって、単純に彼女のストレス発散法だからだ。
「ああああ!クッソーなんでいちいち薬の調合に虫がいるんですかぉぉぉ別に虫じゃなくて花でもいいじゃない!」
彼女はストレスに感じることを口に出しながら魔法を乱発させる。しかし今日はいつもと違った。
「ふースッキリしたし帰ろ」
燃える木々の中に一つ普段見かけないモノが落ちている。
「あっ、」
ミキはそれを見て絶句した。落ちているモノ、いやこれは倒れている人と言えばいいか。
ミキの火球が顔面に直撃して首から上が紛失している。しかしミキは魔女。ここで焦る様な女では無い。
「やばぁぁぁぁぁいやらかした。どうしよう!?」
訂正、彼女は人並みに焦る魔女だった。
「あっそうだ。回復魔法、」
ミキが首をなくした胴体に触れて詠唱を唱える。
「頭アタマあたま。治れ、ヒーリング」
男性の頭が首から徐々に生えるように再生する。
「なんか再生の仕方キモ」
ミキは回復魔法を扱えるほど優秀な魔女であった。しばらくすと男性の頭部は完璧に再生した。
「やあ、君が僕を助けてくれたのかい?ありがとう」
彼の顔を見た瞬間ミキの脳内はパニック状態であった。
(なに?このイケメン。私のバリタイプ。え?待って彼の周りに薔薇が見える)
「ええ、貴方が倒れているところを見つけて一応回復魔法をかけておいたのでもう心配要りませんよ」
ミキはとびっきりの笑顔で答えると男性は拳を握りしめ自分に起きた悲劇を語り始めた。
「実は僕、この森には散歩に来ていて森の奥から叫び声が聞こえたから向かってみたのはいいんだけど……急に火の玉が飛んできて…………くっ、絶対に犯人を捕まえてぶった斬る」
そして彼が一度深呼吸して落ち着くとミキに尋ねる。
「犯人を見かけてないかい?」
「あっえっと、」
ミキは目をグルグルさせて思考がパンクする。
(言えない!絶対に私が犯人だって、言ったら絶対に告白出来ない)
魔女ミキ、彼女は斬られるのはどうでもいいらしい。それよりも告白出来なくなる方が辛いようだ。
「さぁ?私ここに来るの初めてで……」
すると男性が不思議そうにミキを見つめる。
「え?でもここは魔女の森で、それに君、魔女ミキだろ?」
ミキの心臓は破裂寸前まで鼓動する。
(私の事知ってるの!?きゃ〜やった!やった!やった!って待って、じゃあさっきの嘘バレてる!?)
「いや、ここは私の森じゃないの…………この森は私のおばあちゃんの友達のそのまた友達の娘の森なの」
苦し紛れの嘘だが男性は純粋な笑顔で応えた。
「そうなんですね!すみません。実は僕あの魔法を放ったのは魔女様だと少し疑っていました」
「なわけないじゃないですか、あはは」
魔女ミキは無理やり作った笑顔で笑う。しかし彼女はまだ彼を諦めていない。
なにせこれが彼女の初恋だから。
「じゃあ僕は一旦帰って騎士団に通報するからまた会いましょう魔女様」
「ええ、また会いましょうね」
男性が去った後魔女は急いで惚れ薬の材料であるメスのゴキブリを集め探し回った。
そしてその後、魔女ミキと男性は法廷できちんと再開しましたとさ。
おしまい。