あーかい部! 12話① 筋肉
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
「あ"ぁ"ぁ"……疲れた。」
一番乗りになったきはだは机に上半身を横たえ、フライパンの上のバターのように溶けていた。
「かぇりたぃ……。」
「珍しいわね、体調でも悪いの?」
いつの間にか入室していた白ちゃんに声をかけられた。
「養護教諭としてさぁ……体育とかいう虐待についてどう思うよ……。」
「息災なようで養護教諭冥利に尽きるわ。」
「白ちゃん冷たぁい……。」
「きはだちゃんって運動あんまり好きじゃないの?」
「……来世はシジミ希望。」
「全身筋肉がいいの?きはだちゃんって意識高いわね。」
「うえぇん、白ちゃんが虐めてくるよ〜……。」
「女子高生なんて体力のピークなんだから、身体は動かし得なのよ?」
「動かさないとどうなるの?」
「……こうなります。」
白ちゃんが白衣を託しあげると、両足の筋肉質な太ももから足首にかけてびっしりと湿布が貼られていた。
「えっっ、」
「こら!ひいろちゃんみたいなこと言わないの。」
「ひいろちゃんへの風評被害……いや、言うねぇ。」
「私も学生時代にもっと運動しておけばなぁ……。」
「何年くらい前?」
「じゅ……こら。」
「ちっ。」
「とにかく、学生時代に身体作っておかないと老け込んでから苦労するわよ?」
「白ちゃんみたいに?」
「おい。」
「う〜ん、理不尽。」
「きはだちゃんは普段運動しないの?」
「この部活の人間に聞くぅ?」
「……そうだったわね。」
「はぁぁ……肉体という名の檻から解脱したい。」
「お釈迦様泣いちゃうわよ?」
「苦行は幸せにつながらないって悟ったのが仏教の始まりだよ?」
「くっ……、この子ら成績は良いのが腹立つわね。」
「たくさん徳を積むと良い思いができるんだよぉ〜?まさにお『とく』っ!」
「まさに外道……ッ!」
「ねえねえ白ちゃん、もう一回脚見せて〜?」
「……なんかやだ。」
「え〜、」
「どうせ『だらしねえ脚ですぜこいつぁ』とか言うつもりなんでしょ……!?」
「うわ〜すごい。なんでわかったのぉ?」
「これでも顧問だからね。」
「そんな……白久澄河養護教諭の前では身体も心も管理されちゃうんだ……!」
「如何わしく言うなっ!」
「でも嘘じゃないでしょ?」
「確かに、健康に身体も心もないけど……きはだちゃんって普段こんなにボケる子だったかしら?」
「たまにはボケたい所もあるのさ。2人には見せられないけどねぇ。」
「じゃあ2人が来ればシャキッとするのね?」
「ところがどっこい、2人は今日……来ませんッ!」
「なら今日お休みでも良かったのに……。」
「白ちゃんが保健室サボれないでしょ?」
「きはだちゃん……!」
「ってゆ〜かさぁ〜、サボるっても、わたし達の相手するのも大概疲れるんじゃない?お盛んな生徒と変わんなくない?」
「確かに……!」
「白ちゃんも、もの好きだねぇ。」
「あーかい部が無くなったら運動部の顧問にされちゃうからね。」
「行くも地獄、退くも地獄か。かわいそぉ〜。」
「そうよ?もう少し労わってみたら?」
「自分の身体だよ?もう少し労わってみたら?」
「脚を指差すんじゃありませんっ!///」
「何か慣れないことでもしたの?」
「昨日バスが止まってて、歩いて帰ったらつったのよ……。」
「だらしねえ脚ですぜこいつぁ。」
「あ、こらっ!」
「白ちゃん予言的中〜。」
あーかい部!(4)
きはだ:と〜〜う、こうっ!ポチッ
白ちゃん:お疲れ様、早かったわね
きはだ:前後編に分けたった!
ひいろ:今日そんなに盛り上がってたんだな
あさぎ:前後編なんて初めてだよね
あさぎ:早速読んでこよっと
ひいろ:ワタシも
ひいろ:白ちゃんの脚どうだった?
白ちゃん:最初の感想それかい
あさぎ:『だらしねぇ脚』じゃないの?
白ちゃん:こら
きはだ:湿布貼ってたけどムキムキだった
あさぎ:
ひいろ:
白ちゃん:言葉を失うんじゃないわよ
きはだ:でもちょっと歩いてつっちゃうくらいには錆びてるんだよね
あさぎ:古びた名刀ってところか……
ひいろ:大きなのっぽの古時計
白ちゃん:今でも動くわよっ!
白ちゃん:まあでも2人とも元気そうで良かったわ
ひいろ:え?
あさぎ:元気?
白ちゃん:2人ともお休みって聞いたから体調でも悪いのかと……
あさぎ:少し頭痛がしたもので
白ちゃん:大丈夫って思っても身体はちゃんと労わってあげてね?
ひいろ:今日買った小説も読むのは治ってからにするんだぞ?
あさぎ:うん
白ちゃん:小説?
あさぎ:あ、打ち間違えた
白ちゃん:えっと、よくわからないけどお大事にね?
あさぎ:はい
ひいろ:[画像を送信しました]
白ちゃん:ひいろちゃんも?
あさぎ:あ
ひいろ:今日、本屋であさぎ見かけました!しかも割とエッチなコーナーで
あさぎ:それ先週の
白ちゃん:?
ひいろ:まだだ!
ひいろ:[画像を送信しました]
あさぎ:消せ消せ
白ちゃん:新しい本……?
ひいろ:今日発売です
白ちゃん:写真の本屋さん、今日発売の本が並んでるわね
ひいろ:そう!つまりこの本屋の写真は今日撮影されたものだ!
白ちゃん:あさぎちゃん……?
あさぎ:あ
あさぎ:そう!つまりこの本屋の写真を撮影したひいろも今日、割とエッチなコーナーにいたんです!
きはだ:wwwwww
白ちゃん:つまり、2人ともきはだちゃん1人に部活を押し付けてエッチな本を買いに行ってたのね
あさぎ:すみませんでしたぁぁああ!!
ひいろ:すみませんでしたぁぁああ!!
きはだ:wwwwwwwww
白ちゃん:まぁ……私が怒ることでもないけど、あんまりきはだちゃんに迷惑かけちゃダメよ?
きはだ:ダメよ?
ひいろ:[画像を送信しました]
きはだ:おい
白ちゃん:クレープ?あら可愛い
きはだ:でしょでしょ?きはだちゃんはいつだって美味しそうに食べるし可愛いんだよぉ
あさぎ:逃すか
あさぎ[画像を送信しました]
白ちゃん:レシートで、自撮り……?
ひいろ:ワタシとあさぎの奢りで食べるクレープは美味かったか?
きはだ:ななな、なんのことかなあ〜?
白ちゃん:あ〜、言い逃れさせないための自撮りね
あさぎ:私たちがエッチな本を買いに行く日、きはだを残していく対価としてクレープを奢りました
ひいろ:つまり合意の上での契約だし、きはだに迷惑はかけていないってことだな
きはだ:貴様らぁぁあ!!
白ちゃん:何を見せられているんだ私は
「証拠写真まで揃えて見苦しく仲間を売り合うなんて……まったく、しょうがない子たちなんだから……。」
〜〜〜
『なら今日お休みでも良かったのに……。』
『白ちゃんが保健室サボれないでしょ?』
〜〜〜
「ほんと、しょうがない子たちなんだから……♪」




