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 静かに涙していたコリンナも、王子たちの言葉に耳を疑う。

 アンジェリアの真っ青な顔を見て聞き間違いではないのだと確信したコリンナが王子たちに視線を移すと、彼らは相も変わらずヘラヘラとしていてコリンナを庇うような素振りは見られない。

 自身を庇ってくれるのだ、と少し期待してしまったことをコリンナは恥ずかしく思った。


 そんなコリンナの姿を視界に入れた双子王子は、彼女の心境を察してかクスクスと笑い声を漏らしたかと思うと、再び軽薄そうな表情に切り替え会話を弾ませた。


「僕たちに告白されたコリンナ嬢は可哀想らしい」

「いやぁ、傷ついたね。一体誰がそんな酷いことを言ったんだろうなぁ」

「確かアンジェリア嬢だったかな?」

「そ、それは……」


 アンジェリアが言い淀んでいると、王子たちは狙いを定めたかのように目を細める。


「コリンナ嬢が僕たちの代わりに言い返してくれたからまだよかったものの、あのまま言われ続けていたら……」


「「死刑にでもしていたかもしれないなぁ」」


 アハッ、という笑い声と共に彼らが口にした物騒極まりない言葉は、アンジェリアの精神をドン底に突き落とすのに十分だった。

 実際に公爵家の令嬢を侮辱罪だからと死刑にかけられるのかというと勿論不可能だが、冷静さを欠いたアンジェリアにはその考えが及ばなかった。


 なぜなら、彼らは王族の、それも自由極まりないと噂の王子たちだからだ。気ままに人を殺すことだって厭わない残虐な人間性であろう、と出処の分からない噂とは尾ヒレが付くものである。


 恐怖に想像を膨らませたアンジェリアが「も、申し訳ございません!! 決して本心ではないのです!!」と急いで謝罪をすると、王子たちは悪戯な笑みを浮かべ「本心ではないのか」「不思議だなぁ」と呟いている。

 その間のコリンナはというと、悔しさから溢れていた涙は止まり、彼らの感情が読み取れず不思議な感覚に陥っていた。


(この茶化したような会話……なぜだか懐かしい気がする……)


 高慢だったアンジェリアの醜態に最早興味のないコリンナの脳は、妙な懐かしさの理由を探し求め記憶を遡ることに集中していた。


「どうか寛大な心でお許し下さい!!」

「許すもなにも、僕たちは別に君を死刑にするだなんて一言も言っていないよ」

「そーそー。もしコリンナ嬢が言い返さなかったら、という可能性の話をしているだけ」

「君の言う通り、僕たちは寛大だからね」


 公爵令嬢であるアンジェリアの情けない姿にどよめく教室で、物語の悪役のように楽しげに微笑む王子たちを周りの生徒たちは一歩引いて見つめている。


 そんな異様な空間に、一つの光とも言える人間の声が響き渡る。


「昨日に引き続き、今度は何の騒ぎだ」


 王太子、オリヴァー・ラザフォードである。

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