19
コテージに辿り着くと先を進んでいた他のグループも既に休憩しており、コリンナたちは空いている場所へ腰をかけた。
緩やかな道のりとはいえ、コリンナも適度に疲れじんわりと汗をかいている。
「先輩たちは休んでてください。私は外で涼んできますね」
人の多いコテージより風のある屋外の方が過ごしやすい、と感じたコリンナが早々に立ち上がると、「私も行くわ」と有り得ない人物が共に立ち上がった。アンジェリアである。
「えっ……」
「私も風に当たりたいと思っていたの」
「あ、はぁ、そうですか……」
疑問符を浮かべながら分かりやすく怪訝な表情をしたコリンナだが、アンジェリアがなんでもないような顔で先を行くせいでコリンナは渋々彼女の後をついていった。
二人が外へ出ると、丁度このコテージが女生徒の使う正規ルートと男子生徒の使う非正規ルートの合流地点らしく、一休みする男子生徒たちが多く存在した。
アンジェリアは人気のない崖の方まで行くと「男性陣はこの下を通ってきたのね」とわざわざ薄暗い空気を醸し出している森林を上から眺めた。
「あら、あなたの婚約者候補の殿下方もいらっしゃるわよ」
「……そうですか」
「ほら、見てごらんなさい」
不思議なほど親しげに話しかけてくるアンジェリアをどうにも無視出来なかったコリンナは、隣に立ち彼女の指差す方向を見た。まだ昼間だというのに、陽に照らされ明るい色を纏った正規ルートと違い崖下の森林は影ばかりで暗く静まり返っている。アンジェリアの言うような人らしき姿も特には見当たらない。
「……何も見えません」
「もっと奥の方よ。ほら、あそこ。殿下方は順調に進んで行ってるみたいね」
「……どこですか?」
森林の奥を差すアンジェリアの指から示された方をコリンナは前のめりになりながら目を凝らすが、どんなに一生懸命目を細めても双子王子の姿どころか人すら見えない。
やっぱり見えないですよ、とコリンナが口を開こうとした瞬間、「あぁ、見間違いだったみたい」という声が聞こえ、それと同時にコリンナの体は宙へ浮いていた。
「えっ」
アンジェリアが、コリンナの背を押したのだ。