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 見分け方の話は早々に終え、三人は全学年合同授業に話題を戻した。


「それにしても、まさかアンジェリア嬢と同じグループになるなんてね」

「自分のことを敵視している人間と同じ集団で行動するって、想像するだけでキツそうだよ」

「そうなの! 今だって教室でギスギスしてるのに、どうしたらいいのよ……」


 アンジェリアは今も尚分かりやすくコリンナを敵視しており、日々目が会う度に鋭い目付きで睨みつけてくる。恐らく、入学二日目の双子王子による公開処刑が彼女のプライドを傷付け、その原因となったコリンナに恨みを抱いているのだろう。

 コリンナからしてみればアンジェリアの自業自得なのだが。


「まぁ授業は半日程度だし、何とかなるよ」

「そーそー、上級生もいるなら大胆な行動は取らないだろうしね」

「……だといいけど」


 大した根拠もなく楽観視する双子王子に「本当に私のことが好きなのか」と言いたいコリンナだった。


 やがて数日が経ち、全学年合同授業の当日が訪れた。今回の目的地は学園の所有するペール山の山頂、つまり登山だ。といっても、標高の低いペール山は女生徒でも数時間で登れる程度である。

 弱個体の魔物が多少潜んでいるが出現率の低い安全な正規ルートを女生徒が使い、男子生徒は整備が行き届いておらず視界も悪い、そして中級の魔物が多く潜む危険な森林を進むよう指定されている。


 アンジェリアとの集団行動を不安視するコリンナだったが、この日までアンジェリアからの接触も特になく至って平和な日々だったことから、上級生と共に過ごすこの日に限って彼女が何か行動を取るとは思っていなかった。

 その油断が、コリンナの最大の過ちであるとは露知らず。


 コリンナとアンジェリアは時間が来ると仲間たちと集合し、上級生三人と挨拶を交わす。上級生の中には平民もおり、元来天真爛漫な性格のコリンナは彼女たちとはすぐに打ち解けた。コリンナと双子王子の噂について興味津々な上級生は、コリンナに話を聞いてキャーキャー言っている。

 アンジェリアは相変わらずのプライドの高さ故に、下級貴族や平民の上級生と会話をするつもりがないのか、出発しても一人黙々と突き進んでいた。


 アンジェリアの魔法属性は火魔法、国内有数の貴族であるスウィングラー公爵家の長女とあって才能には恵まれているらしく、魔法制御に関して学び始めたばかりだというのに既に火力調整などは完璧だった。


「ちょっといいかしら」


 それまで黙々と突き進んでいたアンジェリアが、突然に和気あいあいと歩を進めていたコリンナと上級生へ声をかけた。


「あの茂みに何か潜んでいるようだわ。コリンナさん見て来てくださる?」


 コリンナはわざわざ自分を指定するアンジェリアに不信感を抱きつつも「……分かりました」と彼女の指さした茂みを覗きに行くが、特に何かがいるようには見えない。


「何もいませんよ」と言いながら振り返ると、アンジェリアは「あら、私の見間違いかしら」と初めてコリンナに微笑みを向けた。


(な、なによ……気持ち悪いんですけど……)


 至って普通のことなのに頭の中で失礼なことを考えドン引くコリンナだったが、そんなことに気付いてはいないアンジェリアは再び我先にと道を進み始めた。

 どういう風の吹き回しだ、とアンジェリアの意図を考えながらも上級生たちと話の続きをしようと彼女たちに視線を移すと、先程まで楽しく会話していた上級生たちの表情が硬くなっていることに気付いた。


「先輩方、どうかしましたか?」

「あ……ちょっと疲れちゃったみたい……! 後輩より先にバテるなんて、恥ずかしいわ」

「緩やかな山道とはいえ体力を消耗しますから、仕方ないですよ!」

「……ありがとう、コリンナさん……」


 コリンナは元気のなくなった上級生たちを純粋に心配し、アンジェリアに休憩を持ちかけた。するとアンジェリアは意外にも快く引き受け、

「この先に休憩用のコテージがあると先生方が仰っていたわ。そこで少し休みましょう」

と提案した。何だか不気味に感じたコリンナだったが、ツッコミどころのない提案だったため素直に受け入れた。

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