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(い、いや……騙されてはいけないわ……冷静になるのよ私)
若干抱いてしまったトキメキのようなものを気のせいだと決めつけ端に避けると、コリンナは冷静なフリをして「ずっと気になっていたんだけど……」と疑問を切り出した。
「昨日も『あの頃と変わらない』って言ってたけど、私たちって昔どこかで会ったの……?」
昨日の公開告白の際、コリンナの令嬢らしくない表情を見た双子が腹を抱え笑いながら言った言葉をずっと気にしていたのだ。もしかすると自身が大事なことを忘れてしまっているのではないか、とコリンナは昨晩気になり過ぎて眠れない夜を過ごした。
コリンナの質問に、二人は簡単に答えを出した。
「会ったよ、会話もした」
「えっ……」
「君が覚えていないのも無理もないよ。少しの間しか話してないしね」
王子たちは淡々と話すが、やはりコリンナには覚えがなかった。一体いつの話なんだ、とコリンナがグルグルと頭を悩ませ思い出一つ一つを思い返していると、そんな様子がおかしかったのか、王子たちはまたヘラヘラとした表情で
「いや、やっぱりあの印象的な出会いを忘れられているだなんて悲しいな〜」
「そうだねー、少なくともあの出会いがきっかけで僕らは君に長年恋焦がれていたというのに!」
「君ならすぐに思い出してくれると思ったのに、これでは思い出話もできないなぁ」
「「あ〜、残念だな〜」」
とわざとコリンナを刺激する言葉を吐いている。もちろん気の短いコリンナはすぐに頭に血が上り「うるさい!!」と声を荒らげ、双子王子は楽しそうに笑い声を上げた。
(なんなのよ! 真剣に思い出そうとしてたのに!)
コリンナを茶化して刺激するのが余程楽しいのか、コリンナの怒りに反して双子王子は機嫌良さげである。好きな子ほどいじめたくなる男児のような彼らに苛立ちを隠せないコリンナは、大きくため息を吐いた。
「それでコリンナ嬢、話は戻るけど一緒にお昼を――」
「嫌!!」
「そんなこと言わないで。『僕らのどちらかと婚約する』と兄上に宣言してしまったんだから、これからは僕らのことを知ってもらわないと――」
「だから嫌だってば!!」
「君が承諾してくれるまで後ろをついていくよ」
「やめて!! ついてこないで!!」
三人での食事を堂々と嫌がるコリンナと、嫌がる令嬢にしつこく付き纏う双子王子の図は誰が見ても異様な光景で、しばらく三人の噂は絶えないのであった。