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就職しました。

 親切心で日本へ帰るなら方法を探すと言ってくれたのに即答で必要はないと言ってしまった。


「即答なんですね。日本へ戻らなくていいの?」


 オーナーさんは不思議そうに私を見ている。


 家族がいなくて高校に入学できずアパートへ入れなくてどこも行けなくなり途方に暮れていたとき、なぜかここへたどり着いた。


 どうせ戻っても困難なのはわかっている。


 頼る人がいない日本より、いまここに残ったほうがまだ安全な気がする。


 そう話すとオーナーさんは気持ちを分かってくれたみたいで


「そう。わかったわ。ここなら私やみんなも力になるし、国王の内藤さんにも話してあなたがこの国で暮らせるように手配してもらうわ」


「ありがとうございます。助かります。あ、私は東京から来ました三谷ミホと言います。15歳です」


「ミホさんね。改めて私はツムギ。元井紬もといつむぎよ。よろしくね」


 日本へ帰ることを諦めてこの国で暮らすことを即決した私はこれからどうなるか。


 心配だけどあのときの渋谷をふらふらしていたときよりは気が楽。


 しかしこれからどうするかな。住むところとか必要だし。


「それでね。ミホさん。ここの裏に自宅があるのだけど空き部屋があるの。良ければだけどそこに住んでみない?食事もあるし。家賃もいらないわ」


「えっ!? いいんですか!? でも流石に家賃がないのは気が引けます……」


「んーそれならここで働いてみる?」


「仕事まで用意してくれるのですか!?神様!?」


「大げさねそれに神様は他にいるわよ。でも日本では学校がある年齢よね。この国でも学校はあるし、もちろん働く人もいるわ。どちらでもいいわよ」


「学校か……いえ。働いてみたいです。あ、でも私、アルバイトとかしたことなくて……」


「いいのよ。誰でもなんでも未経験からはじめるのだから。といっても他にやりたいこと見つかるかもしれないし。すぐ答えてくれなくても……」


「いえ。ここで働かせてください! ぜひとも! お願いします!」


「大丈夫よ。落ち着いて。わかりました。改めて。ミホさんよろしくお願いいたしますね」


「はい!」


「紬さん色々とありがとうございます。まだ明るいので少し町を見てきたいのですが……」


「そうね。町を知ることはいいことよね。でもとりあえずは住むとこへ行ってみない?明日はお店がお休みだから一緒に見て回りましょうか?」


「あ、はい。ありがとうございます」


「それじゃお店終わるまでとりあえず猫たちと遊んでて」


「んじゃワシについてきな」


 デンさんに連れられて猫エリアへと入る。同時にたくさんの猫さんが出迎えてくれる。


 デンさんが私のことをみんなに話してくれている。日本語で話しているけど猫さんたちはわかっているみたい。


 でもこの子たちはしゃべることはできないみたい。


 たくさんの猫さんにじっと見つめられる。そしてみんなスリスリしてくれた。なんという優しさ。猫って素晴らしい!


 今度はお礼に猫じゃらしで遊ぶ。しかしひとりでは対処しきれない。


 他のお客さんのところに猫さんはいるけど私の周りに5匹もいる。もう大変なことになっている。 飛んだり跳ねたり。空中でぶつかったり、着地の際に踏みつけたり。しかし猫たちはまったく気にしていない。


 そうこうしていると、ひとり、またひとりお客さんが帰っていく。と入れ替わりにこのお店へ入ったとき案内をしてくれた女性が入ってきた。


「猫さんにモテモテですね」


「ええ。こんなに集まってくれるなんてすごいですね」


「うちの子たちはいい子ばかりですから。申し遅れました。私はこのお店のアルバイトをしている『ナナ』と申します。よろしくお願いします」


「ありがとうございます。ナナさん。よろしくお願いいたします」


「ンじゃチャチャっとおわらせてカエルぞー」


「あ、その前にみんなにちゃんと紹介するね。みんないいかしら?

 今日からうちで働いてもらうことになりました、ミホさんです。みんなよろしくね。

 で、うちの方の紹介は。私がオーナーの紬、シェフのジェフさん。アルバイトのナナさん。ホールのハチくん。で、デンさんの肩書ってなにかな?」


「マスコットでもイイゾ」


「マスコットのデンさん。いやそれは申し訳ないよ。デンさんはこの国の守り神でもあるの。今はうちでマスコットをしてくれてるけど。あと今日はいないけど猫のお世話ボランティアのミキちゃんという子がいます。ミキちゃんはこの国の王女様だけどボランティアしてもらってるの」


「三谷ミホといいます。みなさんよろしくお願いします」


「よろしくね」


「じゃ、はじめよっか。みなさん。よろしくね」


 紬さんの合図でナナさんは猫さんたちにごはんの準備。デンさんは色々なお片付け。


 紬さんもカフェの方の片付けをはじめた。


 私もデンさんの手伝いをしながら仕事を見て覚えようと頑張る。


 ふと紬さんを見るとハチくんがずっと隣をキープしている。少し片づけてはまた隣へ。たぶん好きなんだろうなぁ……。



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