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「今回も全勝だな!」
そう言いながら紅羽はコインを指で弾きながら上機嫌に歩いている。
どうもここは沢山人が居る、儲かっているカジノのようだ。
どんっ!
すれ違いざまに他の客と肩がぶつかってしまう。
「うおっとっっ!!」
バランスを崩し、弾いていたコインを掴み損ねてしまう。
気をつけろ!! と罵声が聞こえたがそんなの知った事じゃない。
コロコロと転がっていくコイン。
血相を変えて追いかける。
「待って待てマテーー!」
コインを追いかける紅羽。
しかしコインは止まらない。
「悪かった!俺が悪かった!!だから止まれーー!!」
そんな事言ってもコインは止まるわけもなく、どんどん転がっていく。
このまま転がっていったら人混みに紛れて見つからなくなってしまう。
そんな事を考えたら頭が真っ白になってきてしまった。
コツンッ
しかし、幸いな事にコインは転がるのをやめた。
カジノの従業員の女性の靴に当たったようだ。
彼女はそのコインを拾う。
「ん? …コイン??」
「わりぃ、それ俺の…だ…??」
紅羽、駆け足で従業員の所に向かい、コインを受け取ろうとしたが、衝撃を受けたように
固まってしまう。
「…あの、どうしました?」
心配そうに見つめてくる彼女。
ウェーブのかかった長髪、ウサギの耳の付いたヘッドドレス。
バニーガールの格好をしており、首から「海月」と大きな名札を掛けている。
とても可愛らしく、紅羽より年下に見える女の子だった。
(とても好みだ…!!!!)
(大きな瞳は今にも吸い込まれそうな宝石の様な瞳…とても綺麗な肌、そして…とてもいい香りがする!!!!!)
ぱくぱくと、水から引き上げた魚のような口の動きをしている紅羽。
顔が赤くなってきてるのを感じてきた。
「……あの、大丈夫ですか? もしかしてワタシ、失礼な事をしましたか?」
「い!いや!そんな事ないですよ!!」
ブンブンと激しく横に振る紅羽。
「でっでも、お顔がとても赤いですよ! ワタシ怒られるのは慣れてますのでお構いなく!」
「いいや!!! そうじゃなくて!!」
咄嗟に戸惑っている彼女の手をギュッと握る紅羽、その行動にさらに戸惑いを隠せない様子。
紅羽も自分が何をどう思ってこんな行動を取ったか分からなかった、そして…。
「ーー好きです、俺と付き合ってくれませんか?」
分からないまま、衝動的に彼女に告白をした。