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君とのじかんは贅沢品  作者: PACARATTA
1/1

私って...

『運命の出逢いは0.00...%の低い確率』

 

 打ち合わせでお昼に行った喫茶店。3つ先の席にいた人が忘れられない。

 この歳になったからこそ運命なんて信じちゃいけないって...。


「はぁ、疲れた」


 8時30分に出社、残業だらけで遅い時間に帰宅、変わり映えのない日陰にいるような毎日。

 朝比奈 結衣(あさひな ゆい)。気付けばアラサー、29歳独身。私の住む世界に王子様なんていない、お城もない。仕事第一。

 子どもの頃はアイドルになりたい!学生時代はイケメンでお金持ちと結婚したい!なんて友だちと話してたけど現実ってやつは。


「寝よ」


 スマホ静かに置いた。こういう日に限って、色々な考えや過去が脳内を駆け巡る。

 SNSを開き閉じついたり消えたり大変そうなディスプレイ。

 そして安定の寝落ち。


「もう、朝か~」

 

 眠い目をこすり鏡とにらめっこ。


「え、くまが出来てるじゃん」


 初めましての時は動揺してしまったけど、今はコンシーラーという味方が隠してくれる。

 今日も電車に揺られながら。


「おはよー」

「ねえ結衣、彼氏と喧嘩しちゃってさ。あり得ないってか許せないんだけど聞いてくれる!?」


 この子は篠原 楓(しのはら かえで)

 会社の同期で部下上司両方から好かれる、世渡り上手なタイプだ。

 

「じゃー、ランチのときに聞いてあげるから、朝から会議なんだからほら行くよ」

「はぁーい」


 堅苦しそうに会議室の扉を開ける上司の表情がいつもと違う。


「おはよう、えー皆そろったか。今日から1人仲間が増えることになった」

「本日付けで配属になりましたと五十嵐(いがらし)と申します、よろしくお願いいたします」


 時間が空気がこの世の全てが止まったように感じた。

 昨日喫茶店で"3つ先の席にいた人"。言葉にならない気持ちが胸をざわざわさせる。


「よーし、会議始めるぞ」


 我が社はLovnk(ラブンク)

 【人生をつなげる1ページ。一瞬を永遠に一生の宝物】をテーマにオリジナルウェディングを提案しているブライダルプロデュース会社。

 従来の決まったプランに沿った結婚式でなく、おふたりの好きなようにプランをたてることができるため、より思い出深いものになるであろう。そう信じて私たちは日々道筋を作っていく。


「山崎さまのアウトドアウェディングの話はどうなった?」

「キャンプ場からOKいただきまして進行しております」

「出逢った場所だから慎重にいけよ、次は」


 12時37分。会議は何の問題もなく終わった。

 結衣は五十嵐に話しかけようとすると


「おい、五十嵐ちょっと」


 上司からの呼び出し。すれ違いながら会釈。

 それが精一杯だった。


「もうお昼だね~、結衣どうする?どこに行く?」


 楓の問いに迷いはなく即答だった。


「あの角の喫茶店なんかどう?」


 例の場所。なにも知らない楓は不満そうな顔をしている。


「居心地は良さそうだけど古臭いし、もっとオシャレなところがいいな~」

「やっぱそうだよね、その先に新しく出来たパスタにしよっか!」


 お腹いっぱいで会社に戻ろうとするとその喫茶店に五十嵐がいた。


「結衣どうしたの?」


 数秒間ただ見つめた。


「このパフェ美味しそうじゃない?」


 誤魔化すためにショーウインドウを指さす。2人の話し声がうっすら聞こえたのかコーヒーを片手に顔をあげる五十嵐。

 その瞬間、結衣と五十嵐の目が合う。

 もしかしたらここが始まりかもしれない。





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