↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

ワンルームの宵

作者: かねこふみよ
掲載日:2022/03/20

 連休の一日目の宵のことである。芋焼酎のロックの二杯目を舐めてから、明日の天気をスマホで見ていると、収納スペースから物音がした。乾いた弾ける音ではない。擦れる音でもない。歩く音である。スマホなどもう見ていない。座椅子にくつろいでいた姿勢を直した。身構えたと言った方がいい。収納スペースの戸がゆっくりと開いた。黒い影がのっそりと現れて来る。茶色い毛並みの四足獣が顔を出し、身を出した。その顔には黄色っぽい縞があり、傷と見間違う生々しさほどだった。スマホは手からずり落ちた。獣は人間を凝視しつつ距離を徐々に詰めていく。獣と人間の顔がほんの数センチまで近づいた。光る目に人間は息を止めるばかりで、唾を飲み込むことさえできなかった。獣は静かに人間から離れ、収納スペースに戻って行くと戸が閉まった。物音はもうしなくなった。

 ほっとした。肩の力が抜けた。慌てて股座に手を伸ばした。顔も下げた。失禁はしていなかった。

 またほっとしてスマホに手を伸ばしつつ顔を上げると、真ん前に白いフクロウがいた。目が合うとフクロウは一度首を傾げてから辺りを見回した。収納スペースの戸がまた開いた。フクロウはそこへ、その中へ飛翔、消えてしまった。

 スマホを取り上げて、動画を撮ろうと画面に触れた。もうそこには獣もフクロウもいない。今更である。埋もれるように座椅子にもたれると意識が急に遠くなった。

 気が付くと朝になっていた。照明はついたままだった。曇りの朝。背伸びをしてから立ち上がった。少し立ち眩みがした。収納スペースの戸が開いていた。開けた記憶はない。昨日の午前中の内に掃除をしてちゃんと閉じていた。戸の前に立った途端、獣とフクロウのことがよみがえって来た。あれは夢だったのだろうか。収納スペースはやはり見知った収納スペースで、獣やフクロウが出入りするなんてことはありえない狭さだった。ただ、その暗さが今の限り闇の出入り口なのかもしれないと、想像した。

 これはネタになる。プロットも行き詰まっていたファンタジー小説が書き始められそうな気がして、出かける予定を止めることにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。