第4話 その名は「普人族」
(作者からのお知らせ)
このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。本編の前史に当たるお話を集めております。
本編の後に、本作をお読みいただけると、より解りやすいと愚考いたしております。
内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、先に本編をご笑読ください。
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◆業務メモ 業務開始から45億9,985万年、某日◆(15万年前)
ついに、「セカンド・プラス種」を超える、新人と言える生物群を確認した。
あえて魔力に頼らない生物となったことで、魔素希薄地域での食物連鎖の上位を占めることに成功したと考えられる。
充分な脳容積に、器用な上肢、文明の担い手として申し分ない。事実、狩猟と物々交換による初期の社会を形成する一群も見られている。
「サード種」の名が与えられた。
◆業務メモ 業務開始から45億9,990万年、某日◆(10万年前)
「サード種」に自然分化した新種ができていたことが確認された。
山岳地帯に適応して進化したようで、身長は低いが体格はがっしりしており、速度より筋力を重視した体形となっている。意外に魔力適性もあり、パワーファイター型の形質を持っていることが判明。知能も高く、明らかに現代人と言える性能を持っている。
自然進化種は珍しいので、そのまま放置、経過を見ることとなった。
のちに、「ドワーフ種」と呼ばれるようになる種族である。
◆業務メモ 業務開始から45億9,990万年、某日◆(10万年前)
惑星管理神から、「サード種」の改良強化型を作るよう指示があった。やはり、「基本的に魔力適性が弱すぎる。」らしい。
改良班は別のほ乳類の能力を一部加えるプランを検討するらしい。
◆業務メモ 業務開始から45億9,990万年、某日◆(10万年前)
改良班は幾つかの試作モデルを惑星管理神にプレゼンし、承認を得た。
他のほ乳類の能力を加えたことで、5感や筋力を強化している。ウザギ、イヌ、ネコなどの形質を付加された試作モデルは、頭頂部に魔導器官を生やすようになった。
後に「ケモ耳族」と呼ばれる人型知的生命体である。
◆業務メモ 業務開始から45億9,991万年、某日◆(9万年前)
ついに、「サード種」を超える種族が誕生した。
繁殖力、寿命、体格、知性、ほぼすべてのスペックが「並の上」である。魔力適性が若干低いが気にするほどではない。この星の知的生命体の主力の座を獲得するだろう。
「普通の人」という意味を込めて「普人族」と名付けられた。
以後、この種族が文明を起こし、我らを神と崇めるようになる。
◆業務メモ 業務開始から45億9,993万年、某日◆(7万年前)
「普人族」への惑星管理神からの評価は上々である。文明への適性の高いこの種族は予想通りこの星の人型知的生命体の主力の座に就きつつあった。青銅器文明から鉄器文明に移行してから爆発的に信仰心も得られている。
惑星管理神から、定期的に終末災害を起こし文明をリセットするよう指示があった。以後1万年から1万5千年ごとにこの世界に災厄が降り注ぐこととなる。
◆業務メモ 業務開始から46億年、某日◆(約1,600年前)
定期的かつ適正規模で行われた終末災害は人型知的生命体どもの文明を適度にリセットしており、順調に信仰心を収集できている。惑星管理神から評価も上々だ。
そんな中、ゴブリン族の中に強力な個体が発生。周辺のゴブリン族を統合し一大国家を形成した。単に強力なだけでなく、組織運営などの知恵もあるため、他世界からの転移、干渉が警戒されたがどうやら違うらしい。ゴブリン族のみならず周辺の人型知的生命体種と連携し普人族への対抗組織を作り上げてみせた。
ほかの同僚は面白がっているが、この「対普人族連合」は今後のこの星の人型知的生命体の勢力分布を塗り替えるだけの力を秘めている。
要警戒だわ。
(つづく)