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ごーれむ君の旅路外伝 ごーれむ君前史  作者: れっさー
第1章 女神シャリーの惑星管理業務メモ 編
3/24

第3話 文明の芽生え

2024年2月11日改稿。

種族名”オーク”を”ビーリシカ”に変更しました。

作者からのお知らせ(ピンポーン)

 このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。本編の前史に当たるお話を集めております。

 本編の後に、本作をお読みいただけると、より解りやすいと愚考いたしております。

 内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、先に本編をご笑読ください。


**********


◆業務メモ 業務開始から45億9,970万年、某日◆(30万年前)

 「新人」とまではいかないが、「旧人」を大きく超えるスペックを持つ一群を発見。神力を注ぎ続けた「セカンド種」が更なる進化に成功したと言っていいだろう。すべての能力値(パラメーター)を強化した進化はなかなか起こしにくい。先日(・・)注入事故があったばかりで神力の注入を抑え気味だったが、結果的に上手くいった。

 「セカンド・プラス種」発生の報告により、珍しく惑星管理神(ボス)からお褒めの言葉をいただいた私たち進化速度強化班は、仕事帰りに打ち合わせ会と称する飲み会をすることとなった。同僚の1柱(ひとり)が良い店を知っているとのこと。楽しみだ。


◆業務メモ 業務開始から45億9,970万年、某日◆(30万年前)

 仕事帰りの飲み会には、何故か改良型開発班も合流してきて、結構盛り上がった。

 仕事の愚痴を酒の肴にしつつ、冷えたビールをジョッキで流し込む。この一杯のために生きている! と確信する瞬間だ。(やはり仕事の愚痴は適度に発散するに限る。)

 ・・・話題はどうしても人型知的生命体(ヒューマノイド)のことになる。現在惑星上で運用試験中の「セカンド・プラス種」にしても、「コボルト種」にしても個体として弱すぎる欠点を克服できていない。魔力との親和性が高い昆虫種はおろか、食料とするべき植物種からも捕食されるような体たらくである。「野生ゴブリン種」と食物連鎖の最下位争いを続けている状態では、文明を起こすどころではない。時期的には、そろそろ「新人→現代人」への進化と文明の勃興が必要なのだが、解決策が出てこない。

 せっかく珍しく惑星管理神(ボス)からホメられたのに、お通夜の様にシンと静まり返る私たち。

 そのとき、酔っぱらった1柱(ひとり)がこう叫んだ。

「セカンド・プラス種が弱いんじゃない! 他の生物群が強すぎるだけなんだ!」

 この一言が、私たちのターニングポイントだった。


◆業務メモ 業務開始から45億9,970万年、某日◆(30万年前)

 惑星管理神(ボス)に掛け合い、植物種の改良の許可を得た。魔素の少ない地域でも育つような穀物種、野菜種を開発し、凶暴な天敵がいない魔素希薄地域で繁殖させればいいのである。

 人型知的生命体(ヒューマノイド)の改良進化には物凄いリソース(神力)が必要だが、知性を持たせる必要のない生物群の改良進化には、それほどリソースを必要としない。人型知的生命体(ヒューマノイド)が弱いなら、更に弱い生き物を作ればよいのである。どうせ強大な天敵種は、龍脈上の魔力の濃い地域でしか生息できない。

 逆転の発想ともいえるこの方法は、意外に上手くいきそうだ。


◆業務メモ 業務開始から45億9,980万年、某日◆(20万年前)

 人型知的生命体(ヒューマノイド)用の植物群が完成し、惑星上に配布した。新しい植物群は順調に魔素希薄地域で勢力を拡大し、「セカンド・プラス種」や「コボルト種」がその植物群をエサとして流入している。先行して魔素希薄地域に入った集団には、初期の農耕ともいえる活動が確認できた。いよいよ、文明への第一歩である。


◆業務メモ 業務開始から45億9,980万年、某日◆(20万年前)

 改良型開発班が、新たな改良種をプレゼンし承認を得た。魔素希薄地域での繁殖には成功しているが、やはり個体の弱さは大きな減点ポイントである。個体の戦闘力を強化するタイプの開発は惑星管理神(ボス)も必要と考えていたらしい。2種類のモデルを用意するよう指示があったとのこと。(改良型開発班は、この指示のせいでデスマーチになったらしい。ご愁傷様である。)

 「野良ゴブリン種」と「セカンド・プラス種」を元に個体の大型化、筋力や魔力適性の強化をコンセプトにした2つのモデルが同時に開発されることとなった。


◆業務メモ 業務開始から45億9,980万年、某日◆(20万年前)

 「野良ゴブリン種」改良型は、「セカンド・プラス種」の1.5倍ほどの体格とそれに見合う筋力を得た。また、戦闘能力強化のため強靭な皮膚が実装され、高い魔法適性による身体強化や自己治癒能力の強化と相まって、単体での戦闘能力は大きく強化された。同程度の大きさの昆虫型生物種とも互角に戦えるスペックは、維持された連携能力により個々の数値以上の戦闘能力をこのモデルに与えている。

 半面、繁殖能力は大きく損なわれ「セカンド・プラス種」より少し劣る。幼体から個体への生長期間も(ゴブリン種と比べ)長くなった。大きな体格は必要とする食料も増加し、生存競争において不利となっている。

 外見上の特徴は、先ほど述べた「セカンド・プラス種」の1.5倍ほどの体格と額の角が大型化し中央1本に変化したことである。(どうやらこの角は魔力強化媒体としての機能しかなく、魔導通信能力は失われている模様。)

 「オーガ」の開発コードが与えられ、惑星上の魔素中濃度地域にて運用試験が行われることとなった。


◆業務メモ 業務開始から45億9,980万年、某日◆(20万年前)

 オーガ種とほぼ同時期に「セカンド・プラス種」の改良型モデルが完成した。この改良型はイノシシ種の形質を取り込んだモデルとなった。この惑星のイノシシ種は、草食に近い雑食性でありながら凶暴性とそれを可能とする高い戦闘能力を持つ生物種である。弱々しい「セカンド・プラス種」に付与するにはうってつけの形質ともいえる。

 外見上の大きな特徴として、「直立歩行するイノシシ」が挙げられる。オーガ種は強靭な皮膚をもつが、このモデルは毛皮がその機能を果たしている。そのため暑い地域での繁殖に向かず、どちらかと言えば寒冷地モデルとなった。体格はオーガ種とほぼ同じで筋力も同程度となっている。

 オーガ種より魔法適性が低いので、自己治癒魔法まで魔力を廻すことができない。しかし、「セカンド・プラス種」より高い知能があることが判り、意外に器用であることもわかった。(コボルト種もそうだが、動物種の形質を取り入れると何故か手先が器用なモデルになる。原因は不明。)

 「ビーリシカ」の開発コードが与えられ、寒冷地での運用試験が行われることとなった。

(追記:この「ビーリシカ種」は不思議なことにエルフ愛好神(ファン)からの需要があり、多くの他次元世界へ輸出されることとなった。ほとんどの世界で繁殖に成功したが、なぜか「エルフ種(♀)との交配ができない!」という、妙なクレームが殺到した。

 無理な異種交配は愛玩生物(ペット)虐待禁止法違反なのだが。)



(つづく)

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