第23話(5章5話) 普人族
(作者からのお知らせ)
このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。本編の前史に当たるお話を集めております。
内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、本編と並行してご笑読ください。
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「普人族は、都市国家を築き、急速に人口が増えつつある。」
これが、10年間の対普人族紛争でコボルト王が得た結論であった。
「すごい乱暴な数字になるんやけどな。」
と、コボルト王は断りながら説明を続ける。
「普人族は、大体20年で世代交代する。」
「我ラノ、10倍以上ノ時間ガ必要ナノダナ。ソレナノニ、数ガ増エルノカ?」
成人となるまでに必要な時間は、おなじ人型知的生命体といっても種族ごとに全く異なる。(地球でもセミや猿のように種ごとに生長期間が年単位で異なるのは珍しくない。)ゴブリン族は概ね生まれてから1年半で妊娠可能となる。
一見すると、成人まで時間がかかる普人族のほうが人口が増え易いというのは納得しにくい。
ゴブリン王は不思議そうに首を傾げた。
「ソコや!」
コボルト王は『ここがポイントや!』と声を大きくする。
「普人族の女性は、生涯で大体4、5人の子を産むんや。」
「フムフム。ごぶりんノ4分ノ1以下ダナ。」
小鬼族は繁殖能力に特化した人型知的生命体である。ゴブリン族の女性の妊娠サイクルは半年。一回に2~4人の赤子を出産し、生涯に20人近い子を産む。しかし、弱小種族のため、成人して次の世代を残せるのは精々2人ちょっと、である。(なので、大地がゴブリンで溢れることはない。)
「で、生まれた子供は3人に1人しか死なないんや。」
「何ダト?!」
コボルト王の分析が正しければ、普人族は一人の女性から3人チョットの成人が育つのである。
「つまり、普人族は20年経つと人口が1.5倍になる、ちゅう訳やな。」
恐ろしい予測に、コボルト王も青ざめながら説明する。
「ざっくり、毎年人口が2.5%増えるのは悪夢でしかないわ。」
民を飢えさせない事が政の基本であることはどこの種族、どんな世界でも変わらない。(別に、慈悲とか人道主義ではない。飢える者が多い社会は不安定で統治しにくいからだ。)
自分自身、王位につき国内に飢餓がないよう苦心しているコボルト王の発言は実感がこもる。
この世界、養える人数は領地の広さに比例する。食糧生産のための農地を4年間で1割増やさないと、凶作でなくても普人族の社会では餓死者がでるのである。餓死者を出さないためには予め余剰人口を処分するか、外部に領地を拡げるしかない。
人型知的生命体全体はこの世界の覇者ではない。食物連鎖的には底辺に近い、弱小種族である。(ゴブリン族はその中でもさらにザコ種族だった)
弱小種族な人型知的生命体が生きてゆけるのは、龍脈から離れ魔力の薄い地域に限られている。魔力満ち溢れ凶悪な魔物が蔓延る魔の森を開拓するのと、既に他の人型知的生命体が住んでいる土地に攻め入るのと、どちらが簡単であろうか?
そして攻められ、追い出された側の人型知的生命体がたどる未来は?
「多クノ者タチガ、森ニ追イヤラレルノカ・・・。」
ゴブリン王の脳裏に、危険な魔の森に隠れ住まざるを得なくなった種族の面影が浮かぶ。
「今はまだええよ。人数も文明度もそれほど差はないさかい。そやけど・・・。」
コボルト王は戦慄した顔で、恐ろしい未来を予言する。
「このまま普人族の文明度が進むと、普人族の人口上昇率は更に高くなるやろ。」
進んだ文明は強力な武器防具を大量に作り出せる。
対外侵攻を運命づけられた、強力に武装した種族が選ぶのは、侵略以外あり得ないだろう。
「今のうちに普人族を滅ぼさないと、他の人型知的生命体は残らず普人族に滅ぼされてしまうやろ。」
(つづく)
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