第18話(4章4話)イズミール王国滅亡
(作者からのお知らせ)
このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。本編の前史に当たるお話を集めております。
本編の後に、本作をお読みいただけると、より解りやすいと愚考いたしております。
内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、先に本編をご笑読ください。
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イズミール王国歴139年7月初旬、サシャリル陥落。
それから半年も経たない同年12月、首都アクサヒルンが陥落しイズミール王国は滅んだ。
ゴブリン=コボルト連合軍が攻め入った訳ではない。弱体化したイズミール王国を狙って北からカオミール王国が、西からシゲミール王国がそれぞれ侵攻してきたのである。
イズミール王国の北西部の領主たちは侵攻してきた両国にあっさりと寝返り、カオミール、シゲミールの両国は何の障害もなく首都アクサヒルンに到達、寝返った領主軍を加えた圧倒的な兵力差で終始優勢に市街戦を展開、王城は火の海に沈んだ。
元イズミール王国の領土は、両国の草刈り場となったという。
・・・そこで満足していれば、戦火はこれ以上拡がらなかったかもしれない。
しかし、両国は、特に北側から侵攻したカオミール王国の野心は旺盛で更に兵を東に進めてしまう。
時代は平和や安定よりも戦火や動乱を求めていたのかもしれない・・・。
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「困ったなぁ・・・。」
コボルト王は”当てが外れた”コトに激しく困惑していた。
「何カ、マズイノカ?」
事態を理解しきれていないゴブリン王が不安そうに尋ねる。此処はウルル関要塞の東側、要塞の後方支援都市“ウルルン”。2人の王はウルル関での2度目の越冬に向け忙しい日々を送っていた。そんな日々の中、ある偵察の報告を受けたコボルト王が、苦虫を嚙み潰したような顔で先ほどのセリフを吐いたのである。
「それはなぁ・・・。」
ゆっくりと、事情を嚙み砕いて説明するコボルト王。わりと解説好きなコボルト王と、自分の知らないコトは素直に聞き入るゴブリン王は、端から見る以上に馬の合う間柄だった。
「あのな、ウルル関を絶対防衛線として維持しつつ西の城塞都市を堕とせば、デカ人間はもうワシらにチョッカイかけてこないと思っておったんや。」
「ソレハ事実ダロウ。現ニ我ラハコノ半年穏ヤカニ過ゴシタ。」
ゴブリン王は何が問題なのかちっとも判らなかった。西の悪魔達がサシャリルと呼んでいた城塞都市を堕としてから、コボルト王の考え通り悪魔からの侵攻はなく、ウルル関の東側、アルスタ地方と呼ばれる土地は新たなゴブリン=コボルトの入植地として大勢の民が希望と共に大地を切り拓いていた。
勢力範囲が広がったことで、ドワーフ族やオーク族、オーガ族など様々な人間と交流が生まれるようになり、ゴブリン族はかつてない平和で希望に満ちた時を過ごしていたのだ。
「デカ人間の国はアレ一つやなかったんや・・・。」
「ドウイウ事ダ?」
「ええか、チョット絵で描いてみるな。」
コボルト王は会議用の大型黒板に丸を一つ、その左にもう一つ丸を描いた。
「これがコボルト国、でこの西にゴブリン国を興してもらった。」
次に、ゴブリン国を示す丸印のその左に丸を描き、左端に縦線を引く。
「ゴブリン国の西にアルスタ地方があって、この縦線がウルル関や。」
縦線の左に、それまでの倍の大きさの丸を描く。
「で、この大きい丸が悪魔達がサシャリルと呼んでいた城塞都市の勢力範囲や。いまココは誰もおらん、空白地帯となっている。」
「ソウダ。我ラモ敢エテコノ地ニハ入植シテオラン。」
「まぁ、まだまだアルスタ地方だけで充分やしな。でもな・・・。」
ゴブリン王の言葉に頷きつつ、コボルト王は更に、サシャリルを含めたサシャリルの3倍ほどの大きな丸を描く。
「デカイナ・・・。コレハ?」
「この、サシャリルを含めたでっかい丸が、ワシらゴブリン=コボルト連合軍が戦っていたイズミール王国や。」
「コンナ大キイノカ・・・。」
ゴブリン王にいや、ゴブリン族にしてみればゴブリン国だけでも広大な国であったが、コボルト王が描いたイズミール王国を示す丸は、ゴブリン王の想像を超えていた。
「そやけど、イズミール王国はもうない。滅んだ。」
「ナニ? 我ラは何モシテイナイゾ?」
「俺らや無い。イズミール王国を滅ぼしたんは、コイツラや。」
コボルト王はイズミール王国を示す丸の上と左に、同じサイズの丸を2つ描く。
「マサカ・・・。」
「その、まさかや。イズミール王国と同じくらいのデカ人間の国があと2つあって、コイツラがイズミール王国を攻め滅ぼしたんや。」
「ナント・・・。世界ハ斯様ニ大キイノカ・・・。」
世界の広さに驚嘆するゴブリン王を余所に、コボルト王が嫌そうに話す。
「で、この北側のヤツが、こっちに向かって来てるんや。大勢の兵隊を連れて。」
「マタ、戦ニナルノカ・・・。」
ようやく事態を理解したゴブリン王も嫌そうに話す。
「我ラハ、タダ穏ヤカニ暮ラシタイダケナノニ・・・。」
だが時代は、ゴブリン王の願いを聞き入れることはなかった。
(つづく)
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