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第16話(4章2話)膠着

2021年11月13日改稿。誤字訂正。

作者からのお知らせ(ピンポーン)

 このお話は、拙作「ごーれむ君の旅路」の外伝です。本編の前史に当たるお話を集めております。

 本編の後に、本作をお読みいただけると、より解りやすいと愚考いたしております。

 内輪ネタや本編のネタばらしもありますので、先に本編をご笑読ください。


**********


 『アルスタの戦い』での敗北により、10月に始まったイズミール王国の東方開拓は初手から頓挫した。

 ゴブリン=コボルト連合軍はアルスタ地方を一気に西進、進路上にある集落や町を呑み込みながらイズミール王国の東端国境付近にある交通の要衝、ウルル関の砦を占拠する。

 ここでイズミール王国の対応が遅れたのは、ゴブリンに対する認識が誤っていたことが原因と言えるだろう。ゴブリン()は既に『武装する人型生物(ヒューマノイド)』であったのだ。しかし人間(普人族)にとってゴブリンは“魔物の一種(しょせん犬畜生)”であり、自分たちと同じ知的人型生物(ヒューマノイド)と思わなかったのである。ゴブリン軍は『ゴブリンの大()』としか認識されておらず、戦場で戦って初めて『これはいつものゴブリンとは違う。』ことに気付いたのである。(そして気付いた時にはもう遅かったのだ。)

 もちろん『ゴブリン達が防具を装備している。』旨の報告は王都に届けられていたが、あまりに非常識だったので、初期の報告は一笑にふされ相手にされていなかったのだ。

(地球に例えるなら、『テナガザルの群れがマシンガンで武装して街を襲った。』というようなモノである。たとえ真実だとしても、信じる方がどうかしているだろう。)


***********

 

 11月に入り、小雪から本格的な降雪になりつつあるこの時、ゴブリン=コボルト連合軍はウルル関全体の軍事要塞化に全力を投入していた。

ヤツラ(普人族)ノ動キハドウカ?」

 ゴブリン軍はウルル関の西側に陣を張っていた。その最奥、本陣内でゴブリン王は戻って来た偵察隊からの報告を受けていた。

「ウント西、走ッテ2時間ノトコロニ、アクマ(普人族)大勢イタ。」

「南ニ走ッテ1時間ノトコロニ、2足恐竜型魔物(ディノニクス)ガ2ヒキ。」

「チョット北、走ッテ30分ノトコロニ三ツ角犀(ミツツノライノ)ノ群レガイタ。」

 どうやら普人族はチョッカイ掛けて来ないようだ。偵察隊を労ったゴブリン王は本陣から出て、ゴブリン軍全体を見回す。

 そこには、妙に見通しの良い風景が広がっていた。本陣はゴブリン軍の最奥にあり、本陣の西側には大勢のゴブリン兵が配置されているはずなのだが、兵はおろか陣幕一つ見当たらない。

 仕掛けは、地面にあった。小さな堀が何重にも掘られ、その中にゴブリン達は潜んでいたのである。

(”塹壕(ザンゴウ)”トカ言ウノデアッタナ・・・。)

 コボルト王により提案された深さ1.5メートル程のその堀は、南北にジグザグに掘られており、部下(ノーマルゴブリン)の報告では意外に快適らしい。座れば冬風にさらされず、ところどころ広く掘られた場所では“薪すとおぶ”という箱で暖がとれるらしい。そこで飲む“こぉひぃ”が『体は温まるが滅法不味(マズ)苦い。』ともっぱらの評判だった。

「王サマ。こぼると軍カラノ補給隊(こんぼい)ガ到着シマシタ。」

「ウム。駐屯地ヘ向カウカ。」

 部下の一人がゴブリン王に報告する。ゴブリン王は一度西方に目を向けると、踵を返して東へ、ウルル関の方へ向かった。


***********


 ウルル関は、南北に走る断層が途切れる切れ目であった。高さ、幅共に30メートル程の切り立った崖が、大地から壁の様に生えていて、ちょうどウルル関のところで50メートルほど切れ目となっており、東西へ通り抜けることができる。崖自体は南北20キロぐらいの長さしかないのだが、崖の南北両側には凶悪な魔物が蠢く危険地帯で、人型(ヒューマノイド)の通行を阻んでいる。イズミール王国から東に進もうとすれば、このウルル関を通るしかないのだ。

 東西への通路となっている関の中央部では、まるでダムの様に城壁が建設中であった。高さは10メートル、幅は5メートル程であろうか、大きな石材が積み木の様に積まれ、両面に足場が組まれている。そこでは、大勢のわんこ(コボルト)達が作業していた。

(ダイブ形ニナッテキタナ・・・。)

 この城壁を本格的な雪が降るまでに完成させる、そのためにコボルト達は突貫工事を続けていた。この調子ならどうやら間に合いそうである。

 関を抜けるとそこには広大な駐屯地が広がっていた。広い敷地は塀と柵で覆われ、魔物の侵入を防いでいた。遠くに天幕が幾重にも連なっている。ゴブリン=コボルト連合軍の兵は夜番以外全員この駐屯地まで戻り、温かい天幕の中で寒さをしのぐのだ。

 関の出口は大きな広場となっており、そこには浮揚地上船フロート・ランドシップが所狭しと並び、荷台から多くの補給物資が荷下ろしされていた。何人ものハイゴブリン(強化種)が荷台に取り付き、その巨躯と(ノーマルなゴブリンやコボルトと比べて)怪力で荷下ろしを手伝っていた。(ハイゴブリン(強化種)の働きで荷役作業の効率が当初の見込みを大きく上回ったのは、うれしい誤算であった。)

 空荷となった浮揚地上船フロート・ランドシップは数台ずつ纏まって車列を組み東へと戻って行く。冬を越すための物資はいくらあっても足りることはない。大雪の前に終わらせねばならない点では、この物資輸送も時間との戦いであった。

 

***********


 結果として、ゴブリン=コボルト連合軍はイズミール王国の妨害を受けることなくウルル関城壁を完成させる。11月も終わりのことであった。

 直後、本格的な雪となり、辺りは白一色の厳冬に包まれる。

 双方の思惑がどうであれ、春先まで事態は膠着することとなった。


(つづく)

 (C)れっさー 2020 All Rights Reserved.

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