始まりのトマト
皆さんはご存知だろうか?
赤くてみずみずしく、ビタミンCやビタミンE、食物繊維がバランスよく含まれる野菜の王道の中の王道……
そう。「トマト」だ。
しかし!トマトが苦手だという人は少なくないのではないだろうか?
酸味が強いことやブニョブニョ感、そして独特の青苦さなどの理由がある。
本作の主人公、玉木智弘もその中の1人である。
「ねえ。さっきから何1人でしゃべってるの? もう休み時間終わっちゃうよ?」
「こいつは高校生活の苦楽を共にしてくれてる唯一無二の我が奴隷 佐藤正樹だ」
「そんなこと言ってるとトマト食べてあげないよ?」
「すいません正樹さん。あっ!靴でも舐めますか?!」
「人に対する上げ方がへたなんだよなぁ」
そんなたわいもない会話を2人はありふれた教室の休み時間に繰り広げるのであった。
「あー 彼女ほしーなー」
「智弘はまず苦手なものをなくすところからだね。顔はいいんだからすぐ彼女なんてできると思うけどな」
「彼女持ちの上から目線がトマトの次に嫌いだわ」
ガラッ
「授業はじめるぞー」
「先生!まだトマトが僕の弁当箱からいなくなってくれません!!」
「そうかー 出欠とり終わるまでになくなってなかったらお前もトマトと同じ色にするぞー」
***
「君が食べてくれないから先生に怒られたじゃん!」
智弘は学校がおわり、歩き慣れた通学路を唯一無二の奴隷と肩を並べて歩いていた
「いつも言ってるでしょ?好き嫌いはダメだって」
智弘は不服そうな顔で正樹の顔をじっと見ている。
確かに好き嫌いを無くせば、いい女の子は見つかるかもしれない。しかしそう簡単に生を受けて17年ずっと嫌いだったものを簡単に食べれるわけがない。
むしろ出会いもないのに好き嫌いがどうのこうのなんて関係ないと自分の中で完結していた。
「そういえば今日クラスの子から明日オープンするトマト料理専門店に誘われたんだけど一緒にいく?」
「君は今まで何を見てきたらそんな言葉がでてくるんだい?頭がおかしいのかい?死ぬの? んな所、地球が滅んでもいきませんわ」
「そっかあ せっかく森谷さんが誘ってくれたんだけどな。ほかをあたってみるよ」
「え?! あの学校で1番かわいいと言われてて正樹くんが告白して『友達以上には見れないです』って言われて撃沈したあの森谷さん!?」
智弘は憎たらしいニヤニヤ顔で正樹の顔を覗きこむように言った。
「正樹くん〜からは余計だよ。まあそれをきっかけに話すようになったんだけどね。けど来ないんでしょ?」
「はあ!?いくに決まってだろ!美女にいるところに我ありけり!!」
「じゃあ明日駅前に10時集合ね」
智弘は意気揚々と夕日を背に歩をすすめるのであった。