86話 ロリコン
目が覚めると頭がぼんやりする。
あれは夢ではない、俺は確かにサラと話をしていたんだ。
ゆっくりと体を起こし、ベッドを見渡すが、既にシスとリリアーナの姿はない。
旅立つ前に抱いてやりたかったのだが、無理みたいだな。
だが、問題はない。どうせ直ぐに帰ってくるんだ。
俺はベッドから飛び出し部屋を出て、真っ先にアリアの部屋へと向かった。
扉をノックすると、愛らしい声が返ってくる。
扉を開け、アリアの姿を確認する。
アリアもどうやら起きて間もないようで、寝巻き姿で恥ずかしそうにしておる。
「どうしたの? こんな朝早く?」
「どうしてもアリアの顔が見たくなってな」
アリアは恥ずかしそうに視線を逸らし、ハニかんでいる。
その姿を目に焼き付けよう、しばらく会えなくなるからな。
「ひ、一つだけ頼みがあるのだがいいか?」
「なに?」
「抱きしめても良いか?」
「っえ!? ……う、うん」
驚いたアリアは少し間が空いて、顔を真っ赤にして俯いた。
俺はアリアに近づき、力一杯抱きしめた。
やはりアリアはいい匂いだ。
本当は尻の一つでも触ってやりたいのだが、今はやめておこう。
アリアの両肩を優しく掴み、そっと引き離してアリアの顔をこの瞳に焼き付けた。
「朝早くにすまんかったな」
「う、うん。別に平気だよ。ま、また、シュガーパン食べに行こうね!」
「うむ。それは楽しみだな! では、失礼したな」
足早にアリアの部屋を後にして、城を飛び出し、タリスタンの飛空艇場へと向かった。
飛空艇に乗り込むとすぐに自室に向かい、ガサガサと音を立て、クローゼットの奥にしまっていた赤く光る宝石を嵌め込んだペンダントを取り出した。
「あった……これだ!」
手にしたペンダントを見つめながら、俺は下唇を噛み血が流れると、左手でその血を拭い、ペンダントに嵌め込まれた赤い宝石に擦り付けた。
俺の血を擦りつけると、一瞬だけ赤い石が光を帯びた。
それから部屋に置いていた、お気に入りの漆黒剣を腰に装備し部屋を出ると、パリスとフードを被った赤フン姿のポブに出くわした。
「アルトロの親分、戻ってたんでやんすか?」
「腰に剣を携えて、どこか行くの? アル」
俺が剣を装備しているから不思議に思ったのだろうな。
それにしても、ポブはなぜズボンを履いていないんだ?
男の露出狂なんて気持ち悪すぎだろ!
「まぁ……ちょっとな。それよりいいところで会った! これをアリアに渡しておいてもらえないか?」
俺はパリスに先ほどのペンダントを手渡した。
「別に構わないけど……プレゼントなら自分で渡した方がいいよ?」
「まぁそうなのだがな。とにかく任せたぞ! 後、アーロンに自己の判断に任せると伝えておいてくれ!」
「っえ? どう言う意味?」
パリスは首を傾げていたが、気にせず走り出して飛空艇を出て、今度はスノーの屋敷を目指すため街へ繰り出すのだ。
スノーの屋敷があるのは確か貴族街だ。
スノーと一緒に天国に飲みに行った時、確かこの辺りの屋敷だと言っていたのだが……。
貴族街はどこも屋敷ばかりではないか!
とはいえ、スノーは伯爵家の人間だ、この辺りで一番大きく豪華な屋敷に行けば間違いないだろう。
一際大きな屋敷の庭を箒で掃く、メイドに尋ねてみる事にした。
「すまぬがひとつ尋ねたい、スノー=ノッド=アイランドの屋敷はここで合っておるか?」
「アイランド家のお屋敷は確かにここですが……失礼ですが、どちら様でしょうか?」
メイドは剣を腰に装備した俺を警戒しているのか、俺の全身を下から上に隈無くチェックしている。
まぁ、警戒するのも無理はない。
アイランド家の当主は既に二人暗殺されているのだ。
警戒しない方がどうかしている。
「俺の名はアルトロ=メイル=マーディアル、アイーンバルゼンの第三王子だ! スノーに話があって来たのだが、会えるか?」
「も、申し訳ございません!」
メイドは何度も何度も腰を曲げ、頭を下げるのだが、まぁそうなるわな。
「良いのだ! アイランド家が見知らぬ者を警戒するのは至極当然の事だ。事情は知っておる」
俺の言葉に安堵の溜息を吐くメイドが、すぐにスノーの元へ案内をしてくれる。
「こちらです、王子様」
メイドに案内されながら屋敷内を歩いているのだが、スノーはロリコンなのか?
目の前を歩くこのメイドはどう見ても子供だ。
歳は10~12といったところか?
それに、屋敷の庭を手入れするメイドが数名確認できるのだが、皆子供だ!
優男のフリをしたド変態だなアイツは!
俺は流石にガキは対象外だ。
尻を触る気にもならん!
「っきゃ!」
「おっとすまん、手が当たってしもうたの!」
「当たったんですか? 撫でられたような気がしたんですが?」
「気のせいだ!」
ヒヒ、この俺がガキの尻など触る訳がない!
勘違いメイドの案内で屋敷の中に入ると、随分と姿勢のいい眼光鋭い爺さん執事がいる。
爺さんとは思えん良き体格をした執事が透かさず歩み寄ってくる。
「セセ、そちらのお方は?」
「っあ! ハーディー様、こちらはアイーンバルゼン第三王子、アルトロ=メイル=マーディアル王子様です。スノー様に会い来て下さったようです!」
「そうですか。わざわざ王家の方が出向いて下さるとは、ここからは私がご案内いたしましょう」
別に誰が案内人でも構わんのだが、まぁいいだろう。
案内してもらうとしよう。
俺は明らかに只者ではない雰囲気を醸し出す、ハーディーと名乗る執事の案内で、スノーがいる部屋の前までやって来た。
――次回 87話、ウインク。
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