84話 セスタリカ家
体調も良くなり、明日はいつも通り二話更新できそうです。
更新時刻はいつも通り、7時、19時です。
ご心配とご迷惑おかけしました。
この女性がフルク王子の母親という事は、アリアの母親でもあるんだよな。
しかし、なぜこんな所に隠すように寝かせているのだ?
「驚いただろ?」
「まぁ、そうだな」
「本当はこんな地下じゃなく、陽の当たる場所に移してやりたいのだけどな……」
「ではそうしてやればいい。何故せんのだ?」
フルク王子は眠る母親の手を取り、握りしめている。
「俺やアリアには兄が二人いるのだが、母が違ってな。母のサラは二番目の妻なんだ」
「王族ならば腹違いの兄弟なんて珍しくないだろう?」
「まぁ……そうなんだけどな。マーディアル王家は次期国王の問題で揉めたりはしないのか?」
「俺も次男のマルセイ兄様も王位には興味ないからな、父上も長男であるフゼン兄様に王位を譲ると決めておるみたいだし、揉めたりはせんな!」
フルク王子は羨ましそうに眠る母親を見ている。
「セスタリカ家とは違うな……」
フルク王子はそう言うと、二人の兄の事と目の前で眠る母親の事を話してくれた。
目の前で眠る女性の名はサラ=セスタリカ、旧名はサラ=アイランド、元々伯爵家の出だったがセノリア王に見初められて王家に嫁いだらしい。
しかし、セノリア王には既に妻が二人いた。
その内の一人は子を産めない体だったのだが、もうひとりの妻は子を二人産んだという。
それが長男ボタニカ=セスタリカと、次男ルケア=セスタリカ。
しかし、サラがフルク王子を出産し、二人の母エルラナはサラを憎んだという。
王位を継承し次期国王になるのは長男であるボタニカだと、エルラナは主張したのだが、セノリア王は言った。
三人の世継ぎから最も王に相応しい者に王位を譲ると。
その言葉がきっかけとなり、エルラナは更にサラを恨んだという。
サラはセノリア王が決めたのならそれに従うと言ったのだが、その言葉がエルラナの怒りに油を注いだのだ。
エルラナはサラの余裕の態度に焦りを感じたのだろうとフルク王子は言う。
エルラナは男爵家の娘だったから、伯爵家の娘であるサラに劣等感を感じていたのだ。
無理もない、伯爵家と男爵家では有力者となる貴族の後ろ盾が違うのだ。
サラ本人は何も気にしなかったらしいのだが、サラの父はフルク王子が次期国王になる為の根回しをしていたという。
その事が更にエルラナを追い詰めていく、このままでは何れ王位に就くのはフルク王子になってしまうと。
焦ったエルラナは一人の魔女に泣きついたという。
魔女は多額の金銭と引き換えにエルラナの願いを叶え、サラに永遠の眠りへ誘う呪いを掛けたのだ。
だが、エルラナは魔女に金銭を支払う事はなかった。
怒り狂った魔女はエルラナに死の呪いを掛け、殺してしまったのだ。
長男ボタニカと次男ルケアは悲しみ果てに、サラとフルク王子を恨むようになったという。
とくに長男ボタニカのサラに対する憎しみは凄まじかったという。
ボタニカは何度か眠るサラを暗殺しようとした事があり、ボタニカを恐れたフルク王子は、母サラをこの秘密の地下に避難させたという。
しかし、最悪はそれだけではなかった。
サラを避難させた翌月には、サラの父が何者かによって暗殺されてしまったのだという。
フルク王子は祖父を暗殺したのは間違いなくボタニカだという。
だが証拠は何もなく、最大の後ろ盾を失ったフルク王子の立場は危うくなったという。
だけどフルク王子に全く後ろ盾がなかった訳ではない。
サラの兄であり、フルク王子の叔父が力を貸してくれたのだが、今から三年前、叔父も何者かに暗殺されてしまったのだ。
フルク王子に残ったのは、暗殺された叔父の息子でフルク王子の従兄弟、スノー=ノッド=アイランドだ。
スノーが力になってくれたのだが、スノーはまだ若く貴族たちを束ねる事が出来なかった。
フルク王子を見限った多くの貴族たちは、ボタニカ側についてしまった。
後にこの事がきっかけとなり、フルク王子が防衛を任された東の砦の一つ、バルタ高原の砦は、僅か600人での防衛を余儀なくされた。
対するボタニカが守る砦の兵力は約6000、ルケアが防衛する砦も5000の兵を有するという。
敵からしてもフルク王子が守る砦を攻略する方が都合よく、結果フルク王子は敗れ砦を奪われてしまったのだという。
砦を死守出来なかったフルク王子は既に崖っぷちの状況だという。
スノーは多くの貴族たちに支援を求め、頭を下げ続ける日々を送っていると言うが、現状は好ましくないという。
もし、このまま砦を取り返せなければ、アリアも母サラの身も危険だという。
「アリアや母親のサラがなぜ危険なのだ? フルク王子が王になれないだけであろう?」
「言ったであろう、兄は母を恨んでいる」
「だが、セノリア王の妃なのだからセノリア王が守ってくれるだろ?」
「父は……もう直に天に召される。随分とやつれていたであろう?」
確かに、初めて謁見の間でセノリア王を見た時から、げっそりしておった。
てっきり戦争による心労だと思っていたが、病に犯されていたのか!
だとすれば……!
「セノリア王が召されたら、お前らはどうなるのだ!?」
フルク王子は変わらずサラの手を握り、笑っていた……。
「すまん、余計な事を話してしまったな……もう戻ろう」
戻ろうって! 話はまだ終わっとらんだろう!
フルク王子はゆっくりと椅子から立ち上がり、部屋の出口に向かって歩き出した。
その後ろ姿は……酷く疲れているように見えた。
――次回 85話、夢。
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