80話 オッケー
セスタリカ城を襲った敵の襲撃から数日が経過し、城や街の警戒も徐々に緩和しつつあった。
あの後、生き残り捕らえられた黒ずくめの三人は、騎士たちに連行されどこかに連れて行かれた。
騎士の一人が俺の拷問をお手本にするとか言っていたので、今頃地獄を味わっている事だろう
セストは舞踏会が終わった翌日には早々に国へ帰っていったのだが、アリアはあまり悲しそうではなかった。
俺はポルドとの約束を果たし、二人で街中の飯屋を渡り歩いては、食べ歩きを続ける日々を送っていた。
結局敵の目的がなんだったのかわからないが、ポルドがひょっとしたら狙われているのは自分だったかもしれないと口にしていた。
ポルドは大国の王子という立場上、セスタリカでポルドが暗殺をされていたら、パリセミリスとの戦争の結果を待たずに、セスタリカは終わっていた事になるのだ。
まぁ、ポルドの言っている事も一理あるかもしれんが、どうなんだろうな?
それに襲撃の際、敵に会場の様子を知らせていた内通者がいたことは間違いない。
しかし、内通者が誰だったのかは不明だ。
俺は現在フルク王子の身の回りの世話をしているメイドに呼ばれ、メイドの案内でフルク王子の部屋へ移動しているところだ。
俺の前を歩くメイドはスカートの丈が短く、メイドとは思えんハレンチな見た目をしている。
これはフルク王子の趣味なのか? だとすれば、意外とむっつりだなアイツ!
少し小ぶりなメイドの尻を眺めていると、欲望に右手が疼きだしおる!
いかん! 人のものに手をつけるのは流石にダメだろ!
でも待てよ……フルク王子は俺を義弟と呼ぶ!
義兄のものを義弟が借りるのは別にいいんじゃないか?
兄弟間でものを貸し借りすることは至極自然ではないか。
なので試しにお尻を撫でてみる!
背後から手を伸ばし優しく撫でてやると、なぜかメイドは笑っている。
普通ならきゃーと悲鳴を上げるところなのだが?
……こいつ!? ドスケベなのか?
なんという隠し玉をフルク王子は持っているのだ! 羨ましい!
「フルク王子のおっしゃる通りのお方ですね」
どういう事だ?
「フルク王子が何か言っておったか?」
「はい。アルトロ王子は大の女好きなので、ミニスカートで迎えに行けば文句を言わずついてくるからと、おっしゃっていました」
あの野郎! よく俺を理解してやがる!
恐るべき洞察眼だな!
メイドの尻を撫でていると、一瞬でフルク王子の部屋の前に到着した。
楽しい時間というものはすぐに過ぎてしまうな。
「お入りください、アルトロ王子」
メイドは軽快に扉をノックし、扉を開けると部屋に入るよう促してきたので、遠慮せずに部屋に入ると、部屋の中にはフルク王子とスノーがテーブルを挟んで、高価な革張りのソファーにどっしりと座り、ティーカップを片手に茶を飲んでいる。
「来てくれたか義弟よ! こっちに来て座るといい」
スノーまでいるということは……嫌な予感がする。
とりあえず、言われた通りソファーに腰を下ろすと、スノーが微笑みかけてくるが、その笑顔が逆に怖い。
「で、何か話でもあるのか?」
ここまで案内をしてくれたメイドが、レモンが添えられたティーカップを俺の前に置くのを確認して、フルク王子が話を始める。
「パリセミリスに奪われた、東の砦へ俺たちと一緒に行ってはもらえないか?」
うわっ! めんどくさ! 絶対嫌じゃ!
「なぜ俺が行かねばならん?」
「アルの強さを見込んでお願いしているんですよ!」
「恥ずかしい話だが、俺たちだけでは砦を奪い返すことは困難なんだ。砦にはパリセミリス兵はもちろん、魔物の軍勢までいてるんだ! だが、アルトロ王子のあの強さなら、なんとかなるかもしれん!」
俺には関係のないことだろ。こいつらは何か勘違いしている!
俺がココル村で戦ったのもオスターへ赴いたのも、舞踏会で戦ったのも、全部アリアの為だ!
だが、砦とアリアは何の関係もない。
そもそも、俺がセノリア王から任されたのはココル村だ!
直にココル村に戻り、シスターアイシアの攻略をする使命も残っているのだ。
砦の奪還なんてめんどくさそうな事、誰が好き好んでやるか!
「すまんが、セノリア王から与えられた俺の任務はココル村の防衛だ! 砦は俺とは無関係だ!」
「いいかアルトロ王子! 俺には二人兄がいる、その兄二人も別の砦を守っているのだが、砦を奪われたという失態を犯したのは俺だけだ! このままだと俺の立場がまずいんだ! わかるよな?」
知るか! こいつ等は自分の立場を守る為に俺を利用しようとしているだけじゃないか!
そんなくだらん事に付き合っている暇わない!
俺にはパラダイス計画を遂行するという、重要任務があるんだ。
付き合ってられるか!
俺は腰掛けていたソファーから立ち上がり、扉に向かって歩き出した。
「アルトロ王子!」
「力を貸してはくれないのですか?」
「俺には関係ないからな。まぁ頑張れよ」
呆然と肩を落とす二人をよそ目に、俺は部屋を後にした。
部屋を出た俺はアリアに会いたくて、アリアの部屋へと向かった。
アリアの部屋の扉の前に着き、いつもならノックなんてせずに入るのだが、嫌われたくないので、丁寧にノックしてみた。
「はい」
「俺だ! 入ってもいいか?」
「ど、どうぞ」
扉を開けて部屋の中を見ると、アリアが何故かもじもじしている。
「ど、どうかしたの? アルトロ王子」
「い、っいや、良い天気なので二人で散歩なんてどうかと思ってな」
アリアがもじもじしておるから、こっちまで緊張して声が上擦ってしまったではないか!
「そ、そうね! たまには街を散歩するのも悪くないかも……ね」
「おお! では行くぞ!」
まさかのオッケーじゃ!
ヒヒ、デートだ!
――次回 81話、乱れる呼吸。
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