74話 心理戦
会場にいる全ての者が光のスクリーンに映された串刺し男を見ると、地鳴りのような歓声が会場を包んだ!
俺は片膝を床に突き、体を前に傾け右腕を魚人に突き出し、中指を突き立てて憎たらしい顔で言い放ってやった。
「ざまぁみろ! バ~カ! 何が重要なのは宝箱だ、宝箱取って死んでりゃ意味ねぇーな!」
するとポルドも立ち上がり、魚人を見下した顔で一緒になって侮辱する。
「バカなんじゃないかお前! 自分の技で仲間を殺してれば世話ないな! インチキまでしてこのざまかよ! っあ! 所詮は陸に上がった無能な魚だった! あぁ~生臭い生臭い!」
ポルドは鼻をつまみながら憎たらしさ全開のファインプレーを見せてくれる。
そして俺は鼻をつまんだポルドに謝罪する。
「すまんポルドよ! 俺のゲップの臭いかもしれん! 夕べ酒のつまみにフィッシュフライを食ったからなぁ~」
「フィッシュフライ! おいおい、目の前の魚人さんの恋人や親戚とかじゃないよな! 一度臭を嗅がせて確かめてみたらどうだ?」
俺は体を傾けた状態で首を突き出し、魚人に息をハァ~っと吹きかけた。
するとポルドが魚人に尋ねる。
「どうだ? 親戚の臭でもしたか?」
俺とポルドは顔を見合わせ馬鹿笑いをしてやった。
魚人は怒り狂ったように体中を真っ赤に染め上げ、歯ぎしりを立てながら反論してきた。
「たかが一人勝ったくらいで図に乗るな! どの道貴様が儂に勝つことは不可能なんだ! こっちにはキングのアリアがおることを忘れるな!」
俺は二ターっと得意のいやらしい笑を張り付け、愚かな魚人に教えてやる。
「残念だが、もう関係ないのだ!」
「関係ないとはどういう事だ!? まさか自分の命欲しさにアリアを殺す気か?」
「そんな事する訳ないだろう? お前馬鹿なの?」
するとポルドも魚人を言葉巧に追い詰めていく。
「ひょっとしてお前、自分のゲームの欠点に気づいていないのか? まぁ馬鹿だもんな!」
「はぁ? 欠点!? なんだそれは!」
ポルドの欠点と言う言葉に明らかに動揺を隠せずにいる魚人!
俺たちは既に、このゲームの幾つかの欠点に気がついている。
更に、ポルドと俺はゲームを進めている間も耳打ちをしながら作戦を練っていた。
ポルドはギャンブル等が好きなようで、この手の遊びは熟知しているらしく、この手のゲームとやらで勝つ一番のポイントは、心理戦を制することだと教えてくれた。
とにかく嘘でも何でもいいから、まずは相手を動揺させ、冷静な判断力を奪うことが基本だという。
だから、先ほどのリリアーナ戦の時もこちらには打つ手がなく、どうする事もできないと見せかけ、相手を油断させる事が重要だったのだ。
その為、初めから使い物にならないとわかっていた蔓を武器にしているところを魚人に見せつけ、魚人に勝利を確信させ油断させる事が必要だったのだ。
ポルド曰く、狩人は獲物を追い詰め仕留める時ほど油断するものらしい、つまりこちらは劣勢で自分は有利だと思わせる事が、心理戦の基本だという。
もちろん、アリアを救い出す方法も存在する!
このゲームが開始され既に1時間が経過しているのだが、俺は開始直後にリリアーナ以外にも、3人と1匹と既に連絡を取っていたのだ、その時アリアを救出できる算段がついたのだが。
ただ、その方法はかなり危険で、最悪仲間を一人犠牲にしてしまうかもしれないし、100%成功する保証もない。
そんな事とは知らず、先程までの余裕が完全に消えた魚人は立ち上がり、俺を指差し文句を言っている。
「嘘をつくな! 儂の精神の盤上に欠点などあるはずがない! それに先程から二人でコソコソと相談する、お前たちの方が卑怯ではないか! ルール違反だ! そこのデブは口出しするな!」
魚人は今になってポルドの存在を否定し始めたのだが、そんな事は知るか!
「はぁ~? ルール違反だ? ならなぜルール違反してもなんも起こらん! それはルール上問題ないからだ! 今更ルール変更なんてできる訳がない! 仮にルール変更がしたいのなら、一度この技を解く事だな!」
「アルトロ王子の言う通りだ! 頭悪いくせにこんなややこしいゲームを創るから墓穴を掘るんだ! それにこれはゲームとは呼べん粗末なモノだ!」
◆
くそったれが! この若造どもが!
儂をコケにしおって! 今も薄ら笑いを浮かべ儂を小馬鹿にしている。
しかし気になる、この儂が生み出した技に欠点などあるのか?
あるわけない! ではなぜ、この憎たらしい若造二人はこんなにも自信に満ち溢れているんだ?
あるのか? 本当にあるのか?
だとすれば不味い! 情報によるとこのアルトロは魔神をいとも簡単に倒したと聞く、そんな化けもんじみた奴とまともに戦って勝てる訳が無い!
落ち着け! 歳なのになんでこんなに新陳代謝がいいんだ?
汗が止まらん! 一旦座って落ち着くんだ。
儂が再び盤上の前に座ると、若造どもがニヤついている!
悔しぃぃいいい!
こんなガキに舐められてたまるか!
それにしても暑いなこの部屋は!
干からびてしまうわ!
首元を触り汗を拭くと同時に、体温を確かめるが、熱い!
どんどん体温が上がっている!
儂は恐れているのか? この二人の憎たらしい人間のガキ如きに!
一体どんな策があるという、それに欠点とは何なんだ?
あぁぁぁあああ、もうイライラする!
「おい、早く続きを始めるぞ! 次は中央の駒で2対2の対戦ができそうではないか? 早くしろ!」
偉そうに盤上を指差し命令しやがって!
何様だコイツ! しかしなんなんだコイツの余裕は!
本当に……この状況から儂に勝つ方法などあるのか?
儂は盤上をじっと見つめながら考えたが……わからん。
――次回 75話、ダッシュ。
この作品を少しでも気に入ってくださったら、下の評価ボタンをポチっと押して頂けると嬉しいです!
いつもありがとうございます。m(__)m




