62話 ラビリンス
会場を出た俺は城内の廊下を走り、アリアの元へ向かっていた。
城内の廊下にはところどころ花瓶や壺が飾られ、壁にはよくわからん絵が掛けられているのだが、なんか変だ?
微かな違和感を感じながらも、今はアリアとフレイの事が気がかりで、小さなことなど気にせず突き当りを曲がりって階段を駆け上がり、再び真直ぐ延びた廊下を駆けていたのだが、不意に俺は足を止めてしまう。
廊下の中央で足を止めてしまった俺は、今しがた走ってきた方角を振り返り、すぐに廊下の端まで見渡した。
廊下の壁際には洒落た白い花瓶と、キラキラ輝く黄金色の壺、壁には先ほども目にしたよくわからない絵が掛けられている。
この花瓶や壺、壁に掛けられた絵を見るのは、これで三度目じゃないか?
いつまで走ってもアリアの部屋には一向にたどり着けない。
たどり着くどころか、先程から同じところをグルグルと走っているだけだ。
俺は右手の人差し指を下唇に当てながら考えた。
舞踏会の会場となっていたのは城の二階、アリアの部屋があるのは城の最上階の四階だ。
城の四階はアリアやフルク王子、この城に住む王族の自室や客室しかない特別な階だ。
俺が泊まっていたのも四階なのだが、四階へ向かう階段は三階にしか存在しない。
一階から三階まではひとつの階段でつながっているから駆け上がれるのだが、四階へと続く階段は、一度三階に出て廊下を進んだ先にある、特別な階段を利用しなければたどり着けない造りになっている。
これは敵が城に攻め込んで来た際、少しでも逃げる時間を稼ぐための策として考えられたからだろう。
だからこそ、俺は三階の廊下を走り、四階へと続く階段を駆け上がったはずなのだが……現在ここは何階だ?
本来ならば、俺はもう四階にたどり着いているはずなのに、一向にたどり着けんのだ。
この奇妙な現象は魔法か? だとしたらいつ術中にハマったのだ?
先ほど会場のテラスから外を見たとき、青白い結界が城を覆っていたが、あの結界は単純に城の外側と内側を遮断するためのものだ。
城を覆っている結界が、この現象を引き起こしているわけではない。
だとすれば二重結界か?
いや、不可能だ! 仮に二重結界だとすれば、俺が城の三階にたどり着き、四階へと続く階段を駆け上がる、僅かな時間で結界を張り巡らせたことになる。
そんな短時間でこのような結界を張るなど、不可能だ!
だとすれば、可能性として挙げられるのは人技、或は魔技だ。
敵は予め、俺が四階へと続く三階の廊下を通る事を想定し、待ち伏せて俺が来たタイミングで、何らかの人技、或は魔技を発動させたんだ。
しかし、なぜこのタイミングで俺がここを通る事が予想できたのだろう?
俺がここを通っているのは、たまたまアリアが会場を抜け、化粧直しに行ってしまったタイミングで敵の襲撃があったからだ。
いや……待てよ!
だとすれば、いくらなんでもタイミングが良すぎるんじゃないのか?
敵はアリアが会場からいなくなるその時を待っていたとしか思えない。
でも、アリアが化粧直しに行くタイミングなど、誰にもわからないじゃないか!
仮に協力者、スパイがいたとしたら?
あの会場に既に紛れ込んでいて、アリアが会場を出た時を見計らい、仲間に合図を出していたとしたら、この状況を作り出すことも可能だ!
やはり、敵の狙いはアリアか?
でもなぜ、アリアなのだ? 全くわからん!
仮に敵の本当の狙いがアリアじゃないとしたら……なぜ俺をここへ閉じ込める?
俺が邪魔だから、アリアを餌に俺を会場から遠ざけたとしたら?
もしも、今襲ってきている者がパリセミリスだとしたら、オスターでの俺の戦闘を何らかの方法で監視していた奴らが、俺の実力を恐れ、或は今回の作戦に支障が出ると感じ、俺を遠ざけた!
それなら少しは納得いく!
だとしたら、本当の狙いはなんだ?
セノリア王か? 或はフルク王子か?
クッソォ! わからん!
そもそも俺の考えが正しいのかすらわからん!
だが、とにかく今はアリアだ! それ以外は後回しだ!
俺は廊下の端まで進み、窓を開けて下を見下ろし、すぐに上を見上げた。
三階の窓から四階の窓まで数メートル距離はあるが、何の問題もない。
俺は窓から身を乗り出し、四階の窓まで飛び跳ね、窓を蹴破りクルッと前に回り、四階へと侵入した……はずなのだが。
廊下を見渡し、目を細めてしまう。
3階の窓から四階の窓を蹴破り、侵入したはずなのに、俺が今いるのは、先程までいた場所とは逆側の廊下の端だ!
どうなってんだこれ?
俺は廊下を走り、先ほど身を乗り出した窓まで移動し、再び顔を出し上を見上げると、四階の窓ガラスは割れていない!
どうやら俺は三階の窓から、逆側の窓を蹴破り移動したらしい。
これでは次元がねじ曲がってるということではないか!
めんどくさい技使いやがって!
この訳のわからん状況を打破するためには、手っ取り早く術者を倒すのが早いのだが、この手のテリトリーと言われる技を使用する者は、姿を現さんのがセオリーだ。
となると、違和感……つまり、間違い探しだ!
間違いを指摘することで、この手の技は解かれることがある。
或は、術者が決めたルールが存在し、そのルールに従って戦うという俺の最も苦手なやつだ。
「……ハァー」
思わずため息をついてしまうが、やるしかないな。
――次回 63話、胃袋。
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