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59話 喝!

 アリアが去った後の会場で、フルク王子は納得がいかないといった顔で、じっと俺を睨みつけている。

 側にいた小デブのポルドは呆れたように口にする。


「人騒がせな勘違い王子だな! 幼い頃のプロポーズが成立するなら、俺の元には100人近い女が殺到している! まったくどうしようもない奴だな!」


 偉そうに腕を組んで鼻息荒く嘘八百並べておるわ。

 なにが100人だ! お前のような小デブの元になど金目当ての女しか来んわ!


「でもすぐに誤解が解けてよかったじゃないか」


 真っ白な歯を見せつけるように上から微笑んでいるセストだが、お前には絶対にアリアは渡さんからな!


 とにかくこうなったらやけ食いだと思い、再び料理に向かおうとしたのだが、突然会場の明かりが消え、会場は暗闇に包まれてしまった。


 ん? なんだ?

 なんかのイベントか?


 会場が暗闇に包まれたことで、不安に駆られた者たちが騒ぎ始めている。


「一体なんだこれは?」

「どうなっているの?」

「明かりはまだつかんのか?」

「城の者は何をしている?」


 貴族たちの不機嫌な声があちこちから聞こえ、会場を忙しなく駆ける使用人たちの足音も、床を伝い振動し響いてくる。


 イベントなどで明かりが消えたのではないのなら、明かりが消えた理由を俺なりに考えてみる。

 そもそも明かりは光石と言われる石に魔力を供給することで、光石が輝き光を放つのだが、光石が光を灯さなくなったのなら、一番に考えられる原因は、光石に溜め込まれていた魔力が尽きたからだ。


 だが現在のこの状況から察するに、その可能性は低い。

 その理由は複数の光石が同時に輝きを失っていることだ。

 現にこの会場だけではなく、会場の出入り口から廊下が見えるのだが、廊下の明かりも消えている。


 それらを踏まえた上で考えられることはひとつだ、アンチ魔法による光石の妨害だ。

 光石に溜め込まれていた魔力を一時的に妨害し、光石と魔力の循環を悪くしているのだ。


 しかしこの城中に設置された光石を、アンチ魔法で妨害するとなれば、かなりの人数と手間がかかるはずだ。

 手っ取り早く光石の循環を悪くするには、城を特殊な結界で包み込み、そこから魔力の流れを妨害する魔力磁場を発生させることだ。


 試しに目を凝らし、魔力感知を行なってみると、普通の者には見ることもできないであろう、青い稲光が確認できる。

 やはり特殊な魔力磁場が発生している。さらに月明かりで照らされたテラスから見える外には、青白い光の膜も確認できる。


 間違いない、何者かが仕掛けてきておる。

 敵の襲撃を確信した瞬間、硝子の割れる音と同時に、悲鳴が飛び交い始めた。


 俺は目を凝らしたまま睥睨し、顔を布で覆った数名の黒ずくめの者たちを捉えた。

 黒ずくめの者たちは無駄のない動きで窓を蹴破り、会場に侵入すると、小太刀を構えて他の者には目もくれず、椅子に腰掛けるセノリア王の元へと駆け込んでいる。


 このままではセノリア王が暗殺されてしまう!

 俺は咄嗟に俺の加速(ファーストアクセル)で加速し、黒ずくめの暗殺者たちがセノリア王の元にたどり着くよりも早く、会場にいる者たちを縫うようにセノリア王の元まで駆け抜けた。


 セノリア王の前に立ちはだかり、正面から突っ込んでくる黒ずくめの小太刀を首の動きだけで躱し、掌を突き出し黒ずくめの顎先に強烈な初手を打ち込んでやった。


 まるで何かが爆発したような音を響かせながら、黒ずくめは物凄い勢いで後方へと吹き飛び、そのまま壁に激突した。


 俺は手を休めることなく、セノリア王の左から駆け込んでくる黒ずくめに回し蹴りをお見舞いし、間髪入れず右側から駆け込んでくる黒ずくめの懐に入り込み、強烈な右アッパーを放ち、黒ずくめは天井に上半身を食い込ませていた。


 暗闇の中でこの光景を目にして尚、無謀にも正面から突っ込んでくる黒ずくめがさらに四人確認できる。

 勇気と無謀を履き違えた愚か者を、俺は声だけで後方へと吹き飛ばす。


「――喝!」


 俺の叫びと同時に、四人の無謀な黒ずくめは、最初に吹き飛び壁に激突していた黒ずくめの上に被さるように、次々と壁に張り付けられていく。


 暗闇に目が慣れ、セノリア王にはすべて見えていたのか?

 セノリア王は一切動じることなく、囁くように口にする。


「手を煩わせたな、アルトロ王子」


 俺は振り返りセノリア王を確認すると、王はどっしりと深く椅子に腰掛け、なぜか少し口角を上げ楽しそうだった。

 これが一国の王たる者の余裕なのか、或は王にまでなった男だ、俺が出る必要はなかったのかもしれんな。


「いや、どうやら余計な真似だったみたいだな! すまなかった」


 セノリア王は相変わらず余裕の笑で微笑むだけだったのだが。

 暗闇で奇妙な爆音だけが鳴り響いた会場では、貴族たちの不安の声は一層増すばかりなのだ。

 そこへランタンを手にした複数の使用人たちが駆けつけて来た。


 ランタンの明かりによって照らされた会場に更にどよめきが響く。

 無理もない、明かりが灯った瞬間、辺りには謎の黒ずくめの者たちの無残な姿があったのだから。


 そんな中、フルク王子は黒ずくめには目もくれず、すぐに父である王の元に駆けつけ無事を喜んでいる。


「良かった! ご無事で何よりです父上!」


 王もフルク王子の言葉に頷いているのだが、俺は大事なことを思い出す!

 アリアは化粧を直す為、フレイと会場を後にしているのだ!

 アリアと……フレイは無事なのか?

――次回 60話、芽生え。

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一話だけでも……!
是非お読みください!
モンスターボールを投げたらノーコン過ぎて女勇者を捕まえてしまった件。
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