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54話 デコピン

「起きてください、アル! もう昼過ぎですよ!」

「いつまで寝てんのよ! 今日は大事な舞踏会なんでしょ!」


 可憐な声で眠りから目覚めるのだが、頭が痛い。

 昨夜はしゃぎすぎたわ。


「……もう少し待ってくれ」


 ベッドにうつ伏せで寝転がり、掛け布団を頭から被ると、リリアーナとシスが掛け布団を引き剥がしやがった。


「早く起きないと準備に間に合わないでしょ!」

「舞踏会に寝坊なんてしたら洒落になりませんよ、アル!」


 ミノムシのように引き剥がされた俺の腕を掴み、グッと引っ張り起こすリリアーナとシス。


「さぁ、お着替えしますよ、アル」

「手伝ってあげるから早く着替えなさいよ、アルトロ!」


 この二人、どんどん姉様たちに似てきたな!

 嫌いではないが……辛い。


 逆らっても無駄だと判断し、ベッドから立ち上がり両手を広げると、シスがゆっくりと俺の服を脱がせ着替えを始める。

 リリアーナは嬉しそうに二人で選んでくれた衣装をベッドに並べておる。


 時刻はまだ昼過ぎだ。舞踏会が始まるのは6時頃だから、まだ時間はあるし、そんなに急ぐ必要もないのだが、そんな事を口にすれば何を言われるかわかったもんじゃないので、口を閉じておく。


 しかし城の廊下も、窓から覗く街の様子も騒がしいな。


「随分と外が騒がしい様子だな?」

「他国から大勢来客が来ているからでしょ!」

「お城の使用人の方々も、色々と準備に追われて大変みたいですよ」


 他国の連中が来るということで、出払っていた街の男たちを一時帰還させ、街の様子を隠蔽しおったな!

 無理もないか、あんな死んだような街を他国の連中に見せるわけにはいかんからな。


 そうでなくても人の噂というものは凄まじい威力を持つ上、人はいつも大げさに物事を語るからな。

 どこかで捻じ曲げられた噂話を聞いた、他国の商人たちがセスタリカから足を遠ざければ、例え戦争に勝ったとしても未来はなくなる。


 妥当な判断だろうな。

 だが、そういうのを暴こうとするのが好きな連中がいるのも事実だ。

 今頃セスタリカの情報機関は大慌てだろうな。


 俺には見せてもいいと判断されたことは(しゃく)だが。

 同盟国というのもあったからなんだろうけど……やはり少し癪だな。


「着替えが終わりましたよ、アル」

「馬子にも衣装ね!」


 今リリアーナがすごく失礼なことを言ったが……まぁ良かろう。

 シスとリリアーナが姿見を俺の前へ運び、姿見に映る自分を確認しているのだが、この二人中々センスがいいではないか!


 黒を基調とした衣装は、地味になり過ぎないように所々に赤をポイントに入れられている。

 俺は鏡の前で腕を組み、顎をクイッと上げてポーズを決めてみる。


 我ながらかっこいいな! やはり元がいいと何を着ても着こなしてしまうな!

 このかっこよさなら、例えセストとかいう奴が相手でも俺の方が上だな!


「いつまでカッコつけてんの?」

「もう姿見しまいますね」

「っあ!」


 せっかく俺自身に見とれていたというのに、せっかちな奴らだな。

 しかしこの姿を見たらアリアも考えを改めるかもしれんな!

 よし、見せに行こう! そうしよう!


「ちょっとこのかっこいい姿をアリアに見せてくる!」


 二人にアリアの元に行くと伝え、俺は部屋を出てルンルン気分で長い廊下をスキップしながら進んで行く!

 アリアの部屋は確かここだ!


 アリアの部屋の前に着き、ノックをすることもなく扉を開けるのだが、アリアがいない。

 一体どこに行ったのだ?

 アリアが一体どこに消えたのか考えながら城を練り歩き、大きな階段を下り、城の入口付近にたどり着いた時、アリアを発見した!


 だが様子が変だ。城の入口に佇むアリアは胸の前で手を組み、落ち着き無く入口付近を行ったり来たりしておる。


 俺が外にいてると勘違いしているのか?

 って、さすがに俺もそこまで馬鹿ではない。

 あれだけ言われればもうわかっておる、


 セストの到着を待っているのだろうな。

 一途で純粋なアリアを見ていると微笑ましいのだが……胸が痛い。


 だが、ここで引くわけにはいかん!

 俺はそっと背後からアリアに近づき声を掛けた。


「どうだアリア、俺のこの格好は? 似合っておるか?」

「ちょっとそこ邪魔よ」


 俺に見向きもせず手で跳ね除けるアリア。

 ……ッキィィー。

 なんなのだその態度! この衣装はリリアーナとシスが一生懸命選んでくれた衣装なのだぞ!

 それを見ようともせん!


 さすがに文句でも言ってやろうかと思ったのだが、大げさな人数を引き連れた変なのがやってきおった。


 ちびで小太りの全身潔癖なくらい白で統一されたそいつが、馴れ馴れしくアリアに話しかけておる。


「久しいな、アリア」

「お久しぶりです、ポルド王子」


 王子だと! この小デブがか?

 見るからに弱そうなくせに態度だけはでかいな!


 ポルドとかいう小デブの王子がアリアの背後にいた俺に目線を向け、鼻で笑いやがった!


「なんだそのダサいカッコをした、犬みたいにまとわりついている下品そうな顔の奴は!」


 ぶっ飛ばすぞこの野郎ぉ!

 お前なんかデコピン一発で十分なんだからな!


 ぶっ殺してやろうかと思ったのだが、すぐにアリアが俺を紹介し始めた。


「ポルド王子、こちらはアイーンバルゼンの第三王子、アルトロ王子です」


 こんな奴に丁寧に教えんでもいいものを!


「アイーンバルゼン? あぁ、あのちっこい国か。それにアルトロって……クズ王子のことか!」


 コノヤロー! 俺のことならまだしも、アイーンバルゼンをちっこい国だと、舐めやがって!

 ぶっ殺してやる!


 俺の怒りに気がついたのか、間を置かずアリアがポルドの事を紹介しだした。


「アルトロ王子、こちらはパレント大国の第二王子、ポルド王子よ。ちゃんとご挨拶しなさい」


 ご挨拶だと! したくはないが、マーディアル家の品格の為にも我慢するか。


「あぁ、よろしくな」

「っふん。クズは挨拶もまともに出来んのか! 行くぞ! また後でなアリア」

「はい。ポルド王子」


 いやぁぁぁっぁあぁああああ!

 殺したい!

 あの小デブ許さんぞ!


「気分が優れん! 俺も戻る!」


 チラッとアリアの方を見るが、ポルドには愛想を振りまき俺は無視か!

 なんなんだよ、まったく!

――次回 55話、視線。

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いつも、本当に読んで下さりありがとうございます。m(__)m

心から感謝致します。

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一話だけでも……!
是非お読みください!
モンスターボールを投げたらノーコン過ぎて女勇者を捕まえてしまった件。
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