53話 ヘブンデーナイト
王都タリスタンの飛空艇場に到着したのだが、以前来た時とは違い、複数の兵と数名の貴族が出迎えておる。
クソッ、扱いに差がありすぎだろ!
今回は確かにフルク王子とアリアが一緒だが、セスタリカの状況は以前来た時と大して変わってもいないのに、あからさまに対応が違いすぎるのは俺に失礼だろうが!
文句のひとつでも言ってやりたいところだが、ここで文句を言えばマーディアル王家の器が小さいと思われるのも癪だしな。
グッと堪えて作り笑いをする俺は、随分と大人になったんじゃないか。
かつての俺なら大暴れだぞ!
そんな俺の不機嫌を悟ったのか、フルク王子と親しげに話していた白髪のイケメン貴族が、俺に視線を向けて歩み寄ってくる。
「挨拶が遅れて申し訳ありません、アルトロ王子。私はスノー=ノッド=アイランドと申します。フルク王子とアリア様の窮地をお救い下さり、感謝致します。オスターでの活躍も、今しがたフルク王子から伺いました。セスタリカの一市民を代表し、深く感謝申し上げます」
このイケメン、初めてフレイと会った時のような狐感を感じるな。
スノーと名乗るこの男の身形からしても、かなり地位の高い人物だということは想像がつく。
まず間違いなく、フルク王子派閥の者だろうな。
マーディアル王家とは違い、王族といえば継承争いが普通だからな。
フルク王子もやはり、次期国王の座を狙っているということか?
「ああ、別に構わん。アリアを救出するついでだったからな」
こいつと関わるのはまずい気がする。
面倒事に巻き込まれぬ為にも長話は避けねばな。
さっさと話を切り上げ城に向かいたいのだが、フルク王子が話に加わってきおる。
「スノーは俺の幼馴染でな、いい奴だから仲良くしてやってくれよ、義弟! それに伯爵家の人間でありながら、貴族臭くないのがいいだろ!」
フルク王子も明らかに俺とスノーの仲を取り持とうとしている。
アリアのバースデー舞踏会を出しに、まんまとハメられたかもしれんな。
とはいえ俺は別にスノーと仲良くする気もサラサラない。
そもそも面倒事に巻き込まれるのはゴメンだ!
「ああ、わかった、よろしくなスノー。それより疲れたから城の方で休みたい。早く行こう」
無理やり話を切り上げ、城に向かおうとしたその時――
「……夜には可愛い女の子のいるお店を抑えてありますよ、アルトロ王子!」
な、なんと! 立ち去ろうとした俺の耳元で、親友のスノー君が夢の国を用意していると囁くではないか!
誰だ! 仲良くするつもりはないと言った阿呆は!
俺は親友に対しそっけない態度をしていた事を深く反省し、お詫びにいやらしい笑顔……ではなく、爽やかスマイルを見せてやった。
「お前は俺の親友だスノー! それと、アリアにはもちろん内緒なんだろうな?」
「もちろんですよ! その辺の配慮はお任せ下さい、アルトロ王子!」
ヒヒ、夜が待ち遠しいなぁ!
俺の機嫌が良くなったのを確認したスノーが、フルク王子に目配せをしておるが、そんな小さなことは気にしても仕方がない。
そう、俺は寛大なのだ!
俺の笑顔を少し離れたところから見ていたアリアが「っふん」と顔を背けるが、今は気にしても仕方のないことだ。
アリアと俺の様子を見守っていたフレイは苦笑いを浮かべておる、色々大変そうだな。
まぁ、そんなことがあり城にやってきた俺は、フルク王子とアリアと、謁見の間で改めてココル村での件と今回のオスターでの出来事を報告し、セスタリカの王セノリア=セスタリカから感謝の言葉を受け取り、謁見の間を後にした俺は、用意してもらった部屋のベッドで寛いでいる。
ベッドに寛ぎながら明日の舞踏会の事を考えていると、重大なことに気が付いた。
アリアへの誕生日プレゼントを俺は用意していないのだ!
金ならあるが、すぐに調達できる物などたかが知れているし、そんな心のない贈り物など貰っても嬉しくないだろう。
そこで俺は、次男のマルセイ兄様が昔くれた素敵なプレゼントを思い出した。
きっとこの国にもあるはずだと思い、俺は部屋のテラスから風の如く飛び出し、誰の目にも見えぬスピードで街の建物の屋根を移動し、外壁を飛び越え王都の外へ探し物を見つけに行く。
スノーとの約束の夜までに戻れば問題ないだろう。
――探し物を見つけ出し、部屋に戻りベッドに倒れ込み窓から外を眺めると、既に外は日が暮れている。
日が暮れた外をぼんやりと眺めていると、部屋にノックの音と聞き覚えのある声がした。
「アルトロ王子! お迎えにあがりましたよ!」
おお! この声は親友のスノー君の声ではないか!
夢の国へのお迎えに来てくれたようだな!
ベッドから飛び起き慌てて扉を開けると、扉の前に笑顔で立つスノーがいる。
俺は迎えに来てくれたスノーにウインクをしてから胸を張り、夢の国へ向かうため歩き出す。
「それでは行こうか、スノー君!」
「はい。アルトロ王子」
「そんな堅苦しい呼び方はせんでいい! 俺とスノー君の仲じゃないか! 親しみを込めてアルと呼ぶがいい!」
ふふと笑ったスノーが「では、そう呼ばせていただきますね、アル」と早速親しみを込めて呼んでくれる。
俺はそのまま街の路地にひっそりと構えるパブに、スノー君の案内でやって来た。
スノー君が店の扉を開けてくれて「どうぞ」と言うのでワクワクしながら入店する。
「いらっしゃいませー! 待ってたよ、アルトロ王子にスノー様!」
店に入るとすぐに、十数人の女の子が両側に並んだ状態で出迎えてくれている。
扉の前で立ち止まり、両サイドの女の子たちを下から上へ舐め回すように確認するが、完璧だ!
夢の国どころか、天国!
ヘブンではないか! やりおる! スノー君は凄腕だとは思っていたが、ここまでとは!
「やりおるな、お主!」
スノー君にチラッと視線を送り称賛すると、全く嫌味のない笑顔で「お褒めいただき光栄です、アル」と素直に喜んでおる。
俺も今日は思いっきりハッスルしちゃうぞー!
パフパフ王子になっちゃうぞ! ヒヒ。
「早く一緒に飲もうよ、王子様!」
女の子たちが俺の腕を掴み、自らパフパフを押し当ててきおる!
ハレンチ極まりない奴らだな! けしからん!
「王子様なんて堅苦しい呼び方はやめて、アルちゃんて呼んでよ~! じゃないとパフパフしちゃうぞ~!」
こうして俺のヘブンデーナイトは一瞬とも思えるうちに、あっという間に過ぎていくのだ。
――次回 54話、デコピン。
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