50話 チックショー
オスターでの戦いから一週間が過ぎ、肩を落としていた人々の表情も俺たちがここへ来た頃とは比べ物にならないほど皆笑顔を取り戻していた。
アインはセスタリカの者が引取りに来るまで元ドウンの屋敷の地下牢に閉じ込め、厳重に監視させてある。
ココル村に待機させていたザックたちの元にはセドリックが馬を走らせ報告に向かい、100人程の兵をココル村に残し、飛空艇で駆けつけてきた。
ザックの報告ではココル村へのパリセミリス兵の進軍はなく、特に異常事態もなかったという。
俺は現在オスター壁外に停めてある飛空艇の自室で、アーロンからビュトルという魔族と、影から現れたという竜人の女について改めて詳しく話を聞いているのだが。
アーロンの報告を聞く限り、ビュトルという魔族より影移動を行う竜人の女の方が気になる。
あまりにも気になるのでこうしてアーロンを呼びつけ詳しく聞いているのだが、肝心なことを全然言わないアーロンに少しイライラしてしまい、貧乏ゆすりをしてしまう。
そんな俺の貧乏ゆすりを何か勘違いしたのか、アーロンが俺を落ち着かせようと口にする。
「アル、心配はいらない。次に奴らが来た時には確実に俺が仕留めてやる! だからアルは何も心配しなくてもいいんだ!」
コイツは何を見当違いのことを言っておる!
俺がそんな小物に不安など抱くわけないだろ!
ああぁもう察しの悪い奴だな!
「そんな事はどうでもいい! それよりも報告すべきことがあるだろう!」
「はぁ?」
なんというマヌケツラをしておるのだ!
それでも兵隊長かコイツ!
戦闘狂のアーロンにもわかるように言ってやるわ! このトンチンカンめ!
「だから、可愛かったのかと聞いておるのだ?」
「可愛かったぁ? ……敵がか!?」
「他に何がおる?」
真面目に人が聞いておるというのに、アーロンはポカーンと口を開け固まってしまいおった。
俺はテーブルに手を置き固まるアーロンにも見えるように人差し指でテーブルを三度ほど叩き、応えるように急かす。
「で、どうなのだ?」
俺の問に顔を引きつらせているようだが、懸命に応えようにしておる。
「……可愛かったんじゃないのか多分?」
「そうか! 可愛かったか! 早くもう一回来ないかな、会ってみたいなぁ!」
「……しょ、正気か? イカレてるとしか思えん……」
アーロンが何か言ったような気もするが、まぁいい!
今は竜人ちゃんの事で頭がいっぱいだ。
頭のメモ帳にしっかりと記入しておくぞ!
俺はご機嫌でニヤついているが、アーロンは完全にドン引きしているようだ。
そんなご機嫌な俺とドン引き中のアーロンの元にノックの音が聞こえた。
「入っていいぞ」
入るように促すと、やってきたのはフレイだ。
「どうかしたか?」
フレイは俺の顔を見ると、ニコッと微笑みお辞儀をして用件を伝えてきた。
「フルク王子がお呼びです。屋敷に来ていただいても構いませんか? アルトロ王子」
う~ん、もう露出狂ファッションではないが、可愛いではないか!
やはり可愛い女を見るとテンション上がるなぁ!
「わかった今行く! では貴重な報告ご苦労だったなアーロン」
「……ああ」
アーロンに礼を言い、すぐにフレイの後について屋敷へ向かうことにした。
しかしフルク王子はなんの用なんだろうな?
でも個人的にフルク王子の話よりも気になることがある!
「フレイ、アリアは元気か?」
オスターでの戦いを終えて一週間になるというのに、アリアは一度も会いに来てくれておらん。
フルク王子が言った婚約者の件を気にしておるのか?
そんなに俺が嫌だというのか?
現在アリアはフルク王子と共に元ドウンの屋敷にて生活をしているようだが、あの兄弟喧嘩以来二人の仲はイマイチだという。
首を回して俺に顔を向け応えてくれるフレイは苦笑いを浮かべている。
「実は例の件でフルク王子とアリア様がまた言い合いをしておりまして……」
例の件というのは間違いなく俺との婚約のことだろうな。
しかしアリアの想い人、セストとか言ったか? 一体どんな奴なのだ?
「フレイはセストとか言う奴を知っているのか?」
俺は小走りでフレイの隣まで行き、フレイの綺麗な横顔を見つめながら尋ねてみた。
「二三度お会いしたことがあるだけですが、聡明なお方ですよ。っあ! もちろんアルトロ王子の方が素晴らしいとは個人的に思いますが……」
俺のことを気にかけてくれているだけで十分だから、そんなに慌てて取り繕うこともないのにな。
「世辞はいいよ。外見はどうなのだ?」
少し申し訳なさそうなフレイがセストの外見を教えてくれるが、フレイが瞳を輝かせているところから察するに、相当かっこいいらしいな。
「それはもうかっこいいですよ! 長く美しい黄金の髪に、男性とは思えない程の透き通るお肌、それに身長も185センチ程あり、もう完璧を絵に描いたようなお方です! っあ! すみません!」
「だから謝らなくていい!」
俺だってお肌の艶には自信があるわ!
身長は……ギリ170あるもん!
170あれば問題なかろう!
そもそも外見で人を判断することが間違っておるのだ!
確かに俺にも人は見た目が全てと思っていた時期があったわ、だが人は成長すると考え方も変わるというものだ……。
チックショー!
身長を伸ばす魔法は存在せんのか!
身長さえあれば負けはせん!
そんな事を考えていたら屋敷に到着し、中に入ると何やら騒がしい声が屋敷内の廊下にまで響いておる!
「だったら私はこの国を出て行くわ!」
――次回 51話、誓い。
この作品を少しでも気に入ってくださったら、下の評価ボタンをポチっと押してくださると嬉しいです!
いつも応援ありがとうございます。m(__)m




