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49話 声

 俺たちは屋敷を出てすぐにセドリックとルナの待つ建物に移動した。

 二人は無事に俺が戻りアリアたちも一緒だとわかると胸を撫で下ろしたのだが、ルナはすぐに俺を罵るのだ。


「用を足しに行くと言って一人で屋敷に潜入するなんて馬鹿なんですか? 無事に帰ってきたから良かったものの、一歩間違っていれば死んでいたかもしれないんですよ!」


 ちびっ子魔道士が怒るのも当然といえば当然なのだが、結果よければ全て良しとはいかんのか?


 怒るルナとは違い冷静に状況を判断するセドリックが、腰袋からポーションとマインドポーションを取り出しアリアとフルク王子に差し出している。


「アリア様と……フルク王子でよろしいのですよね? これをお飲みください」

「ありがとう」

「すまないな!」


 セドリックから手渡された各二種類のポーションを受け取り、一気に飲み干すアリアとフルク王子。

 これで二人は大丈夫だな!


 アリアは俺の慈愛の接吻で回復させたかったのだが、とてもそんなことができる雰囲気ではないし仕方ないな。


 それよりもアーロンたちは無事なんだろうか?

 ノルバストが魔神石を所持していた事から推測しても、敵がノルバストを何らかの方法で監視していた可能性がある。


 魔族がここオスターに潜伏していてこの戦いに参戦していたら、アーロンたちだけで本当に大丈夫だったのだろうか?


 アーロンは確かに強いが、俺はアーロンの真の実力を知らない。

 アーロンたちを信用していないわけではないが、出来ることならすぐに合流したい。


「セドリックにルナよ、アーロンたちとすぐに合流するぞ! それと敵の頭を潰したことをパリセミリス兵に伝え降伏させるのだ! これ以上の争いは無意味でしかない!」


 パリセミリス兵を降伏させると聞き、すぐにフルク王子が協力を申し出てくれた。


「その役目私にやらせてもらえないだろうか? なんの証拠もない中ノルバストが討ち取られたと聞いても兵は簡単に信じはしないだろう! だが捕らえられていた私が出ていけば信憑性は増すはずだ! 敵とは言え、私もできることなら無駄な血は流させたくはない!」


 大勢の敵兵の前に出ていけばそれだけ危険なのだが、フルク王子の決意は固いようだな。


「ではそちらは任せる! ただし、万が一を想定しセドリックとルナを同行させる!」

「アルトロ王子が信頼を置く者が同行してくれるのなら心強い! 是非お願いする!」

「俺も一緒に同行させてくれ!」


 アインが突然声を上げフルク王子との同行を求めているが、さすがに許可するわけにはいかない。

 一度裏切った者が心を入れ替えたとしても、そんなもの誰にも信用などできないのだ。

 本当は逃げる機会を伺っているだけかもしれない。


 少なくとも俺は信用などしていない!

 現にフルク王子自身が黙り込んでいるのがいい答えだ。


「それは無理だ、お前は俺と来るのだ! お前はもう敵だからな、殺されないだけフルク王子に感謝するんだな!」


 暗く表情を落とし、俯いているが自業自得だ!

 反省するのだな。


 アインが敵だと言う言葉を聞き困惑した表情を一瞬見せたセドリックとルナだが、なんとなく察したようで敢えて口には出さなかったようだ。


 俺たちは互いにすべきことをするため二手に別れ行動を開始した。


 俺はアリア、フレイ、アインを連れ南西方面へ走った。

 アーロンがいる南東ではなく南西へ向かった理由は一つだ!

 リリアーナとゼンが心配だったということ。


 南東にいるアーロンとパリス二人のように訓練を受けていないリリアーナとゼンが、どこまでやれているのかわからない以上優先するのは不安要素の高い方だ。


 南西までの道のりは意外と敵が少ない、というよりもほとんど死んでいる。

 一体どんな暴れ方をしておるのだあいつら!


 少しやり過ぎではないかと思った次の瞬間、剣を片手に大暴れする毛むくじゃらの狼が視界に入った!


 なんだあれ!? 魔族か?

 それにしては様子が変だぞ!

 狼男はパリセミリス兵を攻撃しておるし、その体に纏っているのは魔気ではなく闘気だ!


 それに近くにはリリアーナとゼンの二人も一緒だ!

 どうなっているのだ? さっぱりわからん。


 謎の狼男に気を取られていると、リリアーナがこちらに気づき笑顔で手を振っておる!


「アルトロー!」


 リリアーナの声でこちらに気が付いたゼンも顔を向け手を上げておるのだが、狼男はパリセミリス兵を押しのけ一目散にこちらに向かってきおる!


「アル無事かぁ!」


 はぁ? この声アーロンか!? 

 アーロンの声をした狼男は俺の目前で止まり、無事を喜んでいる。


「良かった! 本当に良かった! アリア様もご無事でなによりです。しかしフルク王子らしき人物の姿が見えませんが?」


 アリアとフレイも困惑しているみたいだが、どうやらアーロン本人のようだな。

 アーロンの見た目の変化は人技か? まぁそれしか考えられんが。

 コイツひょっとして魔族にでも憧れておったのか?


 それよりフルク王子について説明してやるかと思ったのだが、その必要はないみたいだな。


「オスターにいるすべてのパリセミリス兵に告ぐ! 我が名はフルク=セスタリカ、セスタリカ国の第三王子である! つい先ほどそなたたちの指揮を執る、ノルバスト=ザラダバルはアイーンバルゼンの第三王子、アルトロ=メイル=マーディアルによって討ち取られた!」


 なるほど! ルナの拡声魔法で南から南西と南東に向け、すべての者に一気に伝えるということか!

 狼アーロンもパリセミリス兵も皆戦うことをやめ、フルク王子の言葉に耳を傾けておる。


「これ以上の戦いは無意味である! 我々セスタリカは武器を捨て戦う意思のない者の命を奪ったりはしない! 武器を捨て速やかに降伏せよ! さもなくばその先にあるのは死だけだと思え! 繰り返す――」


 フルク王子の言葉が届き、次々と武器を手放していくパリセミリス兵たち。

 その光景を見て微笑むアリアとフレイ。

 そして狼アーロンが呟いた。


「……終わったみたいだな」

「ああ、そのようだな」


 こうしてオスターでの戦いは俺たちの勝利で幕を閉じたのだが、忘れてはいけないことがある。

 魔神石をノルバストに渡した何者かがいたという事実。

 セスタリカとパリセミリスの戦争が終結していないということを。

――次回 50話、チックショー。

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いつも読んで下さり本当にありがとございます。m(__)m

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一話だけでも……!
是非お読みください!
モンスターボールを投げたらノーコン過ぎて女勇者を捕まえてしまった件。
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