42話 40段
俺の元へ向かい歩いてくるフレイは水の要塞を通ったことで全身ずぶ濡れとなっている。
下着が肌にピタッとくっつき髪はシャワーを浴びたように濡れ、ただでさえエロティックなフレイがさらにパワーアップしている。
今のフレイの姿を女を知らぬ童貞が目にした日には、大量の鼻血を撒き散らし出血死すること間違いないわ!
この俺ですらフレイのあまりの艶のある色気にまたまた見とれてしまっているのだ。
というか見とれぬ男などいないであろう。
そんな俺の目線に気がついたのか、フレイは恥ずかしそうに頬をピンクに染め、羽織を両手で胸元まで引っ張り、素晴らしきナイスバデーを封印してしまった!
しかし恥らいながら羽織を胸元で抑えている姿も堪らなくいい!
フレイは顔を俺に向けつつも、視線を外し斜め下を向いておる。
フレイはなぜか申し訳なさそうに話し出した。
「お見苦しいモノを見せていまい申し訳ありません!」
っん? お見苦しいモノとはなんだ?
口ひげオヤジのマヌケツラした首のことか?
わからないので直接聞いてみることにする。
「見苦しいとはなにがだ?」
俺がフレイに問いかけるとフレイはまた恥ずかしそうにもじもじして、言いづらそうに口にする。
「私の、その……太った駄肉が濡れた、その……下着にへばりついた、みっともない姿をお見せして……申し訳ありません!」
っな!? 何を言っておるのだこやつ!
豊かな胸が太ったと申すか?
素肌に下着がくっついた姿などロマンではないか!
フレイは自分の体に自信がないというのか?
それは聞く者が聞けばイヤミでしかないというのに。
俺はフレイにもっと自分のプロポーションに自信を持ってもらうため、意を決してフレイが胸元で抑える羽織を掴み、力一杯に広げてやった!
フレイは物凄く驚いた顔をしているが、俺はフレイの瞳をまっすぐに見つめて言ってやった!
「フレイよ! お前のこの体のどこがみっともないと言うのだ? どこが太っていると言うのだ? 下着が肌にピッタリとくっついている姿はセクシーではないか! 俺はお前の姿を見て美しいと目を奪われたのだ! お前はもっと自分を愛さねばならんのだ! 自分を愛せぬ者に、信じられぬ者に幸せなど訪れないのだ」
フレイは恥ずかしそうにしていたが、俺の言葉を聞き少し微笑んでおる。
「アルトロ王子がそうおっしゃってくれるのなら、私は私を大切にできそうです!」
俺は広げていた羽織からそっと手を離し、フレイの頭を撫でてやる。
フレイは満面の笑を俺にくれる。
女の笑顔はやはりいい!
もう少しフレイと戯れていたい気持ちもあるが、俺は早くヒーロー大作戦パート2をやりたい。
そしてアリアが俺の腕の中で『アルトロ王子、あなたがきっと助けに来てくれると私は……アリアは信じていました! もうずっと離れません! 早くアリアをあなたのモノにして下さい! 愛しのアルトロ王子!』てな具合にアリアは俺に夢中になるというわけだ!
これは決定事項なのだ。
世界とは俺のために存在し、運命はいつも俺の思い通りになると決まっているのだ。
ということで、俺は口ひげオヤジに邪魔され上り損ねた階段に目をやり、フレイに伝える。
「それでは階段を上りアリアの元へ行くとするか!」
「はい! アルトロ王子がいて下さるので何も心配ありませんね!」
フレイの俺に対する信頼は絶大と言っても過言ではないだろうな。
これもすべてヒーロー作戦があってのことだな。
まぁフレイのためのヒーロー作戦ではなかったのだがな!
なんて考えていると俺の前を歩き、階段を上るフレイのお尻が目の前にある!
突如現れたフレイの尻の誘惑に俺は勝てることができるのか!?
階段を上り切るまでまだあと40段!
しかもだ!
フレイの尻を見ているとすべての時がまるでゆっくりと流れているような錯覚に陥ってしまうのだ!
俺は無意識のうちに俺の加速でも発動してしまったのだろうか!
不味い、まだ38段もあるではないか!
触りたい、触れてみたい!
この手が勝手に!
よせ! 俺は時がゆっくりと過ぎる中で自らの右手を必死に左手で抑え込み。
自分自身と格闘していた。
フレイはあれほど俺を信じていてくれたのだぞ!
それなのにフレイの気持ちを容易く裏切ってしまうのか!
そんなことはしたくはない。
まるで数時間の激闘であった。
階段を上りきった時、俺はどっと疲れ果てていた。
前屈の姿勢になり膝に手を置き、ぜぇぜぇと肩で息をしている俺に、フレイが心配したのか話しかけてくる。
「どうかしたんですか? アルトロ王子」
俺はすぐに姿勢を正し、なんでもないと伝える。
「いや、なんでもないのだ! 本当に気にしないでくれ。それよりもあの部屋にアリアはいるんじゃないのか?」
俺は階段を上った先にある豪華な扉を指指した。
フレイも扉を見つめ頷く。
ただひとつ気になることがあるとすれば、豪華な扉の先から魔の気配がするということだ。
――次回 43話、俺裁判。
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