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104話 こりゃ参ったな

 キノコが凍りついて砕けたのは有り難いが、寒いし冷たい。

 このままでは風邪を引いてしまう!

 それに美しい氷像になった俺を見て、タコルが勘違いして元彼に喧嘩を売っているのだ!


 ヒヒ、あのタコはそんなに俺の事が好きだったのか?

 っあ! またポカポカしてきたぞ!


 このポカポカはいつも俺をいい気持ちにしてくれるな!

 さてと、そろそろタコルを助けてやるか。


 俺は魔技(・・)消滅の肉体(デスタッチ)で体温を上げ一気に氷を溶かしていく。

 急激な温度変化により、俺の体は白い煙に包まれた。


 するとタコルが俺を呼ぶ声が聞こえる。


「助けてくれぇぇ! アルトロォォ!」


 世話のかかるタコだな!

 いつもなら無視してやろうかと思うのだが、俺の為に涙を流したタコを見殺しにはしたくない。


 真っ白な煙がそよ風に流されて、黄昏を浴びた神々しい俺が姿を現すと、タコルは泣きながら笑い、メルトはお化けでも見たかのように絶句し、ミゼアは愛しの俺の無事を見て両手に手を当てて感激している。


 元彼はマヌケズラで唖然としておる。


「な、なぜ生きている!? 俺のダイアモンドダストを受けて確かにお前は死んだはずだ!」

「うむ、良き技だったぞ。しかし、あの程度の技では痛くも痒くもないわ! それより、その足元のタコを離してやってはくれんか?」


 俺の言葉が聞こえていないのか、元彼はタコルから足を退けようとしないので、軽く地面を蹴り元彼の正面まで飛び跳ね、そのまま蟀谷(こめかみ)に強烈な蹴りをぶち込んでやった。


 元彼は勢い良く砂埃を巻き上げながら地面を跳ねては転がり、木々をなぎ倒しながらようやく止まった。


 俺は苦しそうに口から血を吐き倒れ込むタコルに屈んで声を掛けた。


「お前大丈夫か?」

「見てわかるだろう! 大丈夫じゃねぇーよ! いてぇよ! 生きてたんならもっと早く助けろよ!」

「なんだ元気ではないか! 意外と丈夫なタコだな!」

「元気じゃねぇよ! もう骨だってバキバキだ! しばらく動けそうにねぇよ!」

「タコに骨はないだろ?」

「…………っあ!」


 タコルは自分に骨がないという事に気がつくと、ゆっくりと起き上がり、座り込むメルトの横に移動して、同じように座り込んでしまった。


「ここで観戦してるから、早いとこヤッちまえよ!」

「…………やはり元気ではないか」


 俺がタコルの不可解な行動に目を奪われていると、怒り狂い奇声を上げた元彼が猛スピードで突っ込んできた。


「うおおおおおおおおおお!」


 コイツもコイツで丈夫だな! 意外と強く蹴ったのだが!

 砂埃を巻き上げ突進してくる元彼の拳をスルリと躱し、ボディに12発連打で拳を叩き込み、背が丸まり血を吐いた元彼の背中に組み合わせた両手を振り下ろし、叩きつけてやる。


 ズドーンと音を響かせ地面に激突すると、見事なクレーターが出来上がった。


「……っが、ばが……な、にんげ、んごとき……に」


 諦めの悪い元彼は地面に手を突き、起き上がろうとしているのだが、もう手がプルプル震えて力が入っていないではないか。


「諦めろ! お前程度ではどう頑張っても俺には勝てん! ミゼアの事はもう忘れるのだな!」

「だ、まれ……ころ……して、やる」

「そうか! では望み通り殺してやろう!」


 起き上がろうと地面に四つん這いになる元彼の顔面を蹴り上げると、元彼の体は宙に舞上がり地面に叩きつけられた。

 最早受身を取る事すらままならないのであろう。


 トドメを刺してやろうと元彼に接近した時、ミゼアが駆け出し倒れ込む元彼に覆い被さり必死に守ろうとしている。


「もうやめてくれ! これ以上やればゼセットが死んでしまう!」


 は? 何を言っている! お前は俺の女になると言ったくせに、元彼を庇うのか!

 それは俺に対する裏切りだぞ! そんな事は許されんぞ!


「ミゼアよ、お前は俺を裏切りその元彼を選ぶと言うのだな?」


 俺は怒りで拳を握り締め、明確な殺意を込めた魔闘気をミゼアに放ってやった。

 ミゼアは俺の殺意を体に感じ、震えながらも決して元彼から離れようとしない。


 俺は一歩二歩と近づき、こうなったら力ずくでも元彼を殺し諦めさせてやろうとしたのだが、ミゼアが耳を疑う事を口にしている。


「弟なんだ……コイツは私の弟なんだ!」

「…………っえ!?」


 歩を進める足が止まり、血の気が引いた。

 弟? 嘘だろ? 俺はミゼアの弟を元彼と勘違いして半殺しにしてしまったのか? 姉のミゼアの前で!?


 これは不味い! 非常に不味い。

 俺は覆い被さるミゼアと瀕死の弟君に笑顔で近づき、敵意がないことをアピールしてみた。


「しゅ……修行をつけてやっていたのだぞ! 弟くんがどうしても強くなりたいと耳元で囁くから、仕方なくな」

「…………」


 ダメだちっとも信じておらん! それどころか未だ怯えきった瞳をしておる。

 どうしよう……。素直に勘違いでしたと謝罪してみようか?


 いやダメだ、それだと俺が悪者になってしまうではないか。

 そうだ取り敢えず!


「おい、クソキノコ! お前飛んで街に戻りポーションを持ってくるのだ! 早くしろ!」

「なんで俺ッチが敵の為にそんなごとしなぎゃいげないんだ!」


 座っていたメルトが立ち上がり頬を膨らませ怒っている。


「いいから早くしろ! それにそこの爺さんも早くせんと死んでしまうぞ!」

「っち! わがっだよ!」


 いっちょ前に舌打ちしたメルトがめんどくさそうに街に向かって飛び立った。

 しかしこれで弟くんは死なずにすむな!

 一安心だ。でもどうやって仲直りするかだな。


「ミゼアよ、今ポーションを取りに行かせたからもう大丈夫だぞ!」

「あんたがやったんじゃないかい!」

「俺も殺されかけたのだ……喧嘩両成敗と言う奴だな。はは……はは」


 ホントどうしよう、こりゃ参ったな!

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本当にいつも読んで下さり、ありがとうございます。m(__)m

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一話だけでも……!
是非お読みください!
モンスターボールを投げたらノーコン過ぎて女勇者を捕まえてしまった件。
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