101話 返答次第
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ご理解いただけると幸いです。
不覚にも動揺してしまった。人間だと思っていた男は頭部から巨大キノコを生やしていたんだ、驚かない方がどうかしている!
それに私の悪性変異が人間ではなくキノコに取り付いているのだ!
もう意味がわからないと頭を抱えそうになったのだが、人間が必死に取り繕うように丁寧に説明してくれたお陰でなんとか状況は飲み込めた。
人間の言う通りキノコは邪魔だ!
キノコが人間に取り付いたままでは私の悪性変異が効かないのだ。
でもお陰で冷静さを取り戻し、当初の目的であるクロムについて聞き出すという事を思い出すことができたのは幸いだ。
「じゃあ一緒にキノコの妖精を見つけ出し、その頭のキノコを取りに行くぞ!」
人間は私が協力してくれると勘違いしているのか、感激に瞳を潤ませて意味不明なことをほざいている。
「お前はそれほどまでに俺を想ってくれるのだな! わかった、そこまでお前が言うのであれば今晩だけとは言わず、お前を特別に側室として迎え入れてやろう! お前の一途な想いが側室の座を勝ち取ったのだ、誇って良いぞ!」
側室? コイツは何を言っているんだ?
まぁ、なんでもいいさ。どの道コイツは全てを話したあと死ぬんだ。
「ではクソキノコを見つけに行くぞ! しっかりついて来いよ!」
熱風を撒き散らしながら邪悪な塊を羽ばたかせ、天を駆けていくのだが、この人間!
速すぎる!
私は決して遅い方ではない、むしろ飛ぶことには長けている。
なのに全力で飛んでも徐々に離されてしまう。
人間は振り返り、私が追いつけないとわかると速度を落とし、ピッタリと横について私のプライドをいとも簡単にへし折ってくれる。
「すまんな。ゆっくり飛んだつもりだったのだが、追いつけんかったか?」
ゆっくり飛んだだと!? 私の全速がコイツのゆっくりに全く追いつけなかったと言うのか?
屈辱だ! だが確かにコイツの速さも強さも異常だ!
最悪ゼセットと合流して二人でやるしかなさそうだな!
「遅くて悪かったね!」
「ん? どうした、怒っているのか?」
「それより、森の中は上空からだと木々が死角になって見えないよ! 低空飛行で森の中を進んだ方がいいんじゃないのかい?」
「それもそうだな!」
私は人間と共に森の中を突き進むが、木が立ち並ぶ森の中は視界が悪い上に飛びにくい。
それでもなんとか人間について行こうと、木と木の間をすり抜けるように進んで行くと、ホルムデヒドの部下たちが森の中に逃げ込んだ住人たちに襲いかかっている。
だが次の瞬間、私の前方で住人を襲っていたホルムデヒドの部下の首が一斉に刎ね落ち、首なしの肉体からは豪快に血飛沫が上がっている!
私は咄嗟に左横を飛んでた人間に目を向けるが、男は何もなかったかのようにまるで気にする様子はない。
しかし、男の右手は腰に提げた剣の柄を確かに握りしめている。
間違いない、コイツが斬ったんだ!
目にも止まらぬ速さで前方のホルムデヒドの部下の首を刎ね、何食わぬ顔で私の横に戻ってきたんだ!
超高速によるヒットアンドアウェイ!
冗談だろ!? この私ですら全く見えなかった!
見えなかったどころか、気づくことすらできなかった!
私の鼓動が張り裂けそうなほど暴れている。
ゼセットと合流して二人でなら勝てる? いや、勝てる気がしない……。
まるであの時の魔王クルセのようだ!
私の脳裏に絶望と死の二文字が過ぎった時、前方の開けた土地にゼセットの姿が見えた!
ゼセットの周囲には昼間のロッジとか言う爺さんと妖精族が倒れ込んでいる。
ゼセットは倒れ込む二人には目もくれず、左手でタコを掴み上げている!
ゼセットが目的のタコを捕まえたんだ!
私は微かに笑みが溢れた、そうだこの人間じゃなくてもいいんだ。
そう思ったのだが……甘かった。
気が付いた時にはゼセットは吹き飛び、激しい音と共に岩山に激突し、ゼセットが立っていた場所に人間が佇みタコを掴んでいる。
私は慌ててゼセットの元まで飛んで行き、無事を確認した。
「無事かゼセット!」
ゼセットは私の声に答えることなく立ち上がり、じっと人間を睨みつけている。
ゼセットの頭からは血が流れ、その足元の大地はゆっくりと凍てついていく。
静かに怒り狂うゼセットは、もう私には止められない。
だが、あの人間と遣り合うのは不味い!
あれは人間の皮を被った化け物だ!
私はどうすればいい?
◆
咄嗟にタコルを掴んでいた奴を蹴り飛ばしてしまったが、アイツは確か浜で会った奴だ。
ミゼアも駆け寄って心配そうに声をかけているし、不味かったか?
「た、助かった! よく助けに来てくれたぜっておい! なんだよそのキノコ!?」
「なんだよそのキノコじゃないわ! お前たちの仕業だろうが! どうしてくれるんだ、ついにキノコに意思が芽生えてしまったではないか!」
いつものように掴み上げるタコが無責任な事を口にしている。
「ちょっと待てよ! キノコに意思が芽生えるなんてオイラも知らないよ!」
「知らないで許される訳ないだろう! どうしてくれるんだ!」
「メ、メルトに聞いてくれ! あそこで死んだふりしてるから!」
死んだふり? タコルが触手を指す方向に目をやると、確かにメルトと威勢良く飛び出した爺さんが大地にキスをしながら、死んだふりを続けておる!
俺はタコを掴んだままクソキノコに近づき、足で仰向けに転がしてやると、目をパチっと開いて手を挙げてきた。
「よ、よう、タコル無事でよがっただ!」
「お前友達がヤバイ時に死んだふりして逃げようなんて最低だぞ!」
「死んだフリなんてしでねぇだ! それより立派に育っだなそのキノコ! 意思まで芽生えたのを見るのは俺っち初めでだ!」
ゆっくりと立ち上がり興味津々で俺のキノコを観察しているクソキノコに怒りが込み上げてくる。
「何が初めて見ただ! お前がやったんだろうが!」
「確かにキノコを生やしてやったのは俺っちだげども、そんな人面キノコは知らないだ! きっとお前の性格の悪さにキノコが泣いてるんだ!」
適当なこと言いやがるメルトを懲らしめてやろうとしたのだが、もの凄い殺気を感じ蹴り飛ばした男の方を見ると、完全にやる気満々のようだ。
俺に殺意を向けてくるとは愚かにもいい度胸をしておる。
しかし、ミゼアの知り合いだから殺すのは不味いかな?
まさか、彼氏とかではないよな?
でも待てよ、ミゼアとペアルックという事は……可能性は大いにある!
返答次第では殺してやるか!
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