100話 緊急事態
ミゼアはとにかくエロかった!
一瞬ミゼアに騙されたのかと疑ってしまったのだが、そんなことはなかった。
やはりミゼアは完全に俺に惚れているようで、俺に見つめられただけで興奮のあまり絶叫し、早く抱いてくれとヒステリーを引き起こしたのだ!
すぐに抱いてやっても良かったのだが、俺に抱いてくれとヒステリーを起こすミゼアが可愛くて、つい焦らしてしまった。
興奮したミゼアは気の強そうなお姉さんな見た目とは違い、乙女チックにお空の上でキスをせがんできたのだ!
上空数千メートルでの口づけは確かにロマンチックだった。
夕暮れの空が雲を黄昏に染めると、俺とミゼアを祝福するかのように、情熱的な赤が俺たちを包み込むように照らしているのだ!
興奮が収まらないミゼアは激しさを増し、俺の首に手を回しては、真っ赤に染まる夕焼けのように情熱的なキスをしてくれる。
熱い口づけを交わした俺たちは見つめ合い微笑むと、ミゼアはこの時間を終わられるのはもったいない、この夕暮れとサヨナラしたくないと乙女チックな事を口にしている。
きっとこの先ミゼアは真っ赤な夕暮れを目にする度に、俺と初めて交わしたこのキスを何度も思い出すに違いない。
俺は残念がるミゼアに教えてやろう。
「大丈夫だミゼア、明日も明後日も夕暮れは訪れるのだ! お前が望むのなら何度だって夕暮れに染まる空の上、くちづけを交わし愛を語ろう!」
「…………なにを訳のわからん事を言っている? それより体にどこも異常はないか?」
体に異常? それはつまり…………私とのキスで興奮したかと聞いておるのか?
だったら答えは――
「もちろん興奮したぞ!」
「いやそうじゃなくて! 体の自由が奪われるとかそういうのはないのか?」
体の自由が奪われる? ようは心も体も満たされもう私以外見れそうにないかと聞いておるのか?
変わった表現をするな、まぁ乙女チックなミゼアらしいな。
「ああ、もう体も心も締め付けられそうな気持ちだ!」
「そうか! 苦しいのだな!」
「ああ、苦しい!」
ミゼアはゆっくりと後方へ移動し、まじまじと俺の全身を舐め回すように見ている。
「…………本当に苦しいのか? 体の自由が奪われているのか? それにしては妙だな?」
「そんなに心配するな! 案内所の中にベッドがあるだろう、そこで抱いてやるからな?」
「…………悪性変異が効いていない? 非力な人間があれを防ぐことなど可能なのか?」
ミゼアはさっきから何をブツブツ言っているのだ?
それにしても頭がむず痒いな!
鍋を被っているせいかな? っあ、あのクソキノコ鍋を洗ってなかったんじゃないだろうな?
痒いけど掻くためには鍋を取らなければならない、そうなればみっともない姿を見られてしまうし、困ったな。
ミゼアは空中で翼を広げながら三角座りで俺を見つめているし、鍋が取れん。
「ぎゃぁあ、ぐぎゃぁああ――」
頭を掻きたい、でも掻けないというもどかしさと戦っていると、突然どこからともなく声が響いてくる。
なんだこの気色の悪い唸り声は? どこから聞こえてくるのだ?
辺を見渡すがここは上空数千メートル、俺とミゼア以外もちろん誰もいないのだが? 確かに鳴き声は聞こえる。
ミゼアを見ると瞳をパチパチさせながら俺に何やらアピールしている。
ミゼアを見つめていた次の瞬間、被っていた鍋が突然脱げて地上に落ちていく。
鍋が落ちていく様子を呆然と眺めていると、驚いたミゼアが俺の頭を指差している。
「な、なんだそのキノコ!」
しまった! 見られてしまった!
俺は慌てて両手で頭を隠そうとするが、キノコが尋常じゃないほどデカくなっているのがわかる!
「お、お前人間じゃなかったのか!? それに……なんでそこに集結してるんだよ」
ミゼアは明らかに動揺しパニックになってしまったのか、よくわからない事をブツブツ言っている。
俺はすぐに誤解を解こうとミゼアに話しかけようとしたが……キノコが鳴いている?
一体どういう事だ? それにこのキノコどれほどデカくなっているんだ?
気になる! 俺はミゼアの誤解を解くのは後回しにして、両手を突き出しちょっと待っていてくれと伝え。
猛スピードで一度地上に降り、案内所に置いてきた爺さんの手鏡を取りに行った。
案内所のテーブルに置いてあった手鏡で頭部のキノコを確認する。
「ぎぃぃいいやぁぁあああ! なんんんじゃぁぁああこりゃぁぁあああ!」
鏡で自分の頭部を確認すると思わず絶叫してしまった!
俺の頭に生えたキノコは俺の顔ほどの大きさまで急成長しているのだが、それだけではない!
キノコには気色の悪い顔が無数に浮かび上がり、それがぎゃぎゃとうるさく鳴いているのだ!
俺は怒りとこの醜い姿をミゼアに見られてしまったという羞恥心で、手にしていた手鏡に力が入り砕いてしまった。
同時に抑えきれないクソキノコへの怒りが爆発しそうなのだ!
「くそぉぉキノコがぁぁあああ!」
怒りで全身に力が入ると立っていた案内所の床がひび割れ、俺は怒りのままに天井を突き破り上空に舞い上がると、怒りの咆哮を上げていた。
「どこにおるのじゃぁああ! クソキノコがぁぁあああ!」
天に向かって放たれた咆哮は大気を振動させ、島を覆っていた雲が遥か彼方に遠ざかれば、残りの雲が島の周囲に弧を描いた。
俺は湯気でも噴出しているんじゃないかと思うほどの熱さを瞳に感じ、自分の顔が怒りに染まっているのがよくわかる。
それと同時にミゼアが俺の咆哮を聞き、雲が一瞬で消えた事に驚いているのかドン引きしているのかわからないが、半開きの口で呆然としている。
最早、羞恥心などと言っている場合ではない、今すぐにクソキノコをとっ捕まえてこの気色の悪い人面キノコを除去させなければ!
できないなどと言うそんな言い訳はもう通用せんぞ!
島中を片っ端から飛び回り、全てを焼き払ってでも見つけてやる!
サラの呪いも妖精の都も後回しだ!
俺のこの人面キノコを何とかすることが最優先だ!
こんなものを頭から生やしていてはミゼアも抱かれたくはないだろう!
緊急事態だ!
とにかく、俺はミゼアに苦笑いを浮かべながら近づいて、このキノコについて説明することにした。
そうしなければ妖怪キノコ人間と勘違いされてしまうからな。
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