表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/50

転換6「慣れつつある非日常」

どうも、作者です。


突然ですが、評価・感想の所で、鋭いご意見を頂きました。

最初に言いましたが、作者はド素人です。

当然、変に思う部分や、読みにくいと感じる部分もあると思います。ですので、そういった場合は遠慮せずに評価をお送りください。

悪い部分を直して、日々精進していきたいと思っています。


それと、もう一つ。

正月が近づいてきており、忙しいので、更新が遅れるであろうことを、深くお詫び申し上げます。



では、本編へお進みください。



 のどかな春の朝。

 あの最悪の日から四日が過ぎ、今日は金曜日である。俺たちは見慣れた教室のドアを無機質に開け放った。


「おっはよー、きよ!!」


 直後、俺に気付いて声をかけてくる人物、名は東堂葵。肩までのポニーテールがよく似合う、快活な少女である。


「おはよ、葵」


「おっ! ちゃんと名前で呼んだな? 感心感心!!」


 俺は気だるげに挨拶を返すが、葵は全く動じた様子もなく、俺の頭を撫でくり回す。……こんなのは、まだ序の口だ。


「名前で呼ばないと、何かされそうだしねぇ……」


「わっかってんじゃ~ん! ……ふふ、でもなぁ」


 ため息を吐きながらの俺の言葉に、葵は目をキラーンと輝かせて、両手をあげた。

 そしてそのまま、ワキワキと不規則に指を動かす。


 ……殺気!!


「呼ばれたとしても何かやるぜぇ!! ……あれっ?」


「毎回毎回、やられっぱなしだと思わないで欲しいな」


 いつものごとく葵は俺(の胸)に襲いかかるが、そこはさすがに俺も学習していた。

 俺は素早く身をかわしすんでのところでその魔手から逃げ延びる。すると、俺の後ろにいた京が結果的に俺の身代わりになっていた。そのせいか、俺へと届くはずだった葵の手は、勢い余って京の胸板をつねっていた。


「何これ?」


 京、一言。


 確かにその通りで、今のこの状況を第三者が見たら、確実に京にそっちの気があると思われてしまうだろう。それに気付いた俺と葵は、素早く京から手を離した。


「あー、いや、悪い神谷! ……そういう、アレな趣味があるわけでもないのに」


「いや、ほんと偶然! 京があまりにも空気だったからさぁ!! 何ていうか……、つい」


「どうせ、空気ですよ! ふ~んだ。……何気にきよと一緒に登校してきたのに、誰も声かけてくんねーし」


「だから、ごめんって! 悪かったよ~!」


 もの凄い勢いでいじけモードに入ってしまった京を、俺は慌てて慰める。何故かというと、本格的にブルーになってしまった『俺』は、とてつもなく面倒くさいからである。

 鬱になるスイッチのようなものがあって、一旦入ると一週間は誰とも口を聞かないという、非常に厄介なものなのである。あまり頻繁になるものではないのだが。


 ……何故俺がこんなに詳しいのか、だって? お忘れだろうか、俺自身経験した出来事だ。


「まぁ、いいけどさ。……もうすぐHR始まるから、お前もそろそろ席につけよ?」


「はーい」


 幸い、今回はすぐに機嫌を取り戻してくれたようだった。俺は静かに自分の席へと戻っていった。

 ちなみに京の席は窓際の一番後ろで、俊平の隣の席だ。それに対して俺は、真ん中の前から四番目というかなり中途半端な席であった。だがしかし、いちいちそんなことで怒るようでは子供と同じだ。俺は葵に一先ずの別れを告げて、自分の席へと向かった。


 席につくと、隣の席の男子と目が合う。俺は笑顔で挨拶をした。


「おはよう」


「お、おはよ……」


 相手は何故か、顔を赤くしてしどろもどろで返事を返した。俺にとっては、この前までの同性である男子の方がむしろ何かと話しやすいので、隣が男子なのは好都合だ。……うっかり素を出さないように、言葉遣いには気を付けねばならないが。それでも、楽なことには変わりはない。


「……ねぇ木村、……くん。一時間目って何だったっけ?」


「え、あ、あぁ。……現社だけど」


「そっか、ありがと」


「い、いやぁ! こんくらい……!」


 明らかに挙動不審な男子を多少訝しく思いながらも、俺は鞄から教科書類をテキパキと出していく。


 ……こんな日常に慣れてしまった自分が、ちょっぴり嫌だった。











 みんな、久しぶり! 神谷京です。え、何でいきなりお前なのかって? あっはっは。面白いことを聞くなぁ。


 ……それはだなぁ。


「…………」


 きよが五時間目の始まりから、気持ちよくご就寝あそばされているからなのだ。

 今は昼休みが終わって午後初めての授業で、おまけに教科は英語。眠いのは万国共通だろう。そんな二重の責め苦にきよは耐えきれなかったようで、先程からスースーと可愛らしい寝息をたてながら机に突っ伏している。

 こう言うと、何で俺が寝ていないのかと思う人もいるだろう。理由は単純明快、隣の俊平、もといヴァカがうるさいからだ。


「なぁなぁ、京。きよちゃんって、いつもあんな感じなのか)」


「まぁ、何をもってあんな感じかは知らんけど、大体な……」


 ひそひそと、だけれども何故か興奮しながら俊平が話し掛けてくる。煩わしいながら俺が答えると、俊平は『ふへへ』と気持ち悪い笑みをこぼした。


 ……友達、やめよっかな。


「……んっ、……」


 そんな話をしていると、きよは一瞬だけ幸せそうに息を漏らすと、小さく身じろぎをした。……そんな間の抜けた動作でも、今のあいつでは絵になってるのだから、質が悪い。


「おいおい何アレ何アレ何アレぇ!? めっちゃ可愛いんすけど!?」


「落ち着けこのバカ!!」


 思った通り、身を乗り出しながら息を荒くする俊平に、俺は小さく蹴りを入れる。まったく……今は授業中だということをこいつはわかっているのだろうか。


「だってよぉ……。あれ、ヤバいぜ? 見ろよ! 木村なんて、きよちゃんの方を向いたまま固まってんぜ?」


「まぁ、確かにな……」


 俊平に言われてきよの隣の席を見やると、なるほどそこには言った通りに赤化(この場合、誤字ではない)している木村がいた。やけに広いデコまでもが、真っ赤に染まっているのが見える。

 ここで木村の名誉のために一つ言っておくと、だ。少し気持ちもわかるのだ。今のきよの体勢は、机に両手を投げ出してその上に頭をおくという、スタンダードな体勢だ。だがしかし、ここで重要なのは顔の向きなのだ。

 きよの顔の向きは、もっとも多いうつ伏せ机向き型ではなく、左にいる木村向きという思春期男子ハートブレイカー型である。


 ……今の説明じゃわかりにくかったと思うのでもう一度説明するが、つまりきよは木村のいる方向へと顔を向けて寝ている状態なのだ。木村にしてみれば、右を向けばアイドル顔負けの美少女が無邪気な寝顔をさらけ出しているのだ。そりゃあ、固まるだろう。

 ここで『じゃあ右を見なければいいじゃん!』とツッコミを入れたがっている諸君。男子には、そんな勿体無いことは出来ないのだと、記憶に留めておいてくれ。……人間だもの、思春期だもの。


 ふと、時計を見ると、まだ授業時間は半分以上も残っていた。つまり俺が言いたいことはだな。木村の生き地獄、及び他男子たちの目の保養タイムは、まだまだ続くようだということだ。









「……! ……よ! きよ!!」


 誰かからの俺を呼ぶ規則的な声。俺がまだ眠い瞼を開けて顔を上げると、そこには朱菜、葵、緑の三人が俺の机の前に立っていた。……寝てしまっていたみたいだ。


「んー……。おはよ、三人とも」


「完全に寝ぼけてるね」


 目をこすりながら俺がした挨拶に、緑は口に手を当ててくすりと笑った。


「ほんっと、よく眠ってたわね~。ほぉら、起きなさい~!」


「いひゃいいひゃい!! おひふよ!!」


 朱菜はまだ眠そうな俺を見て悪戯っぽく笑うと、俺のほっぺを両手で引っ張った。たまらず、俺は悲鳴をあげる。その言葉でようやく手を離してくれるが、まだ痛い。


「みんな見てたよ? ……特に男子が」


「え……、そんなに?」


「おぅ、そんなに」


 緑の言葉に、まだ赤い頬をさすりながら俺が聞き、それににやっと笑って答える葵。

 ……何でそんなに見られてたのかは知らないが、目立つのはいい気がしないな。


 この短期間で、三人とは結構親しくなった。そして、それに伴って性格や特徴も段々とわかってきていた。


 まず、葵は俊平にちょっと似ているということ。

 こう言うと失礼かもしれないが、いつも元気で笑っているところや、時たま騒がしいことなど、結構な共通点がある。もっとも、葵のそれは俊平と違って見ているこっちも元気になるような明るさなのだが。……俊平のは、うるさいんだ。

 ちなみに、葵最大の特徴である触り癖は、朱菜が言うには最早一種の『病気』のようなものらしい。


 ……困ったものだ。


 朱菜は最初はあまりわからなかったが、かなりのA型タイプであること。実際の血液型もA型なのらしいのだが、常に他の二人の世話を焼いており、俺も何度か注意されたことがある。まぁ、みんなのお姉さん的な存在だ。緑が言うには隠してるだけで『寂しがり屋』なのらしいが……。


 今はまだ分からない。


 最後に、緑はちょっと怖いということ。普段は温厚でいつもニコニコ笑っているのだが、たまに何かとてつもなく恐ろしい発言をするのだ。俺たちには大抵優しいのだが……、何かオーラが違う時があるのだ。『腹黒』という意味がちょっとわかってしまっている。

 例によって葵が言うには、『舐めたらあかんぜよ』らしい。突っ込む所が多すぎるので、処理不能ということで許して欲しい。



 とにかく、何だかんで俺はこのグループの仲間入りをした。男の俺がこの中でやっていけるのか、という不安もあるが、それと同時に既に女口調に慣れつつある自分が怖かった。


「さ、早く移動するわよ!!」


「移動するって……、どこに?」


 順応の早い自分に自分でげんなりとしていると、朱菜が唐突に言ってきた。無論、俺は何のことだか分からないので、首を傾げる。朱菜は呆れたように言った。


「あんたねぇ……、寝ぼけるのもいい加減にしなさい! 次は体育でしょうが!!」


「あ、そうだったっけ?」


 俺はその言葉を聞くと、『まったく……』と怒っている朱菜をなだめるように苦笑する。気だるい体に喝を入れ、『う~ん』と伸びをして立ち上がる。そして、今では女物になってしまった体操着を取り出し、三人の元へ駆け寄る。

 すると、俺の姿を確認した緑と葵が声をかけてきた。


「きよったら、遅いよ~!」


「さっさと更衣室に行こうぜ~!」


 その言葉を聞いて、俺は静止する。


 ……どうやら俺はまた、大切なことを忘れていたようだ。


 更衣室といったらその名の通り、みんなが集まって着替える所だ。その中でも女子更衣室といったら、世の男子たちにとっては夢のような甘美な空間、桃源郷なのである。

 ……しかし、嬉しいやら悲しいやら。俺は今、その秘密の花園に無条件で参加出来るわけで……。


「えぇぇっ!? 無理無理無理ぃ! それはヤバいってぇ!!」


「……びっくりした~。いきなり、どうしたのよ?」


 思わず叫んだ俺の言葉に、朱菜が驚きの声をあげる。他の二人も、何事かと俺の方へと視線を向ける。みんなには俺の状況がわからないのだから当然とも言える。俺は焦りながらも、バレないように何とか言葉を紡ぎ出す。


「あ、あのぉ……。私、ちょっとお腹痛くて。見学しようかなぁ~って」


 我ながら、とっさにしてはなかなかの言い訳だと思う。

 これなら、不自然なことなく更衣室への入室を免れることが出来る。まぁ、さすがに何回も使える手ではないが、あとは家でゆっくり理由を考えればいいことだ。


「ん~? なんっか怪しいなぁ……」


「そうねえ……。さっきまであれほど元気だったのに」


「え!? い、いや……、その……」


 だがしかし、何故かこういうときだけ勘が鋭い二人に、じりじりと問い詰められる。


「……胸なの?」


 そして、緑が笑顔で言ったその言葉が止めとなった。


「そうかぁ、成る程! ……胸ね」


「何だ、胸見られんのが恥ずかしかったのかぁ! だいじぶだいじぶ! そんだけ可愛いんだから胸なんて関係ないって!!」


 全く別の方向へ豪快に勘違いした二人によって、俺はズルズルと引きずられていく。


 緑が、可愛く微笑んでいた。


「違うんだってばぁ~!!」


 俺の悲痛な叫びが、狭い廊下にこだました。







 あまり広くない更衣室に、クラスの女子がひしめき合う。もちろん、みんな下着姿だ。結局普通に入室してしまった俺は、出来るだけその姿を見ないように隅の方で壁を見ながら着替えていた。


 ……早く着替えないと、色々とやばい!!


 俺は袋から素早く体操着を取り出すと、とっとと制服を脱ぎ、着替えようとする。そして、後悔する。この時に、俺はもっと警戒すべきであったと。


「き~よ! 何こんな隅っこで着替えてんだよ!!」


「わっひゃいぃ!?」


 後ろからの葵の攻撃に、俺は素っ頓狂な悲鳴を上げる。もはや慣れっこであるセクハラに、俺は顔だけを葵に向けて抗議する。


「な・ん・で! 葵は、いっつも私の……、む、胸を揉むの!?」


「ふっ、お前が可愛い声を出すからだぜ。……ついイジメたくなっちまう」


「誰だよそのキザ男は……!!」


 葵が髪をかきあげてわざとらしく言った言葉を聞いて、俺は怒りに体を震わせる。葵はまだ俺にちょっかいを出そうとしといたが、そこに緑が声をかけた。


「葵? そんな茶番いいから、早く着替えようか?」


 凍り付く笑顔、目は笑っていない。


 朱菜も痺れをきらしたのか、『世話が焼ける…』と俺はみんながいる真ん中の位置まで半ば無理矢理連れて来られる。


「うわぁ~! きよちゃんってやっぱ可愛いねぇ!」


「ほんと! 肌も綺麗だし! 腕ほっそ~い!!」


 クラスの女子たちから黄色い声をかけられる。そのかけられる言葉にも多少の恥ずかしさはあるが、何よりも今、目の前に広がる光景が凄すぎる。俺は心底たまらずに顔を背けていた。すると、どう勘違いしたのかさらに女子たちが話しかけてくる。


「きよちゃん、顔赤いよ?」


「ほんとだ。あんたどうしたの?」


 誰かが言った言葉に、朱菜が俺の顔を覗き込む。俺が何も言えずに黙り込んでいると、またも緑が気付いたようにぽそりと言った。


「きよってさ。……もしかして、こういうの恥ずかしい?」


 その言葉に、一気に俺に視線が集まる。


 そ、そりゃ当然、男だから恥ずかしいだろ……!!


 俺は必死に顔を背けていたが、その視線から逃れることが出来ずに、本当に小さく、ついにコクンと頷いた。羞恥に顔が染まり、俯く。


 うぅ。何だって俺がこんな辱めを……!!


 素直に答えたのだから、せめてもう普通に着替えさせて欲しいと願う俺。だがしかし、先程の俺の行動は女子達には逆効果だったようで。


「きよちゃん、可愛い~~!!」


 身悶えするように叫んだ女子たちに、俺はもみくちゃにされる。


 つ、潰れる……。


「……何か、きよって天然よね〜」


「そうだなー」


「……何か、緑って腹黒よね〜」


「そうだなー」


「朱菜? 葵? ……どさくさに紛れて何言ってるのかな?」


 緑たち三人は、そんな俺の様子を着替えながら、じゃれ合いながら傍観していた。


 助けろよ!!


 友人三人のそんな薄情な姿に、強くそう思わざるを得ない俺であった……。



後書き劇場

第四回「本当に好き勝手やってますの巻」


どうも、タイトル通りの作者です。

今回は前みたいにネタ切れ、ということではないんですが、字数制限上実現出来ませんでした。


すいません。


今回もキャラ紹介とさせて頂きます。

ネタの方が見たいという方は、感想としてお送りください。

……いないですかね(笑)



では、今回は京を。


神谷京

16歳 9月9日生まれの乙女座、AB型。

好きな食べ物:唐揚げ、寿司。

嫌いな食べ物:甘いもの。

趣味:休日にたっぷりと寝ること、人間観察。


ごめんなさい、書いてる途中に思ったんですけど、きよとほぼ同じですね(爆)

そりゃ同じになりますね。元は同一人物なんですから。


一応、ちょっと説明を。

年齢諸々は、まぁ全部同じです。好きな食べ物は京が変わったというより、きよの好みが若干変わったということですね。体が変わりましたので。

趣味は、同じ理由でお風呂はきよになってから好きになったんでしょう。京の方の『人間観察』というのは、たまに京視点で出てくる他人の客観的な分析のことですね。

京はそれが密かな趣味だったのらしいですが(それにしても変な趣味だ)、きよになってからは新しい環境に慣れるのに必死で、それどころではなくなったのでしょう。

それで人間観察ではなく、そんな一日の疲れを癒やすお風呂が趣味になったのではないでしょうか。

では、また次の話で!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ