転換5「初めてのスクールライフ」
ミスがあったので、修正を加えました。
修正前をご覧になっていない方は、気になさらないでください。
では、本編へどうぞ。
昼休み。あれから俺は女子からの怒涛の質問責めにあい、対応に追われた。何故かというと、ぶっちゃんの心遣いにより一時間目は自習になったからである。
それだけならまだしも、質問される内容が『神谷くんと恋人なの?』とか『どこまでいった?』などでは、俺が疲れるというのもわかるというものであろう。
このままでは昼休みでも同じことになりそうなので、俺は人気のない屋上にでも向かおうとしていた。
「オラ、転校生どこ行くんじゃあ!!」
「にゃっ!?」
背後からの気配に気を払っていなかった俺は、いきなり誰かに後ろから抱きつかれてしまった。もとい、両手で胸を鷲掴みにされた。……飛び出る、悲鳴。
……またもや変な悲鳴をあげてしまった。きっと今俺は、全身真っ赤であろう。何事だと慌てて振り返ると、そこには茶髪でポニーテールの少女が立っていた。
身長は俺より結構高く、体格的にも俺がスッポリと包まれているようだった。藍色の瞳が、悪戯っぽく光る。
「へっへっへ。小ぶりでいい乳じゃのお、ほれほれ」
少女はまるでエロ親父のようにそう言うと、モミモミと俺の胸を揉んでくる。
俺は生まれて初めて、『胸を揉まれる』という状況に陥り、半ばパニック状態であった。しかも、揉んでくる相手が男ではなく、女の子であるというのだから、尚更だ。
……っていうか! 男子ぃ!! 何で前かがみになってんだぁ!!
俺は人生初の、何とも不思議な感覚に戸惑いながらも、途切れ途切れに言う。……これ以上こんな痴態を晒し続けるなんて、恥ずかしくて死んでしまう。
「ちょっ……と、や、め……」
「やめろって言ってんでしょうがぁーっ!!」
ようやく絞り出した俺の制止の言葉を遮って、怒鳴り声が轟いた。そしてそれと同時に、甲高くぱぁんっ! という音が響く。
「いでっ!? ……何すんだよー!!」
頭を叩かれたポニーテールの少女は、その攻撃を受けてようやく俺を解放した。俺は素早く少女と距離をおくと、荒れた呼吸や乱れた衣服を整える。
……一体、何だってんだ。
「あんたが、初対面の相手にセクハラなんてしてるからでしょうが!!」
ポニーテールの少女を止めてくれた、赤髪でツインテールの少女が怒鳴り返す。前髪は割とバラバラに切られており、頭の両サイドを白いリボンで止めている。茶に輝く瞳は少々ツリ上がっていて、きつめの印象を受けた。普通の少女だ。
理解不能の状況に俺はただただ目を点にして、それを眺めているだけだった。
「大丈夫? きよちゃん」
そんな俺の様子を見かねたのか、おっとりとした喋り方で、黒髪セミロングの少女が顔を覗き込んでくる。前髪はおでこが見えるくらいまで短く切り揃えられており、対照的に後ろ髪は肩ぐらいまでに広がっていた。この姿になってからは割と小柄な方である俺より、一回り小さい感じだ。
「う、うん……、ありがと」
俺が戸惑いながらも返事をすると、彼女は柔らかく微笑んだ。
「あー、ええと。ごめんね? きよちゃん。……このバカが」
明らかに混乱している俺に、苦笑いを浮かべながら謝ってくる少女。後ろでは、先程のポニーテールの少女が『バカとは何だー』と口を尖らせていた。どうやら、彼女たちは友達同士のようだ。
「いやー、ごめんなぁ。転校生があまりにも可愛かったんで、つい」
「つい、じゃない!!」
『にゃはは』とおどけて快活に笑うポニーテールの少女に、ツインテールの少女がまたも怒鳴る(いや、叱る?)。そしてそれを『やれやれ』といった感じで見守る俺の隣の少女。
誰かに説明しろと言われたら、非常に面倒くさそうな状況である。どうすればいいのだろうか。
「ふ~。ちょっともよおしたんでトイレに行っていた俺が帰ってきたが、きよ何してんだ?」
「何その説明口調」
もの凄くわかりやすい理由を引っさげて、京がいきなり教室に入ってくる。俺は的確なツッコミを入れるが、それまで少女を叱っていたツインテールの少女は、京を見るなり笑顔で言った。
「神谷くん、丁度良かった!!」
「ん?」
言われた言葉に、京は怪訝そうな顔をする。この状況がわからないので、少女の意図が読み取れないのだろう。だがそんな京に、少女は満面の笑みで軽く言った。
「私たちを簡単に紹介してくれない? きよちゃんに」
「え」
一見すると、今の少女の発言はごく普通の頼みにしか聞こえない。……だがしかし、女子とあまり話したことのない男子たちにとっては、それはかなり難しい。その難易度は、最上級に位置すると言っても過言ではないだろう。
そんな難題を無慈悲にも突き付けられたのだ。京の気持ちもわかるというものだ。
……何かヤバいくらいの冷や汗かいてるし。
「そりゃ、いい考えだな!! 私らで説明するより、知り合いに教えてもらったほうがとっつきやすいだろうし」
「お願いするね? 神谷くん」
残り二人が無意識に更なる追撃を放つ。二人とも笑顔ではあったものの、京に与えるプレッシャーの量には、何ら変化はない。むしろ、無自覚な分、凶悪と言えるだろう。
「神谷くん? どうしたのよ」
「……。悪ぃ。……名前、わからない」
……あーあ、ついに言っちまった。
京は申し訳なさそうに俯いていたが、その言葉を聞いた三人は、驚いたように眉をひそめた。
「えー!? 信じらんない!! クラスメートの女子の名前も分からないのぉ!?」
「おいおい。頼むぜー、神谷」
「冗談……、じゃないんだよね?」
そしてその後。
腕を組みながら呆れたように言うツインテールの少女。
両手をあげて、苦笑いするポニーテールの少女。
少し悲しそうに目を逸らす、セミロングの少女。
三者三様、と言えば聞こえはいいが、言われている当人にとってみれば、罪悪感を増長させるもの以外の何者でもない。当然、俺と京は共に心に深刻なダメージを負い、
「ごめんなさい」
気付けば、二人して頭を下げて謝っていた。
「……何できよちゃんまで謝ってんの?」
反射的に行った俺の行動に対して、ツインテールの少女は疑問の声をあげる。その言葉で俺は頭をあげるが、京は依然九十度に折れ曲がったままだった。それに見かねたポニーテールの少女が声をかける。
「おい、神谷ももういいって。……今まで話す機会なかったんだし、まぁしょうがねぇさ」
その言葉で、京はギギギ、とゆっくり体を元に戻す。
「私たちは、ちゃんと知ってたけどね……」
「ぐはぁ!! マジすいませんでした!!」
「こらこら、あんまイジメるんじゃないわよ」
セミロングの少女が笑顔で言った言葉に京は再び直角になろうとするが、それをツインテールの少女が苦笑いで制する。
「じゃあ、私が一人ずつ紹介するわ。……神谷くんも覚えておいてね」
「はい」
ツインテールの少女がわざとらしく言った嫌味に、俺と京はしゅんとなって素直に頷いた。
「私は藤川朱菜。一応、学級委員長やってるわ。何かあったら遠慮せずに聞いてね」
ツインテールの少々、もとい藤川朱菜は得意気にそう言った。委員長をやってるくらいだ。責任感が強く、きっと面倒見もいいのだろう。話し方もすごくはきはきしている。
「で、こっちは東堂葵。家が空手の道場やってるから、腕っぷしは滅法強いわよ」
「ははっ、褒めても何も出ないって」
紹介をされたポニテの少女、東堂葵はまんざらでもなさそうに照れ笑いを浮かべた。……身長は高いが、細身の体をしていてあまり強そうには見えない。だが、『能ある鷹は爪を隠す』とも言う。強者というものは、得てしてそういうものなのかも知れない。見た目で判断してはいけないのだろう。
「で、こっちが西城緑。調理部に所属しているわ」
「よろしく……」
セミロングの少女、西城緑は可愛らしく微笑むと、ぺこりと静かにお辞儀をした。……その仕草は、女の子らしさを強調させ、俺は純粋に可愛いと思った。やっぱり、本物の女の子のほうが可愛らしい。
「騙されちゃ駄目よ。……こいつ、こう見えても腹黒なんだから」
「え~? そんなこと無いよ……」
俺と京は同時に顔を見合わせる。見た目では、どう悪く見ようとしてもそういう風には見えないからだ。だが、『人は見かけによらない』とも言うし、彼女にも色々と秘密があるのだろうか。
……まぁ、今はどうでもいいが。
俺は長くなりそうな思考を頭から追い出し、先程からずっと言えそうで言えなかった言葉を口にした。
「ところで……、あの、私に何の用なの? 藤川、さん」
「別に朱菜でいいのに……。まぁ、いいわ。お弁当を一緒に食べようと思って」
「お弁当を?」
何だ、と俺は思う。……そんな程度のことか。てっきり、また質問責めにあうとでも思っていた。意外と普通な提案に俺はほっと胸を撫で下ろす。
「今日来たばっかだし、まだ食べる相手もいないだろ? 親睦を深めるためにも丁度いいと思ってさ」
「いいかな? きよちゃん」
「私は、別にいいけど」
駄目押しとばかりに言ってくる二人の言葉に対し、別段俺には反対する理由がない。俺は了承の返事を返した。
「決まりね、じゃ、食べましょ! 時間とらせちゃったし、神谷くんも一緒にどう?」
「あ、あぁ。……そっちがいいんなら、それで」
結局、京も昼食に参加することになり、俺たちは五人で食卓を囲んだ。机をガタガタと寄せ合わせていると、男子たちの視線が京へ向いているように感じられた。
しかも、その全てが恨みや妬みといった感情に彩られていたのだ。
多分、今まさに可愛らしい少女三人と昼食を共にしようとしているのが原因だろう。
……可哀想に。俺は、念仏は唱えんぞ。
そうこうしているうちに机のセッティングが終わり、みんなが弁当を広げていく。
「それでさー、さっきからずっっと聞きたかったんだけど……」
俺が好物のエビフライを頬張っていると、東堂が今までにはない真剣な表情で聞いてくる。一体何事かと思う。周りの三人も不思議そうな表情で東堂を見ていた。
俺はエビフライを噛むのを一旦止めて、視線で先を促した。
東堂はその表情のままなのに、やけにあっさりと言った。
「二人ってキスまでいった?」
「げほっ! ごほっ!!」
予想だにしなかった発言に、俺はエビフライを口に入れたままむせる。隣の京もそれは同じなようで、箸に持った唐揚げを静止させ、あんぐりと口を開けている。
……ブルータス、お前もか。
俺はようやく咳が止まったことを確認して、若干の怒りも込めて、涙に滲んだ目で東堂を睨み付けた。
「え、何? もしかしてもう……」
「何もしてないっ!!」
「やってないっ!!」
ハッ、としたような東堂に向かって、俺と京が全力で否定する。全くのお門違いだが、そんな俺たちを見て、藤川と西城は感心したように言った。
「すごい……」
「息、あってるねぇ……」
否定した言葉でさえ仲の良さとして捉えられ、俺たちはどうしようもなく黙り込む。
そして、結局この時間も三人の気が済むまで、質問責めを味わうこととなったのだった……。
散々だった学校の帰り道。俺は朝のように京と一緒に歩いていた。
帰る家が同じなので、至極当然の行動に他ならないのであるが、周りの人たちにはそうは見えないようようで。……これもまた、俺たちがカップルのように見えることの一つの要素であるらしい。
……全くもって、迷惑な話だ。
確かに、俺と京は同位体だ。だから、好みや考え方も大体は同じで、関係は良好であると言えよう。
……しかし、それはあくまでも姉弟がいる、などの家族愛に近しいものであり、恋愛感情なんてものは無いに等しい。あなたは、例えば自分の姉や弟を、恋愛感情的に好きだろうか? 中にはそういう方もいるかもしれないだろうし、それを頭ごなしに否定するつもりもないが、大半の人は『NO』と答えるはずだ。
つまりは、それと一緒なのである。
何しろ、そもそもは自分自身であるのだから、それにすら該当しないのであるが。その辺はいくら考えようと詮無きことだ。
「なぁ。……お前はどうだった?」
「どうだった……って、何が?」
俺はふと、何食わぬ顔で歩いている京に話し掛ける。京はポッケに両手を入れたまま、訝しげに返した。
「質問とか。……男子から聞かれなかったか?」
「……そのことか」
京はそれを聞くと、遠くを見るように目を細め、盛大なため息を吐いた。渋い顔を俺に向けた。
「聞かれたさ。……思いっきりな」
『疲れたぜ』と両手を軽くあげて首を横に振る。その姿からは、凄まじい死闘の跡が垣間見えた。
「お前は聞くまでもなかったろ? 女子たちスゴかったし」
「まぁなぁ。……あ、でもさ」
京の言葉に俺は苦く頷くが、昼休みでの出来事をふと思い出す。
「お前、昼休み男子に睨まれてたよな? あの三人、可愛い子だったし、後で色々言われたんじゃないのか?」
からかうように言った俺の言葉に、予想とは裏腹に何やら京は渋い顔をした。
そして俺の顔を見やると、言った。
「お前、それ本気で言ってんのか?」
「何だよ。……他に何かあんのか?」
「鈍感というか何というか……。女神の言っていたことは本当だったみたいだな」
「……? どういうことだよ」
「何でもねぇよ」
そう言って再び早足で歩き始める京。俺は後をついていきながら、先程の言葉の真意を探ろうと思考を巡らせていた。
……あの三人が理由じゃないのなら、一体どういうことなんだ?
しかし、いくら考えても答えは出なく。俺はモヤモヤとした気持ちを胸に抱えたまま、帰途へつくことになったのである。
後書き劇場
第三回「早くもネタが尽きてきたよの巻」
お久しぶりです、作者です。
今回やることは、まぁ概ね上のタイトルを見て頂ければわかるかと。
えぇ、そうです。ネタ切れです(爆)。あんだけ大口叩いときながら、ネタ切れです(大事なことなので二回言いました)。
というわけで、今回は簡単なキャラ紹介をしたいと思います。えぇ、存じておりました。最初から無理であると(笑)。石を投げないでください。
神谷きよ
16歳、9月9日生まれの乙女座、AB型。
好きな食べ物:エビフライ、寿司。
嫌いな食べ物:甘いもの。
趣味:休日にたっぷり寝ること、お風呂にゆったりつかること。
こんな感じですかね。
まぁ、これを見てる人があまりいないのが、せめてもの救いです。
……そういう問題じゃないか。
では、また次の話で会いましょう!
See you next again!
大事なことだか(ry