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転換35.5「知らぬが仏なこともある」

シリアスな話の次はギャグだってばっちゃが言ってた

 キンコンカン。終業のベルが鳴る。いつも通りの日常が流れ、いつも通りに学校が終わる。

 そんな、残暑の午後。じとつく汗を軽く拭って伸びをする。


「は、あぁ……。終わった終わったー」


 筋が伸びる解放感に間の抜けた声をあげつつ、俺は立ち上がった。


「もう放課後か。何か今日は終わるの早い気がするな」


 京が首をコキコキと鳴らしながら近付いてくる。その顔には、うっすらと寝てた跡がついていた。

 ……ツッコミ待ちなのだろうか。


『バカには構わないほうがいいですよ、きよ』


 そして颯爽と現れて京に辛口発言をする女神。


「女神、学校に来るなんて珍しいね」


 小声で俺が言う。普段女神は学校にはあまり来ない。公衆の目があるから俺たちとあまり話せないし、迷惑にもなるからとこいつにしては自重しているらしい。

 ……どういう風の吹き回しだろう。というか京があからさまに訝しい顔で女神を見ている。


「京、露骨すぎ。まだみんないるし」


「悪い悪い。……で、どうしたんだお前は?」


 続けて小さく話す俺たち。知らない間に隠密のスキルが身に付いているとはまさかクラスの皆も思うまい。

 その原因である当の女神本人は満面の笑顔で首を傾げた。


『別に? 何もないですよ。ただたんに暇すぎたから来ただけです。もう授業も終わり頃だったし、迷惑もかからないかなーって』


 ……普通すぎると疑いたくなるのは人間の性だと思う。

 俺と京は何も言わずに女神を睨んだ。


『な、何ですかその目は!? いいじゃないですかたまにぐらい!』


「冗談だよ、冗談。まぁ何もしないんだったらいいんじゃないか?」


京が小さく笑って言った。……俺は冗談ではなかったというのは内緒だ。


『……きよ~?』


「何でもないよ、何でも」


『まぁいいですけど……』


 こういうときだけ妙に勘が鋭いから困る。


「さて、いつまでもこんな暑い教室にいるのもなんだし、帰るか」


「そだね。……ん?」


 とりあえずと帰り支度を始めようとした俺たちだが、ふとある人物が視界に入って動きを止める。

 茶色の短髪に細身の体躯。鞄の中に手を突っ込んでそそくさと中身を確認しているそいつは、俊平だった。

 普段から挙動不審な奴だが、いつも以上に気にかかる動きだ。


「おい俊平、お前何やってんだ?」


 それは京も同じなようで、ポンと肩を叩いて声をかけた。


「!?」


 瞬間、ビクッと身体を震わせて俊平は素早く振り返った。


「き、京……ときよちゃん!? お、驚かさないでくれよ!」


「いや、むしろ今の行動にこっちが驚いたんだが……」


『相当テンパってますね』


 二人の言う通り、俊平は何故か勝手に焦っているようだった。見ると、両手を背中に隠している。

 ……ベタな。


「俊平、後ろに何があるの?」


「……ベツニ、ナニモナイアル」


「誰なんだお前は」


 京は突っ込みつつ俊平に詰め寄る。別に怒っているわけではないのだが、端から見るとそういう場面に見えなくもない。


「何でもないから気にすんなって! いやマジで!」


『いっそここまでくるとある意味スゴいですね』


 本当に、嘘が下手な奴だなぁ……。ある意味、可愛い奴。


「おい、しゅんぺ――」


「おーい、ダブル神谷ー! ちょっと来てくれー!」


 再度京が話しかけようとしたとき、ぶっちゃんの爽やかな声が俺たちを呼んだ。

 それにしても、『ダブル神谷』って……。


「まぁいいか。行こう、京」


「しゃーねーな。ぶっちゃーん、ひとまずその呼び方パス!」


 さすがに無視するわけにもいかなかったので、俊平の詰問を諦めることにする。向かう最中、俊平のほっ、というため息が聞こえたような気がした。







 誰もいなくなった教室に、少年が一人佇んでいた。うっすらと日が赤く染まり、窓から差し込み影を描く。

 少年は、机の一つに座っていた。

 ……ふと、教室のドアが開く。


「おっ、来たか……」


 少年は呟き、ドアからぞくぞくと現れた男子の群れに振り返った。いかにも野球部といった坊主頭もいれば小柄で、ともすれば中学生に間違われそうな男子もいる。若干の違和感をその集団は飽和していた。


「待たせたな、俊平」


「よし、じゃあはじめようか」


「あぁ」


 少年、俊平は皆を周りに集めて静かに言った。……そしてしばしの静寂ののち、大きく言った。


「第十二回!!」


 一拍。


「初代高校ロンリーウルフ懇親会ー!!」


 静かな教室に、野太い男達の怒号が木霊(こだま)した。教室の男子たちの目は、心なしか血走っている。

 初代高校ロンリーウルフ懇親会。それは会長である今田俊平を筆頭とした、彼女など必要としない孤高の旅人……という名の年齢=彼女いない歴の生徒たちが集まり、雑談をしたり情報交換を行う会である。要するに女の子についての妄想やらで心の平穏を保つ組織なのである。

 ちなみに、例外を除いて毎週金曜日に行われている。


「コホン。……みんな、よく集まってくれた」


 会長である今田俊平が静かに口を開いた。どことなく偉ぶっているような口調である。


「夏休みが明けて、初めての集会だな」


「結局このメンバーから彼女持ちは出なかったか……」


 少々軽い見た目の男が思い出すように言い、眼鏡男子が追随する。


「いかな夏休みマジックといえども、俺たちでは無理だということか」


 向かいの坊主頭が苦々しく吐き捨てる。


「ちくしょう! 神も仏もいねぇのか!」


 目つきの悪い男子が机を叩きつける。何やら、のっけから負のオーラに包まれている。彼らの背中からは、もはや一種の悲壮感さえもを感じさせるものがある。

 その様子を見て、俊平が高らかに叫んだ。


「安心しろお前ら! そんなお前らのために、今日は朗報がある!!」


「朗報? 何だよやぶから棒に」


「彼女が出来た、とかだったら俺たちは何のためらいもなくお前を呪いの力で冥府に送るぞ」


 明らかに意気消沈している男子たち。俊平の明るい言葉にも覇気のない様子で受け答える。俊平は露骨に嫌そうだ。


「そこは祝福しろ……。まぁいい、彼女が出来たというわけではないんだ」


「そりゃあそうだ。俊平に彼女が出来てたら俺らにもすでに彼女が出来てるはずだしなー」


「はっはっはっはっは!!」


「うるせぇよ!!」


 これ以上ないくらいの爽やかな笑い声をかきけすように俊平が声を荒げる。断りを入れておくと、彼らは仲の良い友人同士である。


「とにかく! お前らにとってもいいことなんだ! 聞け!」


「よし、聞こう」


 男子全員の声がピタリとその一言に収束される。先ほどまでのバラバラだった各々が嘘のようにしっかりと俊平を見据えて姿勢を正している。

 俊平はあえてそこには触れず、切り出した。


「夏休み中、俺こと今田俊平は実は京のはからいによって女子と夏祭りに行ってきた」


 瞬間、そこにいる男子全員の目つきが変わった。


「ちょっと待て! まだ続きがある、自慢話じゃない! だから手に持っているカッターナイフをしまえ!」


 チッ、と舌打ちをして武器をしまう男子たち。ここで、何故そんな物騒なものを携帯しているのかという疑問は抱いてはいけないだろう。人間誰しも何かしら秘密はあるものである。

 皆の殺気がおさまったのを確認してから、俊平は続けた。


「まったく……会長である俺が一人だけ楽しむなんてことをするはずがないだろう? お前らのために、ちゃあんと写真を撮ってきてやったのさ!!」


 バーン、と効果音が付きそうなくらいに力強く突き出した俊平の両手。そこには浴衣姿の艶やかな女子たちの姿が写っている写真があった。


「うぉおおおぅおぉお!?」


 その場にいた俊平を除く男子全員が雄たけびをあげる。それぐらい、浴衣姿の女性の何ともいえない色気は、青少年にとっては魅力溢れるものだったのである。さらに、学年の美人どころともなれば、その感動もひとしおだ。


「これは……俊平! お前のクラスの女子たち!」


「藤川に東堂、西城に南野までいるぞ……。何だこの豪華なラインナップは!?」


「くそっ! お前らのクラスの女の子はレベル高すぎるんだよ!!」


 言上さまざまに騒ぐ男子たち。口では色々と言いつつも、誰しもが写真から視線を一時も離せていないのその状況が、彼らの現状を雄弁に物語っていた。先刻までのお通夜モードとは一変、和気藹々(わきあいあい)とした団欒だんらんへと変わる。


「やっぱり浴衣っていうのは古き良き日本だと思うわけだよ、俺は」


「雰囲気も変わって見えるもんなぁ……。個人的には西城が浴衣似合っててめっちゃ好みなんだが」


「いや、いつもより大人っぽく見える藤川もなかなか……。逆に東堂や南野はそんなに変わらないか?」


「おいおい俺の東堂ディスってんのかテメーは。あの活発そうな雰囲気と相反している清楚な浴衣とのギャップがいいんだろうが。あとあの胸はたまりませんですはい」


「それは南野にも言えることだな。ギャップはないがクールな南野に浴衣は凛とした良さを引き出している。あと誰がオメーの東堂だコラ」


「西城は俺の心の恋人だよ。落ち込んだときには『大丈夫?』ってあの声で心配してくれるんだ」


「リアルに気持ち悪いんだよ」


「お前もな」


「つか俺ら全員な」


「言えてる言えてる! はっはっはっは!!」


 段々とわけのわからないテンションに移行していく男子たち。彼らの平穏はこうして保たれていると思うと、ある種涙ぐましいものがある。身勝手な恋人宣言を乱発して笑いあっている。それ程に写真がもたらした効果は大きいものがあったということでもある。

 ふと、写真をそれまでニヤけ顔で眺めていた坊主頭が、気付いたようにぽつりと言った。


「あれ? ……そういやきよちゃんは?」


 そして、その一言が皮切りとなった。


「ほんとだ、見とれてて気付かなかったけどよく考えるとこの写真1枚もきよちゃんが写ってるのがない」


「そうだよ! 危うく騙されるところだった! 俺らまだきよちゃんの浴衣姿拝んでねーぞ!」


 増えていく怒号。俊平はギクリと、肩を震わせた。


「い、いや実はさ……きよちゃんは残念ながら来てなくて……」


「ウソこけコラー! このメンバーで、しかも京もいてきよちゃんだけ仲間はずれなわけねーだろ!!」


 坊主頭が吠える。


「あー、えっと……実はきよちゃんだけ忘れてて……」


「それもダウトだクソダラー! テレビに出てるそこらのアイドルよりも可愛い、この学校でもダントツトップレベルのきよちゃんをよりにもよって忘れるか!!」


「そうだそうだ! 京でさえ藤川とかの写真の後ろにちっちゃく偶然写ってたりするのに、きよちゃんだけ意図的なぐらいないぞ!!」


 眼鏡男子とアメフト系男子が猛る。


「……きよちゃんの写真だけ、上手く撮れなくて」


「もう突っ込むのさえアホらしいわアホー! どう考えてもありえねえっつってんだろ!!」


 不良系男子が、叫ぶ。俊平はしどろもどろになりながら次の言葉を紡ごうとしているが、どうやら続く言葉がないようだった。男子たちが俊平に詰め寄る。


「こいつ、きよちゃんの写真だけ独り占めする気だ!」


「許せねぇ! きよちゃんは俺らみんなのアイドルだって結成のときに自分で決めたくせに!」


「その動揺ぶりからするに持ってきてはいるんだな!? 寸前で惜しくなったってことか!」


「なんて根性が腐ってやがるんだ! 構うこたぁねえ! みんな、こいつの鞄を奪うぞ!!」


 結託して俊平の周りを取り囲んでいく男子たち。その動きの迅速さはまるで訓練された兵士のようだった。俊平は鞄を腕に抱き込んで叫ぶ。


「お、お前ら本当なら俺が全部独り占めできたのを慈悲で見せてやってるんだぞ!? 少しぐらいの優越権を俺に認めろ!」


「うるせぇ寄越せ!!」


「くっそぅなんて奴らだ! ……あっ、しまった!」


 いくらなんでも多勢に無勢。必死で守っていた鞄はスキを突かれてとうとう男子たちの手に渡ることとなってしまう。俊平は身体を机に投げ出して言う。


「あー、もうちくしょう! いいぜ、たっぷり見ろよ! 俺の特選きよちゃんコレクションを!!」


「言われなくても……、お、これか? よしみんな、あった……ぞ……」


「ふぉおおぉぉおおおお!?」


 鞄からお目当てのものを取り出し、その写真を目にした瞬間……男子は咆哮した。


「どうした!? 一体何が……ふっはぁあぁああぁあ!?」


 続いて写真を覗き込んだ男子もそれにならう。他の男子たちも皆が皆写真のもとに集い、そのフィルムに広がる光景を目の当たりにした。

 1枚目のその写真には皆が望んでいた金髪の少女が写っていた。動き回ったその首筋にはうっすらと汗が滲み、それだけにとどまらず浴衣は少しはだけ、すらっとした鎖骨や胸の辺りが一部露出気味。頬はほんのりと紅潮していて、しなやかな身体の線が浴衣にはよく映える。扇情的な情景に仕上がっていた。


「こ、これは……! 破壊力がヤバい!!」


「エロすぎるだろ……。きよちゃんの控えめな胸も浴衣だともはやメリットでしかないしな」


「おいおい何言ってんだ、そこは前からメリットだろう常識的に考えて……」


「少し動いた後のこの火照った感じが! これは逸品だ……!!」


「こっちのもすげぇぞ。この満面の笑顔がすっげぇ可愛い」


「こっちの微かに見えてるうなじがもう、ね。最高だ」


「まったくだ。こんないい物を隠し通そうとしてたなんて……俊平!!」


「な、なんだよ!!」


「お願いします焼き増ししてください!!」


「…………」


 男子一同、しっかりと頭を下げる。下げられて表情は見えないが、四十五度に折り下げられたその頭から発せられるオーラには、鬼気迫るものを感じさせた。


「あ、あぁ」


 さすがの俊平も、思わず頷いてしまう。


「最初からそういう態度なら良かったんだよお前ら。俺も鬼じゃないからな、しっかりとこれは焼き増しをしてお前らに――」


「……俊平? それにお前ら、まだ残ってたのか?」


 咳払いを一つして、尊大に俊平が言おうとしていたその時、低音の不思議そうな声が教室に響いた。俊平を含め、男子全員が一斉に声のしたドアのほうを振り返る。そこには棒付きアイスをくわえて立っている男の姿があった。


「き、京!? お前こそ何でまだ…………」


「あぁ、ほら。俺らぶっちゃんに呼ばれてただろ? 手伝い頼まれてさ、今終わったとこなんだよ。ついでに何かお礼とか言ってアイスももらっちまった」


 少年、京は軽く笑うと男子の輪に向かって歩き出した。


「で、何やってんだお前ら? こんな大所帯でさ」


「い、いやいや何でもねーよ!? ほんと、何でもない!」


「そうそう、何も隠してなんかねーって! あっ、おい!」


 否定の言葉むなしく、軽々と京は一人の男子から写真をとる。その動作は実に自然で、抵抗を許さぬものだった。


「写真? いったい何の…………ははーん、そういうことか」


 内容を見て京はニカッ、と悪戯っ子のような笑みを浮かべる。怒りはなく、何だか楽しそうだ。

 その様子を見て、男子たちは拍子抜けしてしまう。


「……怒らないのか?」


「怒るって……俺が怒る内容じゃないだろ、これ」


「いやだってきよちゃんだし……」


「うん、お前らにはいつか言おうと思ってたんだけどさ? そのきよ=俺の恋人みたいな思考回路をそろそろ改めないか?」


 男子たちは顔を見合わせる。


「じゃあ……」


「俺がどうこう言えるもんじゃねーよ、同じ男だから気持ちはわかるしな。まぁこんなところで集まってるのは何か不健全のような気はするが」


「おぉ! 心の友よ!」


「さすが京っ! 俺たちに出来ないことを平然とやってのける! そこにシビれる憧れるぅ!!」


「ギリギリだぞお前ら」


 男子たちは大いに喜び歓喜の叫びをあげる。京は変わらず苦笑い。ほっ、と胸を撫で下ろした男子たちに京は付け加えたようにぽそりと言った。


「ただ、さ」


「ん?」


「ただ、さ。俊平……ぶっちゃんに呼ばれて今まで手伝いしてたのって、俺一人じゃないんだよなぁ」


「あ…………」


「おーい、京? 教室で何でそんなに時間かかって――」


 申し訳なさそうにしている京と対照的に、男子たちは顔が真っ青になる。教室に入ってきたその少女はたった今彼らがその話題で盛り上がっていた張本人、神谷きよだったのだ。


「あ、あが、ききき京……」


「すまん」


 震える俊平に、京はただの一言だけ言った。


「あ、俊平……たち。みんなで何してんの?」


「い、いや、男同士の雑談で親交を深めてただけさ!」


 きよの疑問に、俊平がぎこちないながら答える。他の男子もどことなく怪しい素振りが見てとれる。


「その、隠してるのは? そういえばさっきも隠してたような……」


「何でもない! 本当に何でもないから、あっ!? ウソッ!?」


 しっかりと握っていた俊平の手から、まるで何者かに弾かれたかのように写真が滑り落ちる。


「おい、やりすぎだ」


 小さく呟いた京の言葉は誰に届くこともなく、その写真をいち早くきよが拾う。


「きよちゃん見ちゃダメだってー!」


 俊平の涙ながらの制止も意味なく、きよは写真を凝視した。


「…………!!」


 そして、見る見るうちに顔が赤くなっていく。怒りやら羞恥やら、そういったものが混ぜ合わさって言葉にならない声さえもらし、身体を震わせている。そのさまは、なるほど普段なら大変可愛らしいかもしれない。だがしかし、今のこの状況にとっては危険信号の一つでしかないのである。


「…………」


「…………あ、あの、きよちゃん?」


 しばし静寂が続き、たまらず俊平が声をかける。するときよは顔を上げた。……満面の、笑顔で。


「……今田くん?」


「あ、あの。なんで西城みたいな感じになってんのかなー、なんて。はは、はは……」


「今田くん?」


「はいっ!! 何でございましょうか!!」


「ちょっと、こっち来てもらえるかな?」


「…………ハイ、オオセノトオリニ」


 空気が凍ったまま、きよが俊平を連れて教室を出て行く。俊平の顔からは生気を感じられない。


「生きて帰れよ……俊平」


 京を含む男子全員が、静かに祈りを捧げた。


 後日、俊平コレクションの1枚目だけが何故か盗まれたかのように消えるという事件が起こったという。

後書き劇場

第四十四回「男心と夏の空」


どうも、作者です。初めにまずちょっと真面目なことを。

いらねえよってかたがほとんどだと思いますが一応報告しておきます。

作者、被災しましたが東北の中でも被害が少ないところだったので甚大な被害はありませんでした。

というわけで更新が遅かったのはそのせいではないです。はいすいません。こんな奴なんです。


以上、真面目タイム終わり。





俺「さて始まりました! 第一回! エセ質問コーナー! パチパチパチ~」


京「は? え? 何これ?」


女神『とうとう気が狂いましたか?』


俺「違いますよ! 前回何かやるって言っちゃった手前、無い知恵を絞って無理やり企画をやることにしたんですよ!(読者の皆様にも楽しんでもらうために、後書きで簡単な企画をやることにしたんですよ!)」


きよ「本音と建前が逆なんだけど」


女神『第一それにしてもタイトルがおかしいじゃないですか。何です、エセ質問コーナーって?』


俺「よくぞ聞いてくれました!」


女神『いや別に興味は無いですけど……』


俺「よくぞ聞いてくれました!」


京「わかった、聞いてやるからさっさと話せ」


俺「はい! えっとですね、読者の方々が疑問に思っていることを我々がこの場をお借りして答えていく、という企画です!」


きよ「要するに、普通の質問コーナーってこと?」


女神『エセは何なんですか、エセは』


俺「ふっふっふ。普通の質問コーナーと違うところはですね! 何とこのコーナー、質問も私たちからなんです!」


京「ただの自演じゃねーか」


俺「まぁまぁそんなこと言わずに……はい、きよさん。このハガキ読んで」


きよ「(これもこいつが手作りしたのかと思うと何かヤダなぁ……)えーっと、女神さんはよくいなくなることがありますが、いっつも何をしてるんですか? 教えてください……だって」


京「まぁ確かに気にはなるな」


俺「そうですよ! そこんところどうなんですか、女神さん!! さぁ!!」


女神『秘密です』


俺「それじゃこのコーナー意味ないじゃないですか……」


きよ「そもそもこのコーナー自体無理があると思うんだけど」


俺「いいんです! もう、次いきましょう! はい京さん、これ!」


京「へーへー。何々……今回のお話で、結局きよさんはあの写真を処分してしまったんですか? だとよ、きよ」


きよ「……してない」


女神『え? してないんですか?』


京「俺もしたもんだとばっかり」


俺「何でですか?」


きよ「自分がそういう対象っていうのは考えるとやっぱり嫌っちゃ嫌だけど……俺も男だから気持ちはわかるし。そこまでしたら可哀想かなって。……勝手に撮ったり見せてたりしたことについては俊平をこってりしぼったけど」


俺「なるほど……」


女神『きよは優しいですね~。全部破いちゃえば良かったのに』


京「そんなこと言ってる女神さんよ。少し俺からの疑問もあるんだが?」


俺「お? 何ですか? 言っちゃってください」


京「最後の行の、きよの1枚目の写真が消えたのって……お前ちゃっかり取ったよな?」


女神『……何のことですか?』


京「テメーコラこっち向け」


女神『まあまあほらいいじゃないですかそんなこと! もうそろそろ終わる時間ですよ』


俺「誤魔化しましたね」


きよ「女神いつのまに……」


京「抜け目のない奴……」


女神『もし本当に疑問があったら、私たちで答えられる範囲で答えますよ! 貴方の疑問、待ってまーす!!』


京「何か変な〆しだしたぞ!」


俺「ま、いいですか。今回はここまでってことで」


きよ「じ、次回もまた見てくださいねー!」

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