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転換32「祭りに金魚すくいは欠かせない」

オッスオラ作者! 3年生になるとこんなにテストが多いんだね!

…………orz


何か書いてるとどんどん話が膨らんで、前より一話ごとの長さがアップしているような気がします。反動ですかね? 嬉しい悲鳴ととらえていいのかな……?


まぁ、その分更新速度は遅くなるんだけどね!(死)


ではでは、本編へどうぞ~♪

「うーん。夏っぽいものって言ってもなぁ……普通のもんしかねえなぁ」


 先頭を歩く黒髪の和服男子がぼやく。言うまでもないが、京だ。その少し後ろからは俺、そして見えないがその隣に女神がついて歩いていた。京は何か真剣に『夏らしいもの』を探しているようだが、正直俺は今それどころではなかった。もっと別のことが、頭の中を占領していたから。


 そう、先ほど京が口にした『襲う』という言葉だ。


 京にその気があってあんなことを言ったのではないということは、もうわかっている。場を和ますための、あるいは笑わせるための冗談だったのだろう。では何故俺がこんなにも気にしているかというと。……俺はその京の冗談を、間を置かずに理解していなくてはならなかったからだ。

 さっきの俺はその冗談を聞いたあと、冗談だと思えなかった。一瞬、その言葉の意味するところを本気で想像してしまったのだ。京が俺を襲う。つまりは俺をせ、性的な目で見てる、ということを! こともあろうか俺はそれを真に受けて想像してしまったのだ! 恥ずかしい。恥ずかしいことこの上ない。だって、そうだろ?

 たとえば、仮に男として女の子に対して何かスケベな妄想をしたとしよう。とても少年誌では言えないようなスケベな妄想でもあったとしよう。……それなら俺はそこまで落ち込まなかったはずだ。だって、それは男として少なからずは誰にでもあるものではないかという言い訳があるから。

 だが俺のした妄想は自分が受け身である、さっきの例とは全く逆の妄想だったのだ。女でもない(身体だけは女だが)、この俺が。これは恥ずかしいにもほどがある。


 きっと、女神だって俺がそんな変態的な妄想をしたのがわかったからあれほど京に食って掛かったんだろう。京だってそうだ。俺の反応を見た後の京は、明らかに何か気付いた感じだった。……バカみたいだ。実に、バカみたいだ。京だって、『何こいつ真に受けてるんだ?』って思ったに違いない。


「……きよ?」


 だいたい、京が俺に対してそんなやましい気持ちを持ってるわけないってことぐらいわかってるはずだろ!? どうして俺のバカは真っ赤になって動揺したんだ! これじゃ、俊平のことを偉そうに言えないじゃないか……。


「おーい! きよ!?」


「え!? ……な、何?」


 そこまで思考を回転させたところで、呼ばれていたことに気付く。京がこちらをのぞきこんでいた。


「何ぼーっとしてんだよ。夏らしいもの探すんだろ? まだ時間があるとはいえ、考えながらいかないと」


「う、うん。悪い……」


 その様相はいつもとまったく変わらなく、やっぱり俺が慌てすぎただけなんだなと思い改める。……そうだよ、くだらないこと考えてないでもっと祭りを楽しまなきゃ。

 ふと、俺の肩を誰かの手が叩く。それに反応して右を向くと、怒ったような顔をしている女神が俺をにらんでいた。


『……きよ? 今きよが何を考えていたか、手にとるようにわかりますよ』


「え!?」


「どうした? 二人とも」


「い、いや、なんでもない」


 訝しげにこちらを振り返った京にあわてて言い返す。今は周りにも人がたくさんいるし、大きな声はあまり出さないほうがいい。……女神は見えないからな。

 俺は歩きながらに女神の様子をうかがってみるが、女神の表情は依然晴れない。


「……なぁ、女神」


『わかりますよ。さっきの京とのいざこざですよね?』


「ん、まぁ……そうっちゃそうなんだけど」


 前を行く京に聞こえないように小声で話す。さっきの今で考え込んでたら、そりゃ女神も気付くか。


「恥ずかしいよな、まったく。あんなの冗談に決まってるのにさ……」


『いいえ、きよはそう考えていたほうがいいです。あんまり無防備だと私も襲っちゃうかもしれませんよ?』


 自嘲気味に言った俺の言葉に、女神はイタズラっぽく微笑んだ。俺は思わず苦笑する。


「またそんな冗談言って……」


 そう言うと、女神は一瞬呆れたような顔をした。そしてまた笑顔に戻り、俺をいきなり抱きすくめる。


『……冗談だと、思います?』


「……女神?」


 妖艶に笑う女神を俺は不思議がる。だが、そんな余裕は次の瞬間にもろくもかき消えることとなった。


「え? ちょ、女神……!?」


『きよってすっごい可愛いし、いい子だし。女の私でも変な気持ちになっちゃうこともあると思いますよ?』


 女神は先ほどまでとまったく変わらぬ様子で微笑んでいる。だが、そのしなやかな手はいまや俺の浴衣の内側を侵食し、動き回っている。右手のヒヤッとした感触が嫌でも俺の脳を覚醒させた。一気に熱が集まる。


『そのうえ自分の容姿に対する自覚はないし、ちょっと親しくなると誰とでもすぐにスキだらけになりますし、ね』


「あっ、やめ、ろ……」


『別にいいんですよ? このまま続けても。私はあなたたち以外の人には見えませんし、人ごみでも関係ないですから』


 笑顔のまま手を下のほうに伸ばす女神に、俺は初めて身の危険を感じる。その間ももう片方の手は俺の身体をまさぐっていて、俺はたまらずしゃがみこんだ。


「め、女神。お願いだから、やめ……」


「おい、大丈夫かきよ!? どっか具合でも悪いのか!?」


 不意に京の言葉が聞こえて、状況に気付く。さっきから挙動不審な俺に、少なからず周りからの注目が集まっているようだった。


「おい女神! こんなところでセクハラなんかしてんじゃねぇよ!」


 もう一度、今度はかなりのひそひそ声で叫ぶ京。どうやら、さっきのは俺をフォローするための言葉らしい。……それはそうだ、京には女神が見えてるんだから。

 すでに女神の手は離れていて、ほどなく俺はゆっくりと立ち上がる。まだ呼吸が荒い。動悸はするし、顔が熱を持ったかのように熱い。

 俺がこうなっている元凶である金髪美人の神様は、俺の視線に気付くと俺の耳元に口を当てて囁いた。


『……ね? そうやって安心しきってると、今のような目に突然あうかもしれないんですよ』


「な……なんのこと?」


『確かにさっきの京の言葉は冗談だったかもしれません。でも、いつも、誰からの言葉でもそうだと言い切れますか? もしかしたらということもあるし、魔がさすなんて言葉もあります。……きよはもうちょっと、そういう自覚を持ったほうがいいってことです。今みたいに途中でやめてくれないんですから』


「う……」


「お前ら……何の話?」


『ちょっと、色々です』


 要領を得ない京を女神は軽く流すが、俺は少しへこんだ。……実体験で、そんなことが今まであったような気もするからだ。流されやすいとでもいうのだろうか。


『まったくぅ。こんな長ゼリフ、第一話以来ですよ』


「おい、さりげなくメタ発言すんな」


 ……今の二人の言葉は無視するとして、だ。女神の言いたいことは、なんとなく分かったような気がする。なんとなくだけど。


「……けどさ、女神」


『何ですか? きよ』


「わざわざ、い、今みたいなことしなくても……口で言ってくれよ」


「そうだな。ってかさっきのセクハラは訴えられたら負けるレベルだったぞ」


 歩みを再開して、話し始める。京も同調してくれたのだが、女神はにべもなく言い放った。


『口で言ってもきよは真に受けないでしょうが』


「……ごめんなさい」


 正論だ。今まで朱菜たちからも言われたような気もするが、全然真面目に考えていなかった。京はわかったようなわからなかったような顔をして話を聞いている。


『……あとは』


 そう思っていると、女神が顔を下げてぽつりと呟く。まだ何かあるのかと俺たちは言葉を待つ。すると女神は、気持ち悪いぐらいに緩みまくった恍惚の表情で、心底嬉しそうに言ってのけた。


『役得ってものですよ~! きよのお姉さん的存在でもある私がきよを優しくさとす。その過程での私へのご褒美、みたいな!』


「!?」


『いやぁ、それにしてもきよをさとすためとはいえ、危うく本気になるところでした~。顔を真っ赤にして目を潤ませて必死で初めての感覚に耐えようとしているきよがあまりにもエロティックだし、身体はどこもかしこも柔らかくてフニャフニャしてるし、いいにおいだし……』


「こ、この……」


 わなわなと身体が震え、恥ずかしさとはまた別の意味で顔が真っ赤になる。


「この変態セクハラオヤジ!!」


 俺はそのまま感情のままに、人目もはばからず叫んだ。











「……死にたい。鬱だ、死にたい」


「ごめん。本ッ当にごめん」


『くすくす、あー面白かった!』


「笑い事じゃねぇよこの野郎!!」


 あれから数分、俺たちはいまだに屋台が建ち並ぶ人ごみの中を歩いていた。

 負のオーラを身体から出しまくってネガティヴワードを吐き出しているのは京だ。なぜかというと、勘の良い人ならすでにお分かりだと思う。

 さっき俺は群衆の中で、『この変態セクハラオヤジ!!』、と言ったのだ。……俺たち以外には見えることがない、女神に。つまり、他の人たちからは真っ赤になった俺が横にいる京に向かってその言葉を浴びせたという光景に見えたわけだ。後は言わずもがなである。


『よかったですねぇ京。これでようやく男として見られることができますよ……ぷくくっ!』


「危険人物としてだけどな! そしてお前は俺にあやまるべきだと思うがなぁ!!」


『ごめんくさい』


「うわっ、古……」


『こりゃまたくさい?』


「いいよ続けなくても! ……はぁ、ったくしゃあねえなぁ」


 いつものノリで軽口をたたく女神に、京は最初こそ怒鳴りはすれどもしまいにはもはやあきらめモードで苦笑してた。……これも、慣れかな?


「まぁ、バタバタしたけど、とりあえず祭りを楽しもうぜ。ほら、あそこに金魚すくいがある」


 とりあえず、場の空気を変える意味も込めて提案してみることにする。


「そうだな、結局まだ何もやってないしな」


『行ってみましょうか』


 どうやら、二人とも納得してくれたようだった。俺たちは気を取り直して、水色の布に赤の文字で『金魚すくい』と書かれた屋台へと向かう。


「いらっしゃい。思いやり金魚すくい、一回50円だよ?」


 声を聞いた瞬間、俺たちは凍りついた。ちょっと待ってくれ、と言いたい気分だ。ツッコミどころが多すぎる。思考が停止する。金魚に向いていた視線を上にあげ、店主を見る。


 ヤツだった。


「んん? 何だ、京ときよじゃないか。こんなところで会うなんて奇遇だねぇ。思いやり金魚すくい、たくさんやっていってくれよ?」


「なななななんなんでおまおまままままっまま」


『バグっちゃいましたよ、この男』


「落ち着け、京!」


 あまりのショッキングな出来事に京は錯乱しているようだった。もちろん、驚いているのは俺もだ。……何気に、いつのまにか俺まで呼び捨てにされてるし。


「何でお前がここにいるんだッ!!」


 ようやく復活したらしい。京ががなりたてるが、やはりケンちゃんはいつもどおりそれすら意に介さない。


「なんでって……ずいぶんとご挨拶だなぁ? 祭りでお店を開いているからに決まっているじゃないか」


「いや、そりゃそうだけどっ……! きよ、違うところ行こうぜ?」


「おい、京。少し大人気ないぞ。ケンちゃん少なくとも今回は何もしてないじゃないか」


『そうですよ。……それに毎回毎回そんなにつっかかっていっていると小物みたいです』


「う、ぐっ……!」


 俺たち二人が畳みかけるように言葉を浴びせると、京は核心を突かれたように黙り込む。京の気持ちは確かにわからなくもないが、ずっとあんな態度のままでもいけないと思うし。

 するとケンちゃんは、驚いたように喉を鳴らした。


「俺をかばってくれたのかい? ん~、惚れちゃいそうだねぇ」


「安い口説き文句だな」


 言ってから、男口調のままだったことに気付く。普段はちゃんと使い分けれているはずなのに。……京の言うように、何か調子が狂うというのはあるかもしれない。そう思ってケンちゃんの顔を覗いてみると、先ほどの俺の言葉に冗談交じりで残念がっている姿が見えた。やっぱり変なやつだ。とはいえ、金魚すくいをやるぶんには何の問題もないだろう。


「さ、京。やるよ?」


「まぁ……やるか。っていうか、50円? 異様に安いな……」


『そうですねぇ。だいたいお祭りの屋台っていったらどれも200円は越えますよね』


 今度は意識して柔らかい口調になおして呼びかける。そして、続く二人の言葉を聞いて確かにと思う。


「簡単なことさ。何回も楽しんでもらいたいから値段を下げてるんだよ」


「変なやつだな。……それじゃ売り上げはどうなるんだよ」


「んー、今日はお祭りだよ? 売り上げよりも楽しんだほうがいいじゃないか」


「…………」


 ケンちゃんはさも当然であるかのように言った。京の問いにも、むしろ逆に疑問顔をして。

 これには俺たち三人も黙った。……何というか、あっけにとられた感じ。特大に変なやつだ。そして、底抜けのお人よしだ。


「へっ、そうかよ。じゃあ遠慮なくやらせてもらうぜ」


「照れ隠し? 京」


『今流行のツンデレ狙いですか?』


「違うわ!!」


 ぷっ、と吹き出す俺と女神。意固地になっている京はほっておいて、そろそろやることにしよう。


「それじゃあ、とりあえず一回」


「はいはい。お金は思いやり貯金箱に入れてくれよ?」


「何でも『思いやり』つけりゃいいってもんじゃねーぞ」


『24時間テレビの募金にありそうな名前ですね……』


 そんなちょっとした漫才のようなやりとりを終え、ケンちゃんから網を一つ渡される。心なしか、普通のそれよりもどこか丈夫な気さえした。


「よ~し……!」


『きよ、頑張ってください~』


 女神の声援を背に受け、俺は水面をじっと見つめて構える。右の手には網、左の手には赤いおわん。……ちょっとした職人気分だ。

 さらに集中する。四角形のプールの中には様々な種類の金魚が見えた。赤いもの、黒いもの、赤白のもの、デメキン。

 様子もそれぞれ。尾びれを盛んに動かし泳いでいるもの、止まって休んでいるもの、隅に集まっているもの。


「ん~、いい集中力だ」


「金魚すくいとは思えない集中力だぜ……」


 俺はやがて、一匹の金魚に狙いを定めた。弱っているわけでもなく、何故か隅のほうでぐるぐると小さく回っている赤の金魚。……そうと決まれば、後は距離をゆっくり詰めていくのみだ。俺はスナイイパーよろしく気配を殺して、ジリジリと忍び寄る。

 そして、獲物が射程圏内に入った。


「はっ!」


 かけ声とともに網を勢いよくかきいれ、獲物の下から一気にすくい上げる。寸分の狂いもない、最高のタイミング……。

 いける!


「あっ!」


 そう思ったとき、赤の身体がひれをはためかせた。俊敏な動きで網から逃れようとするそいつを俺は急いでおわんへと放ろうとする。プライドを賭け戦い。突然、緊張の糸が切れたように、濡れそぼった網が破れた。弾けるように一瞬でぽっかりと穴をあける。……勝負は、すでに決していた。


「あーあ……」


 先ほどまで激闘を繰り広げた小さな金魚は、今や悠々としてプールの中を泳ぎまわっている。……と、今まで何かのバトル漫画のような雰囲気を無駄に醸し出していたが、端的に言うと失敗しただけなのである。


「結構自信あったんだけどなぁ」


 思わずため息をつく。値段が安いとはいえ、悔しさは残る。


「いや、普通に惜しかったと思うぜ」


「んん、そうだなぁ? 金魚との対話が足りなかったのが敗因だねぇ」


『こいつは無視するとして、ちょっとおわんへうつすのが遅かったですね』


 三人が口々に俺に言葉をかける。今自分で思い返してみると、どこがダメだったのかはハッキリと見えてくるのだ。ケンちゃんは無視するとして、女神の言うとおりだったかもしれない。


「よっしゃ、次は俺がやるぜ」


「失敗、失敗!」


『失敗、失敗!!』


「どやかましい!!」


 俺と女神の野次を受け、京は果敢に網とおわんを受け取った。……ただ道具をもらっただけなので、別にかっこよくはない。


「見てろよお前ら……」


「もう見てるよ」


『黙って集中したらどうですか』


「そういうときは素直に『うん』って言うんだよ」


 ああいえばこういうというのは正にこのことだ。俺と女神はそれをわかってやっているのだから、京にとってはなおさらたちが悪いだろう。……まったく、からかいがいのあるやつだ。

 そんなこんなを気にもせず、京は集中を高めていく。黒の両眼はじっと水面を見つめている。……真剣な表情をすると、結構かっこいいんだ。


『きよ? 顔が赤いですよ』


「えっ、ち、違う!」


 女神に顔を覗き込まれ、俺はあられもなく狼狽する。違う、今のは……何かの間違いだ。そう、別に俺の顔がかっこいいとかじゃなくて、キリッとした雰囲気がちょっとかっこいいと思っただけで。俺は自分の顔をかっこいいとか言うナルシストじゃない。

 思い直し、俺が視線を元に戻したとき、勝負はすでに佳境に入っていた。


「よっ……と」


「んん、いい腕だ」


 京は手際よく黒い金魚をすくい上げ、暴れる暇も与えずにおわんへとうつした。その鮮やかすぎる一連の動作には一切の無駄がなく、もちろん網も破れていたりなどしない。


「そ、そんな簡単に……」


『京のくせに……やりますね』


 これ見よがしに得意顔をしてみせる京に、俺と女神はことごとく驚愕する。赤いおわんの中では金魚さえもが俺を小馬鹿にしているかのように、泳いで一回転してみせる。……何だか、ものすごくムカつく。


「俺に出来なかったのに何で京が……」


「ん? 何か言いましたかな~? 後一歩のところで惜しくも金魚を逃してしまった神谷きよさんや」


 思わずつぶやいた俺のその言葉を、京は聞き逃さなかった。嫌味ったらしく笑いかけ、『逃してしまった』の部分をやたらと強調してくる。口の端が憎たらしくつりあがっていて、ウザいことこのうえない。


「気にすることはないさ、きよ」


 ケンちゃんが慰めの言葉をかけてくるが、俺の拳の震えは止まる様子を見せない。そして、それは女神も同じようであった。


『調子に乗るんじゃないですこのヌケサクがぁーっ!! きよ、取って取って取りまくってあのイヤミヘタレマンに吠え面かかしてやりますよ!!』


「うん! 京のアホなんかに負けるか! ばーかばーか!!」


「HAHAHAHAHA! 何とでも言いたまえ。負け犬の遠吠えが聞こえるわぁ!!」


「うんうん。……楽しんでくれて何より、かな?」


 俺は余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の京に意地で宣戦布告を叩きつけ、また男口調に戻ってケンちゃんに50円を投げつけるのだった。 

後書き劇場

第三十九回「そんな毎日」


きよ「なー、京」


京「ん? どうしたよきよ」


きよ「客観的心理の存在と知徳合一を唱え、『無知の知』を主張したアテネの哲学者」


京「は? ……なんだよ、いきなり」


きよ「問題だよ、問題。制限時間は一分」


京「……わからん」


きよ「諦めが早いなー。じゃあはい! 女神さん、答えは!?」


女神『ソクラテス~!』


きよ「ピンポンピンポーン。京ダメだな~」


女神『ちなみに、その弟子がプラトンですよ』


京「いや知らねーけど。……いきなり何なんだ」


きよ「この転換32が投稿されたつい二日前に作者が受けた世界史のテストの内容の、一部」


京「…………あの、俺にどう反応しろと?」


きよ「何言ってんだよ。俺たちもそろそろテストだろ? いちおう勉強しとこうと思ってさ」


女神『その通りですよ。学生の本分は勉強なんですから!』


京「学校は勉強よりも大事なことを学ぶ場所だ(キリッ」


きよ「あはははは」


女神『はははははははは』


京「って何だこの不快な効果音は!? ええい笑うなお前ら!」


きよ「あー、笑った笑った」


京「笑うなというのに。ったく……何なんだよいったい」


きよ「いやほら、最近京で遊んでなかったからさ」


女神『そうそう、京“で”遊んでませんでしたから~』


京「おい待てやそこの金髪二人組」


女神『何のことですか~?』


きよ「やっぱ定期的に触れ合っておかないと。俺たち同士みたいなもんなんだからさ」


京「お前遊ぶとか言ってたじゃねぇか……。それならこっちにだって考えがあるぞ」


きよ「ん? 何?」


京「こうするッ!!」


きよ「へ? うぁあああっ!?」


女神『あっ、こら! 何やってるんですかヘタレの分際で私のきよに!!』


京「へっへっへ。ここは本編じゃあないからな。少しぐらいはっちゃけたことしたってお咎めはなしだぜ。さて、きよ。謝罪しろぉおおおおお!!」


きよ「ちょちょちょ、あっ、おまどこ触って……うにゃぁああん」


女神『あぁっ! きよがかつて一回も出したことがないような甘い声を出しています! 読者のみんな、何をしているかは各自の妄s……想像にお任せしますよ! こらー京! 私も混ぜなさーい!!』


京「そこは助けろよ」


きよ「女神のアホンダラー! ふひぁっ、ごめ、ごめんってばぁあああ」






テストが終わってたまったストレスを発散したら何故かこうなった。どうしてこうなった……。



きよ「お前の仕業かぁああぁぁああああッッ!!」


俺「ぐごっふぅ!!」


きよ「殺す殺す殺す! こっろぉおおおおす!!」


俺「ひぃっ、まさかのマウントポジション!? ロープロープゥ!!」




京「じゃ、作者ときよが取り込み中なので俺らが締めるぞー」


女神『憑き物がとれたような晴れやかな表情してやがります……』


京「何か言ったか?(満面の笑顔)」


女神『…………もう、どうでもいいです』


京「それじゃ! 御意見・御感想いつでもお待ちしております!」


女神『また次のお話で会いましょう! 以上、後書き劇場でした!』




俺「タンマタンマタンマ! 関節技サブミッションはやばいって、やばいってぇえぇえええええ!!」

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