転換28「好き、嫌い、好き?」
はいはいどーも作者っす!
更新が遅い! 質が落ちた! 何か個人的に作者がムカつく!!
色々あるとは思いますが、この作品でよければ今回も付き合ってやってください。
では、どうぞ本編へお進みくださいっ!
突然だが、俺の名前は神谷京。ごく普通の男子高校生、まぁもう言わなくてもわかっているとは思うが。
知っての通り、俺は『神谷京』と『神谷きよ』に分離した。男と、女になったのだ。俺が男で女がきよで、それぞれがそれぞれになった。最初は、同じ存在だった。それは一人だった頃のことを言っているのではなく、二人になって、それでも心が同じだったときのことで。このままでは色々と大変そうだなと、ぼんやり俺は思っていたんだ。
実際、それからは大変だった。弊害もあったし、不慣れが原因で様々な問題も起こした。でも俺たちは俺たちなりに、他の人たちの助けも借りながらでもそれを認め、享受していた。
苦難の道、とまで言うつもりは毛頭ないが、互いに互いが同じにならないように努力してきたのだ。
そして今、俺は『神谷京と神谷きよは別人だ』とはっきり言い切ることが出来る。名前にして表記してみると当然のことのように思えるが、俺たちにとっては意味が違う、重要なことだ。もちろんこれは、別に俺ときよの仲が疎遠になったという意味ではない。口にするとかなり恥ずかしいが、同じだったぶん心は通じていると思うし、まだ似ている部分だってある。
それでも、少しずつ。俺たちは違う人間になりつつある。そう、違う人間になっていかなければならない。それが理想であり、今それに向かっていけているのだ。
……だが。ここで新たな弊害が発生しようとは、俺も夢にも思わなかった。
「うわっ、またやられちゃった~」
俺の部屋のテレビをつけテレビゲームをし、コントローラーを持って嘆く子供。行儀良く綺麗に切りそろえられた黒髪が目に映る。俺は自分のベッドに座り込んで、静かにそれを見ている。
「浩人、元気だな……」
「何、どしたの? 京兄」
俺が何気なく発した言葉に、怪訝そうな顔をする。
そう、こいつの名前は高屋浩人。母さんの友人の息子で、初めて会ったときは猫をかぶっていた生意気なガキンチョだった。女神のおかげで今は反省し、何が気に入ったのか時々こうして一人で遊びに来ているのだ。
まぁ、笑顔がうさんくさい部類に入る内の一人だ。……他が誰かは言わないが。
「京兄、ずばり! その溜息は恋わずらいだね!?」
「……何言ってんだ、お前」
ゲームを止め俺の隣に座り込み、浩人は指を突きつけて言う。知らぬ間に溜息が出ていたのは気が付かなかったが、……恋わずらいなんて何でその歳で知ってるんだよ。俺は浩人の発言に、今度は意識的に溜息をついてやった。浩人はそれにムッと頬を膨らませ、半ば叫ぶようにして言った。
「京兄、きよ姉が好きなんでしょ?」
「なっ!? んなわけないだろ!!」
深い意図もないだろう突発的な発言。俺は不覚にも若干動揺する。いや、若干ではないのかもしれない。ニヤついている浩人を見る限り、それは浩人にも伝わっているようなのだから。
「……本当は好きなんでしょ?」
「違うっての! どこのエロ親父だ、お前は!!」
口元に手をあててムカつく笑みを浮かべる浩人に、俺は叫び、激しく否定する。 そうだ、好きなはずがない。
いや、別に好きは好きだ。ただ、浩人の言う意味の『好き』という感情は持っていない。持っていない、はずだ。……そんな感情、持つこと自体間違っている。
「……別に、好きじゃない」
「ふ~ん」
自戒、という言葉が一瞬脳裏をよぎり、それを追い出す意味もこめてもう一度口にする。合わせて、目も閉じる。浩人はそれに納得したのかしてないのかよくわからない言葉を口にし、次いで俺に言った。
「でも、きよ姉と何かあったんだよね? 京兄さっきからずっと考えごとしてたもん」
「うっ……」
図星だった。確かに俺はさっきからあのことを考え込んでいた。覚えているだろうか、そう、海へ行ったときのことだ。
あの時、俺ときよはまるで漫画の中の出来事のような経験をした。……肌と肌で暖め合うという、貴重すぎる経験を。その時の感覚は、今でも鮮明に思い出せる。
このまま死ぬのではないか、と思うぐらいの熱い体温、直に伝わる相手の鼓動。そして何より、自分とは全く異なる、柔らかい身体。……俺の勘違いかもしれないが、きよも同じことを感じていたように思う。
あのままの状態だったら一体どうなっていたのだろうかと、今更ながら思う。お互いに正常な思考が働いていなかった折、何が起こっても不思議ではない。女神が来てくれたのは、幸運だと言えよう。
不本意ながら、思う。俺はあの時、きよに恋愛感情に似たようなものを抱いていたのではないだろうか、と。実際、あの時のきよは可愛かったと思う。元が男だと知っている俺でさえそう感じるくらいなのだ。俊平だったら、きっと鼻血ものだろう。
だけど、そう考えれば考えるほど、俺はまた良心の呵責に襲われるわけなのだ。……堂々巡りと言われるかもしれないが、感情は正直だ。
そんな風にまた考え込んでしまった俺を見て、浩人がやれやれといった風に肩をすくめる。……お前、本当に小学生か?
「……浩人、来てるのー?」
と、その時。部屋のドアが静かに開き、きよ、次いで女神が部屋の中に入ってくる。まぁ、恐らく玄関の靴を見たのだろう。浩人はそれを認めると、両手を広げてきよへダッシュする。
「きよ姉、お帰りー!」
『だぁかぁら、抱き付くなってクソガキ』
そして、笑顔の女神の足にやはり阻まれる。前は顔面スタンプだったのだが、今日は脳天踵落としだった(当社比六割威力減)。浩人はカエルのような短い呻きをあげてうつ伏せに床に倒れ、きよは苦笑を浮かべる。
俺はそんな浩人に駆け寄り、頭をポンポンと叩いて言う。
「懲りないな、お前も」
「つっぱることが男のたった一つの勲章って言うでしょ?」
「今のは別につっぱってねぇ」
「ノリが悪いなぁ。……まぁ、人間素直なのが一番なんだよ」
自分でも頭をさすりながら、ジト目で言ってくる浩人。それは果たして、誰に向けられたものなのか。気のせいか、浩人がこちらを見てニヤリと笑った気がする。俺はばつが悪くなって、右手で頭をぽりぽりと掻いた。
ふいに、浩人がまたいつものうさんくさい笑顔に戻り、言った。
「綺麗なお姉さんに踏まれるのも、それはそれでいいかも……」
『ただの変態じゃないですか』
「頼むから健やかに成長してくれよ……」
「あはは……」
えへへ、と屈託なく笑う浩人。だが言っていることは、色々と曲がりまくっている。
……だからこいつ、本当に小学生か?
俺は倒れている笑顔の浩人を見下ろしながら、もう一度そう思った。
後書き劇場
第三十二回「死んでも死にきれない」
どうも、作者でございます。いやー、テストが終わったと思ったらまたテストテスト……。本当に、高校生っていうのはテスト三昧なんですねぇorz
まぁ、大人になれば『学生の頃は気楽で良かった』とか言う人がほとんどなんでしょうが。
……と、愚痴になってしまいました!
なんですかねー、最近思うんですが……。作品って何でも長く続いてくると、雰囲気が変わったりすることってありませんかね。『あー、何か遠くに行ってしまった……』的な、こう、何かが。
最近、自分の作品もそうなっているような気がしてやまないんですが(笑)
俺「昔のほうが良かった、って言われないように頑張らないといけないよなぁ……」
女神『はぁ、珍しくまともなこと言うじゃないですか』
京「それはお前の頑張り次第だな」
きよ「まぁ、とりあえずこんな作品でも見てくれている方々がいるだけでも、十分ありがたいことだぞ?」
俺「そうっすね。それは本当に、ありがとうございます!」
三人『…………』
俺「ん?」
きよ「今回は、ボケなしなんだ……」
俺「あ、いや、すんません……」
こほん! ……というわけでね。これだけは本当にうそでも何でもないことですよ。こんなダメ作者を勇気付け、励ましてくれる読者様がいること。もちろん世に広く出回っているプロの方の作品に比べれば少ないですが、それでも温かい感想をくれる方々がいること。
いつも、ありがとうございます。
どうぞ、これからも『俺が男で女も俺で』をよろしくお願いいたします!
それでは、御意見、御感想随時お待ちしております!
以上、作者からでした!!