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転換24「夏だ! 太陽だ! 夏休みだ!!」

どうも、作者です。


えー、今回は後書きで重要なことを言っておりますので、見て頂けると嬉しいです。


では、本編へどうぞ!

「じゃあみんな! 学生として節度ある夏休みを過ごすんだぞ!!」


 ジリジリと太陽が照りつける、夏真っ盛り。ぶっちゃんの声が暑苦しい教室に響き渡る。半袖のワイシャツを着て汗をダラダラと流しているのにも関わらず、その笑顔は相変わらず爽やかで。俺はうだるように熱を持った頭を小さく横に振った。

 ……暑すぎる。俺は素直に、そう思った。

 夏が暑いのは仕方のないことだとはいえ、やっぱり暑いものは暑いのだ。周りを見渡してみたって、みんな同じように暑さに顔を歪ませていた。俺はシャツの第二ボタンまでをはだけさせた状態で、内側をはためかせた。この季節なら誰もがやることではあるが、あまり涼しくならないこともまた、誰もが知っていることであろう。

 いっそ脱ぎ捨てたい気分だ。汗でベタベタと肌に貼り付いてきて、気持ち悪いことこの上ない。取り敢えず日直がかけた覇気のない号令に俺は従い、起立した。


「さようならぁ……」


「さようなら!! ……みんな、やる気出せ?」


 最早死んだような挨拶に、ぶっちゃんが苦笑いしながら言った。それが終わると同時に、みんなが怠そうに教室を後にする。俺はというと、机に突っ伏したままであった。


「きよ、帰るぞー……って、ダレてんなー」


 荷物を持って俺の席までやってきた京が、軽く笑いながら言う。その顔には当然汗が浮かんでいるが、いくらか俺より涼しげだ。……実に腹立たしい。


「何でお前は俺より涼しそうなんだよ……。むかつくー……」


「何じゃそりゃ」


「にしてもきよ。……さっきのアレ、アレは駄目よ?」


 するといつの間にか、朱菜と深白も来ていたようだった。珍しい組み合わせに驚いている俺を尻目に、叱るようないつもの口調で朱菜は俺に言う。俺と京はそれに、首を傾げた。


「……何のこと?」


「ワイシャツを胸のところでパタパタさせてたことよ!」


 朱菜が呆れたように言った言葉に、俺は目を見開く。確かにやってはいたが、それのどこが駄目なのだろうか。俺には皆目見当がつかないのだが、朱菜と深白にとってはそうじゃないらしい。俺はおずおずと、疑問を口にする。


「それが、何で駄目なの?」


「きよ、自分のことわかって言ってるの!? 男子たちがいやらしい目つきで見てたでしょが!!」


「きよ、アレは確かに駄目だ。絶対、駄目」


 叫ぶように言う朱菜と、心底心配そうに念を押してくる深白。珍しく意見が合った二人に俺は肩を掴まれ、頬を上気させる。そんなことは微塵も考えていなかったし、無論考えたくもなかった。

 朱菜は、若干居心地が悪そうに頭をかいている京を指差して言った。


「神谷くんだって、そうやって見てたのかも知れないのよ?」


「見てねえよ!!」


 思わぬ流れ弾に叫ぶ京。深白は無言で、苦笑している俺のワイシャツのボタンをせっせと閉めていた。











「ただいまー」


 間延びした声を響かせながら、俺と京は帰宅した。暑さはそのまま、むしろ閉鎖された空間であるため湿気も増したように思える。そのままリビングへ向かうと、淡い黄色のキャミソール姿で、アイスを食べている美樹が出迎えてくれた。


「お帰り! ……ねぇ二人とも、海行こうよ!」


 アイスを持っていない方の手でうちわを持ってあおぎながら、美樹は言った。水色の冷たさそうなアイスが、一層俺たちの暑さを煽る。


「海って、……まさか今か?」


「それはさすがに違うけど、近いうちにでも!」


 京は美樹の向かいのソファーに座り込んで言った。美樹はその言葉に、アイスを一気に口に頬張り、咀嚼そしゃくしてから答えた。

 俺は冷蔵庫からお茶を取り出してコップに注ぐ。そしてくいっと一飲みした後で美樹に言った。


「いいね、暑いし」


 涼しい喉越しが、いくらか俺の身体を冷やしてくれた。海に行くことは、願ったり叶ったりでもあるのだ。そう思って笑みを浮かべた俺に、美樹は破顔して言った。


「やったぁ! きよさんやお兄ちゃんの友達も誘って、みんなで行こうよー!」


「……そうだな」


 美樹の提案に、京も穏やかな笑みを浮かべる。

 ……みんなも誘って行ったら、絶対楽しいだろうな。俺は一人、また騒がしくなるだろうことを想像して顔を緩ませていた。美樹はソファーからすっくと立ち上がると、満面の笑みで言った。


「じゃ、今から水着買いに行こ?」


 水着? ……水、着? …………わ、忘れてたぁああ!!

 俺は美樹の言葉に顔を引きつらせて固まり、京は『やっちまった』という表情で俺を見ていた。











「……で、結局俺も連れてこられんのか」


「当たり前じゃん! 男の人の意見が必要だって、前にも言ったでしょ?」


「……帰りたいぃぃ」


 前にも来たことのある、デパートの洋服屋。『やれやれ』といった感じで京は溜息をつき、美樹は意気揚々、俺は意気消沈。対比が面白いと言えば面白いね。……俺たちはそのま店内へ向かった。

 内装は前来た時と違って、夏一色に染まっていた。誰もが考えることは同じなのであろう、水着のコーナーが出来ていて、マネキンたちも鮮やかに彩られていた。


「さぁ、早速探そ?」


「い、いいってばぁ」


「何言ってんの! 水着がなきゃ海行っても意味ないでしょ!」


「うぅ……」


「強く生きろ、きよ」


 精一杯の抵抗を試みるが、相変わらずの押しの強さに敗北する。京の棒読み発言を背中に受けながら、美樹に引かれていった。美樹と結婚する男は、絶対尻に敷かれるのだろうなと、何となく思った。


「きよさんはスレンダーな体型だからぁ……」


 美樹が陳列されている水着をねめまわしながら、何かを呟く。……何故だろう、そこはかとなくわびしさが込み上げてくるのは。


「ストラップレスがいいかなぁ……、いや、それともセンターストラップ……?」


 水着を何度も持ち変え、首を捻りながら美樹はよくわからない言葉を口にする。俺は逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、そうした場合報復が本気で恐い。逃げ出せるわけなど、なかった。


「これはどう? きよさん」


 ふいに美樹から声がかけられて、俺は顔を上げる。そこには、谷間を強調するような、露出度の高いツートップのビキニがあった。俺は一気に、顔を紅潮させる。


「む、無理無理無理! 絶対、無理っ!!」


「えー? ねぇお兄ちゃん、似合うよねぇ?」


「いや、さすがにそれは酷なんじゃ」


 さすがに同情してくれたのか、京が苦々しい顔で言ってくれる。美樹は『そうかなー』と言いながら、それを元に戻す。そして、今度は胸部分の露出を抑えたセパレーツの水着を持ってきて、再び言った。


「じゃあこれは?」


「う……」


 下半身の辺りには可愛らしいフリルが付いていて、これも俺が着るにはかなりの抵抗がある。俺が言葉に窮していると、美樹は京に水着を見せつけるように振り返った。


「お兄ちゃん、どう?」


「やっぱり聞くのか……。いやまぁ、さっきよかはいいと思うぞ?」


「よかった~!」


 京が腕を組んで言った言葉に、美樹が顔を緩ませる。


「きよさん、これにしよ?」


「え、でも……」


「もう、必ずどれかは決めなきゃいけないんだよ? さっきのかこれか、二択!!」


 そんな無慈悲な。俺は思わず絶句してしまう。確かに海に行く以上は水着は絶対条件だが、俺はそのことをすっかり失念してしまっていたのだ。こんな辱めを受けるぐらいなら、海自体行きたくない! ……とは口が裂けても言えなかった。

 俺は交互に両方の水着を見やって、俯く。そしてとうとう、覚悟を決めて小さい声で言った。


「……後の方のやつで、いい」


「りょ~かい~」


 ようやくの賛同に、美樹はひたすら嬉しそうだった。鼻歌を歌いながら選ばれなかった方の水着を戻し、俺の肩に手を置いた。


「さ、きよさん! 試着してみよっか!」


「へ?」


 俺はその『死の宣告』とも言える言葉に、思わず聞き返す。京は最早逆らえないみたいな感じで傍観を決め込んでいた。


「じ、自分で着れるってばぁ!」


「まぁいいからいいから~」


 俺の悲痛な叫びも虚しく、美樹にズルズルと引っ張られていく。

 試着室が、地獄の門に見えた。











「はー……。酷い目にあった」


「お疲れ様、だなホントに」


 夜、部屋に戻ってき、俺は深く溜息を吐く。それに京は、苦笑いをしながら俺の肩をポンポンと叩いた。何だかこうしていると、『仕方ないか』と思えてくる自分がいるから不思議なものだと思う。俺は顔を上げて、京にニカッと笑いかける。


「でも、楽しみだな」


「……そうだな」


 それに京は、優しい笑みを見せる。結局俺も朱菜たちに電話をかけ、三日後の海開きに合わせて行くこととなった。もちろん、みんな来るらしい。何だかんだいって、楽しみだと俺は思っていた。


『楽しみですねぇ、海!』


 不意に、後ろから声がする。振り返ると、そこには相変わらず神出鬼没の女神が、満面の笑みを浮かべていた。話をまた聞いていたのであろう。


「お前最近ちょくちょく何してんだ?」


『私にも色々とやることがあるんです! 全くもう、人を暇人みたいに!』


 京がジト目で言うと、女神は『心外だ』と言わんばかりに頬を膨らませる。それに俺と京は、声を上げて笑った。女神はそれに構わず両手を腰に当てると、俺と京を交互に見やって言った。


『……で。当然、私もついていっていいんですよね?』


 確認するような言葉。どうやら、女神自身かなり海を楽しみにしているらしい。俺は子供のような可愛らしい神様を愛しく思い、微笑んで言った。


「出来るだけ、大人しくするならね」


『わーい、きよありがとうですー!』


「あ、俺は……」


 女神が俺に抱き付いて言ったのに、京は台詞をとられたと嘆く。俺はそんな二人を見て、もう一度、微笑みを浮かべた。

後書き劇場

第二十七回「本当にごめんなさい」


どうも、作者です。重大なお知らせがあります。

実は最近忙しい&思うように書けなくて……


いえ、最初の方は実際言い訳だと思います。ネタとか、書きたい話はいくらでもあるのに、書けない状態に陥っています。そして、そんな状態で間に合わせで投稿したとしても絶対に納得のいくものにはならないと思うんです。

ですので、しばらく更新をストップさせてください。しばらく推敲し、考え、しっかりとまた前のように書けるようにしたいんです。勝手なこととは思いますが、どうか許してはいけないでしょうか。もちろん、作者の他の小説も同様です。


ですが、勘違いして欲しくないのは決してやる気がないわけではないことはわかって頂きたいということです。このまま放棄は絶対に致しません、書き始めた以上最後までやりきるつもりです。


また、嬉しいことにずっと見てくれている方がいます。その方たちに毎日更新しているかを確かめさせる労力を使わせるのも忍びありませんので、期限を決めます。


次の更新は、約一ヶ月後の8月1日とさせてもらいます。それまでは、更新をしないと思って頂いて結構です。感想などは本当にいつも励みになっているので、その状態でも返信させて頂きます。送る方は遠慮をしてもらわなくても結構です。嬉しいですから。


重ねて、本当に勝手なことばかりで申し訳ありません。

きちんと書けるようになって、また皆様と一緒に楽しく小説を書いていけたらな、と思っております。


では、これを以て今回の後書きとさせてもらいます。


作者、TARでした!

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