転換23「一件落着!!」
いやー、テスト終わったー!
……え、聞いてない? それはそうです、言ってませんでしたから(死)
はい、すいません調子こきましたorz
テストで更新が遅れて申し訳ないです!
さて、今回で『南野深白編』は完結です。いえ、かっこつけて言ってみただけで、深白がもう出てこないってわけじゃありませんからね? ね?ww
そして最後はあの人が……!
と、卑怯な手を使ってみたところで。
本編へどうぞ~♪
「おはよー」
「おはよ……、何きよ? その緩んだ顔」
全てが解決した、その翌日。俺は浮かれも浮かれて教室のドアを開け放った。すでに学校に来ていた朱菜たちは俺に声をかけるが、すぐにその異様さに怪訝そうな顔をする。京は苦笑しながら言った。
「昨日からずっとこうなんだよ……」
「……何かいいことでもあったの?」
「へへー、実はねー……」
不思議そうな緑の声に、俺は破顔して語った。昨日のこと、深白とやっと仲良くなれたこと。三人はそれを聞き終えると、何とも珍妙な表情をした。
「あの子とねぇ……。どんな感じなのか想像つかないわ」
「すごいね、きよ……」
「…………」
驚いたように言ってくる二人。それとは対照的に、葵は腕組みをしたまま黙っていた。俺と京はそれを不思議に思うも、声をかける前に先に葵が口を開いた。
「きよ。……あいつ、ちゃんと謝ったのか?」
「あ、……うん。今までのことも全部」
一見、要領を得ない言葉。だが俺には、この前の階段の一件だとすぐにわかる。俺がしっかりと返事をすると、葵は真剣な表情を崩して笑顔を浮かべた。
「ん! ならばよし!!」
「なによ葵? 何の話?」
「……何かあったの?」
葵の言葉に、朱菜と緑が疑問の声を上げる。葵は一瞬戸惑ったのち、噛み砕いて二人に説明した。
「この前、階段から落とされそうになったんだよ」
「はぁ!? ……何よそれ!!」
「……そんなことがあったの」
「いやいや! 葵要約しすぎだから!! 二人とも、事故だからね!?」
葵の言葉に朱菜は怒りを露わにして叫び、緑は凍り付く笑顔で言う。京は相変わらず、薄ら笑い。俺が慌てて訂正すると、二人は一斉にこちらを振り向いた。
「きよは危なっかしいのよ! バカ!!」
「バカー」
「何それぇー……」
言って抱きついてくる朱菜と、冗談っぽく笑ってしがみついてくる緑。俺は理不尽で、それでいて微笑ましい行動に思わず笑う。葵と京も、苦笑いを浮かべていた。
その時。不意に、俺の体が二人から引き剥がされる。そして、代わりに伝わってくる一人の腕の感触。どうやら、俺は両腕で腰元を掴まれているらしい。ちらりと後ろに視線をやると、そこにはいつ来たのか、深白の姿があった。
「深白……」
「……おはよう、きよ」
「う、うん。おはよう」
そのまま、静かに声をかけてくる。体勢的に少し恥ずかしいのだが、せっかくの深白からの言葉を無下にするわけにはいかない。俺は笑顔で、挨拶を返した。深白はそれを聞くと、嬉しそうに頬を赤らめる。
「ちょっと、いきなり来といて何よ?」
朱菜が深白を軽く睨んで、抗議の声を上げる。
「きよ。……仲良くなったというか、懐かれてないか?」
「あの南野が。面白い光景だなー」
京と葵の、どこかズレたような発言。
「…………」
緑は無言で俺の袖を掴み、朱菜は深白と向かい合っている。このいつの間にやらの不穏な空気は、深白が更に俺を強く抱き締めて言った一言で、更に険悪なものへと化した。
「きよに触るな」
「何ですってー!?」
「……いきなりご挨拶だね」
ぼそりと、呟くように言った深白の言葉。朱菜はがるる、と敵意を剥き出しにし、緑は氷点下の笑みを浮かべて、低いトーンで囁いた。
まさに一触即発。深白と仲良くなれたのは良かったかもしれないが、しばらく喧噪は尽きなさそうだ。比較的冷静な葵と京は、溜息をつきながらその様子を眺めていた。
……いや、助けてよ?
「おはよー、おぉ!? そうか、南野もようやく打ち解けたかぁ! そうかそうかぁ!!」
とどめに、教室に入るなり俺たちを見て嬉しそうに言うぶっちゃん。
……ぶっちゃん。色々間違ってるって。
「ごちそうさまー」
家に帰り、夜。俺たちはいつも通りに夕食を食べ終える。そうして、食器を片付けてほっと一息ついていた時、美樹が言った。
「きよさん、お風呂入ろっ!」
「え!?」
その言葉に、俺は驚きの声を上げる。何でいきなりそんなことを言い出したのかはわからないが、嫌だ。これはもう何度も言ったはずなのに。見ると京はこちらを向いて、両手を合わせていた。……合掌か、この野郎。
「や、やだっ!」
「何もしないって~!」
「仲良いわねぇ」
「仲良きことは美しきかな、だな」
必死に訴える俺に笑顔で、美樹は言う。我が妹ながら可愛らしいとは思うが、笑顔の裏に何かが見え隠れしているような気がする。ぐいぐいと引っ張られていく俺を見て、母さんと父さんが嬉しそうに微笑んでいた。
ここで、一つ。諸々の都合上、着替えのシーンは全カットさせてもらう。健全な男子諸君、変なことは考えないように!
「あー、いい気持ち~」
「…………」
ざぷんと、控えめな音をたてて二人で湯船に入る。湯気が風呂場を覆ってはいたが、視界は至って良好だ。美樹は気持ちよさそうに顔を綻ばせ、俺は顔の下半分を湯の中に入れて、顔を俯かせていた。
「もう、いいかげん慣れなよー?」
「……無理だよー」
「仕方ないなぁ、きよさんは」
消え入るように言った俺の言葉に、美樹は何故だか嬉しそうに言った。俺は体育座りになったまま、美樹に聞く。
「美樹、何でいきなりこんなこと言い出したの?」
一回風呂に入ったきり、美樹は特別一緒に入ろうと来るようなことはしなかった。もちろん、俺が嫌がったというのもあるのだが。だからこそ、余計に気になる。
美樹は俺の言葉を聞くと、あっけらかんとした顔で言った。
「きよさんが悩んでたから」
「え?」
「最近何かずーっと難しい顔してたでしょ? お兄ちゃんに聞いても『無理に探るな』って言うし。……だったら、せめて私が背中とか流して、気を紛らわせてあげたらって」
「美樹……」
俺はその言葉に、温かくなるのを感じた。風呂に入っていることの身体の温かさではなく、心の温かさ。
手段がどうであれ、気持ちがとても嬉しかった。今ならば、『俺の妹は優しいいい子だ』と、馬鹿みたいに自慢出来る気がした。
「ありがと」
「どういたしまして」
「でも、前みたいな洗いはいらないよ?」
「えー」
美樹は俺の言葉に、ぷくーっと頬を膨らませる。その微笑ましさに、俺は声を上げて笑った。
「ふぅ」
結局、今回は本当に何もされずに普通に風呂に入れた。俺は布質の柔らかい寝巻き用の半袖シャツを着て、風呂を上がった。そのままぽたぽたと滴を垂らす髪をバスタオルで拭いていると、丁度階段からおりてきた京と出くわす。
「きよ、あがったのか」
「うん。……次、お前入る?」
「いや、その前にさぁ。もしもだけど、お前女神との一件忘れてないか?」
その言葉は、火照った俺の身体を冷ますには、十分すぎるほどの威力を持っていた。目を見開いて呆けている俺に、京はジト目で言った。
「忘れてたんだな」
「……忘れてました」
項垂れて、俺は言う。そう、俺はこの前、女神に八つ当たりで酷いことを言ってしまったのだ。心配して言ってくれた女神に、あの時の俺は心ない言葉を吐き捨てた。それ以来女神とは会っていなかったが、これは決して時の流れで許してもらえるものではない。
きちんと、謝らねば。
「京。女神、どこにいるんだ?」
「……俺の部屋」
何故京が、とは聞かなかった。俺はそれに頷き、静かに階段を上っていく。後ろからは、京が続く。
ドアの前に立って、俺はゆっくりとノックをした。そして、開ける。
「女神……」
『……!』
女神は、京のベッドに一人で座っていた。俺と京がいきなり入ってきたことに驚きつつも、表情は暗いまま。それに、俺は胸がちくりと痛む。
こんなのは、やっぱり嫌だ。
「女神。……ごめん。俺、お前に酷いこと言った。本当に、ごめん」
『…………』
俺は心から、精一杯謝る。だが、女神は答えない。
「勝手な言い分だけど、許してくれないかな……?」
まだ、答えない。京はその様子を、黙って見守っている。
「ごめん。何でもするから、許してよ……、俺、こんなの嫌だ」
思わず、涙がこぼれ落ちた。このまま、一生女神と話が出来なくなったら、どうしよう。そう思うと、悲しくてたまらなかった。いつもおちゃらけているけど、一緒にいるととても楽しい。俺にとっては、いや、俺たちにとっては大切な存在なのだ。そんな女神が、俺の過ちで離れていってしまうのは嫌だ。俺は必死に、言葉を紡ぎ出した。
女神はそんな俺を見て、一瞬悲しそうな顔をする。
『ごめんと言わなきゃならないのは、こっちの方ですのに……』
「……?」
『何でもないです。きよ、その言葉本当ですか?』
女神はこちらを見つめると、言った。俺は少し躊躇いながらも、それに頷く。あの関係が戻ってくるのならば、少しぐらいのことはどうってことないはずだ。
『じゃあ、ほっぺにチューしてください』
「へ!?」
「おい、女神……」
だが、女神の放った言葉は俺の予想の斜め四十五度上をいくものだった。見ると女神は、さっきまでが演技かと思うぐらいに笑顔で、ワクワクという擬音がいかにも似合いそうだった。京は目を細くして、『アホか』と言わんばかりに初めて口を開いた。
『聞こえなかったんですか? きよ。……ほっぺにチューですよ?』
「いや、でも……」
『してくれなきゃ、許しませーん!』
駄々っ子のように手足をジタバタとさせる女神。すっかり元に戻ったその様子に俺は安堵しつつ、同時に狼狽する。
だって、……何このお願い?
『どうなんです、きよ!? やる? やらない?』
「……や、やるよ」
「やるのかよ!!」
ついにはその要求を呑む俺。京が激しくツッコミを入れるが……、仕方ないだろ!! お前だって、一度言い出したら聞かない女神の性格知ってるくせに!!
「お前はあっち向いてろよ!?」
「はいはい」
俺がキッと睨んで言うと、京はくるりと身体を反転させる。その後、改めて女神を見やる。黙っていれば顔立ちが整っているだけに、余計にやりづらい。長い金髪が、サラサラとなびいていた。
『きよ~? 早くしてくださいよー』
「わ、わかってるよ!」
言われて、俺は女神に近づく。女神のすぐ左脇に立つと、嫌でも緊張が俺を襲う。あぁ、女性特有の柔らかい香りが……って、違うだろ俺!! 俺は数回深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
そうだ、何も口にするわけじゃないんだ。落ち着け、俺……! よし!!
「じゃ、じゃあ……、行くぞ?」
『いつでもいいですよ~』
女神の楽しそうな声。俺はその言葉を聞きながら、そっと顔を女神の左頬に近づけた。そして、ゆっくりその頬に、唇で触れた。柔らかい頬の感触が直に伝わってきて、俺はあからさまに狼狽する。……時が、いつもより長く感じられた。
そして、後悔する。このとき思わず目を閉じてしまったが、それは失敗だったと……。
『きよったら、可愛いです』
「ふむっ!?」
いきなり俺は顔を両手で掴まれ、引き寄せられる。俺が目を開けたとき、俺の唇は女神の唇と……ふ、ふ、ふ…………!!
「~~~~っ!!!!」
『これで、許してあげますよー!』
瞬間的に俺は女神から離れるが、女神は最早し終わったという感じで、意にも介さず緩みきった笑顔を浮かべていた。俺は口を押さえ、女神を見る。
「な、な……!」
「何だよ、どうしたんだ?」
真っ赤に熟したりんごのようになっている俺。そして、そんな俺の声にもならない叫びに反応して、京が振り向いて聞いてくる。女神はそれに、春が来たかのような明るい笑みで、答えようとする。
『実はですねー』
「言わなくていいっ!!」
「な、何だよきよ! そんなに怒るなよ……」
俺の必死の叫び。京はそれ以上追及することをやめるが、先程の事実が変わるものでもない。俺はかつて無いほどに機嫌が良い女神を涙目で睨み付け、顔を更に、これ以上ないくらいに赤くした。口には、まだ柔らかすぎる感触が残っていた。
あぁ、俺のファーストキス……。
俺は予想外過ぎる出来事に、がくりと肩を落とすのだった……。
後書き劇場
第二十五回「別に何か狙ってるわけじゃないですよ?」
どうも、作者です。
疲れました~、でもこれでやっと深白以外の人も活躍できます。頑張ります(←の割にテンション低い人
あ、そういえば。どうでもいいことなんですけど、本編の話数より後書き劇場の方が多いんですよね。
本編、23。後書き劇場、25。
まぁ、後書き劇場は本編の.5の時もやってますからねー、とうとう抜いてしまったのでしょうね。
……ほんとどうでもいい話だったな。
さて、そんなことより本題。今回のラストのシーン!
女神の活躍はこれでした~、わ~パチパチ~。……別に女神ときよをくっつけようなんて思っちゃいませんよ!?(必死
お願いですから深読みしないでください、ちょっと恥じらってるきよを書きたかっただけなんです(←最低男
決して百合ってわけじゃn(ry
俺「め、女神さんだって冗談ですよね!?」
女神『そうですよ~。本気だったら○○を○○して○○ですから』
京「読者の皆様ー。ただ『まるまる』って言ってるだけですからねー。決してやましい言葉を隠してるわけじゃないですよー」
きよ「…………」
俺「き、きよさんがかつてない迫力でこちらを睨んでいらっしゃる!? ……き、京さ」
京「自業自得って奴だ」
女神『往生際の悪い奴ですね~』
俺「あ、あなたのせいじゃないっすかぁ! うわ、うわ、ひぃいいいぃぃいい!!」
きよ「はぁっ、はぁっ、この野郎……」
京「はいはーい。きよが人に見せられないような顔してるんでカットー」
……ということで、別にこの小説の方向性を変える気はありませんので。ご安心ください、これからもほのぼのギャグで行きますから!
これからも頑張りたいと思います!
以上、TARでした!!