転換19「コミュニケーション期間!」
はい、どうもです作者です!
まだまだ新キャラのターンですね、なかなかしぶといでございますね、えぇ(何お前
前回で『何だこいつ』と思った方も、『予想通りだふぅん』と思った方も、しばらく付き合ってやってくださいまし(笑)
ではでは、本編始まります~♪
「きよも物好きねぇ。……あの子に話しかけるの、今じゃきよくらいよ?」
「はは……」
この前の衝撃的な出会いから数日。転校生、南野深白は完全に孤立していた。といっても、別段いじめなどで意図的に遠ざけられているのではない。否、むしろその逆だった。
深白は、転校初日の俺たちへの態度そのまま、誰とも話そうとしなかった。先生や連絡事項などの最低限のことには反応するものの、それ以外はいつも窓の外を見ているか本を読んでいるか。対話をしようとしないのだ。
これには女子どころか、初め見目の良さから群がっていた男子たちも骨を折った。いくら美少女だろうと、コミュニケーションが取れなければただの観賞用である。そのため、朱菜が言ったように今では彼女を遠巻きに見ている者しかいない。
……ただ一人、俺を除いて。
「やめときなさいよきよ。やるだけ無駄よ?」
「うん。でもここまできたら、何か意地でもっていうか……」
「きよがそう言うんなら、まぁいいけど」
朱菜が溜息をついて言う。それに対する俺の言葉は、本心から出た言葉だった。
何か、是が非でも『友達になってやる!!』という気持ちが心の中で渦巻いていたのだと思う。それは、『同情』だとか『義務感』などのくだらない感情が働いてのことなのかもしれない。ただ、純粋に『仲良くなりたい』という気持ちがあったのは確かだった。心を開いたら自分にどういう反応をしてくれるかなんて、考えるとちょっと楽しいじゃないか。
俺は懲りずに、今日も深白のもとを訪れていた。
「深白さん、何読んでるの?」
「……またお前か」
俺が声をかけると、深白は本から目を離して俺を睨み付ける。その『煩わしい』と言わんばかりの態度にも、俺はもう慣れてしまった。……人間は、慣れる生き物である。
「もう放課後だよー」
「関係ないだろ」
淡々と喋る深白。そう、言っていなかったが今はもう放課後。先程朱菜も行ってしまったため、今やこの教室には俺と深白の二人だけだった。
「……本、好きなの?」
「…………」
再び聞いた俺の言葉。深白は自分の席に座ったまま、今度は何も言わなかった。これもまた慣れっこなので、俺はそれ以上は追及せず沈黙する。
時たま本のページをめくる音だけが、広い教室に響いていた。
その時だった。ガラッと勢いよく教室のドアが開け放たれ、三人の女子が中へと入ってくる。女子たちはズカズカと俺たちのところまで歩み寄ってくると、その内の一人の、化粧をしたセミロングの女子が言った。
「おい南野深白。……ちょっと面貸しな」
高圧的な口調。明らかに遊びに来たようではない感じだ。取り巻きの二人も、腕を組んで深白を威嚇している。俺が突然の漫画みたいな出来事にあっけにとられていると、深白は心底どうでもよさそうに口を開く。
「断る」
「はぁ!? ……あんたの意見なんて聞いてないし! 来なさいよ!!」
きっぱりと言い切った深白に、女子は烈火のごとく怒り狂う。どこの組から来たかはわからないが、絵に描いたような傲慢な態度だった。深白はそんな女子には構うことはせず、目線を落として再び本を読むのを再開させた。
どうでもいいことなのだが、深白は話しかけられた時は、きつい言葉になろうとも必ず返事を返す。そしてその時に自分の気持ちを伝え、二回目からはだんまりを決め込むのだった。……俺は険悪な雰囲気のときに、何て阿呆なことに気が付いているのかと、自分の脳を呪う。
それはともかく、やはりというか何というか、その態度に女子はキレたようだった。皆一様に薄い眉毛を歪ませて、青筋をピクピクと浮かばせている。おもむろにぐいっと、深白の右手を掴んで引っ張った。
「いいから来いって言ってんのよ!!」
「離せ」
だが深白は、くるりと腕を捻ってそれを容易に払いのけた。その眼には微塵も恐怖や焦りが感じられなく、逆に狼狽した女子が、右手を思いっきり振りかぶる。
平手だが、恐らく感情のまま深白を殴るつもりなのだろう。
「危ない!!」
さすがに暴力にまで発展するのは黙って見てられない。俺は女子と深白の間に、叫びながら割り込んだ。
「っ!!」
結果、深白に当たるはずだった平手は俺の左頬を強打し、その衝撃に俺は横に倒される。頭がクラクラするようなとてつもない、脳まで揺さぶられるような痛み。
「!? 何よあんた!? 邪魔しないで!!」
頭をおさえている俺を見下ろして、女子が怒鳴り散らす。深白も当惑していたが、またすっと表情を消して女子に話しかける。
「おい」
「ん、何よぁはっ……!!」
振り向いた女子の言葉が、途中で呻き声へと変わって途切れる。それもそのはず、深白が右の拳を女子の鳩尾にめり込ませていたからだ。その女子は痛みに腹を押さえてうずくまり、取り巻きは顔面蒼白になってただオロオロとしていた。
「さっさと、帰れ」
「……!!」
その刺すような視線に、二人は弾かれたように身体を震わせる。そして、痛みに顔を歪ませている女子に肩を貸して、静かに教室から出ていった。
ある意味、可哀想な光景だった。
「余計なことを」
「……ごめん」
深白にそう言われ、俺は思わず俯いた。今の強さだったら、俺の行動は余計な行動だったのかもしれない。……この前の葵の件を思い出していた。
立ち上がってスカートの埃を払っていると、すでに帰り支度を整えた深白が教室を後にしようとしているのが見える。慌てて俺もそれについていくと、深白は少し苛立ったように言う。
「何でついてくる」
「せっかくだし、校門まででも一緒に帰ろうよ」
俺は先程の悔しさを誤魔化して、精一杯笑顔を浮かべて言った。深白もそれには何も言わず、早歩きになる。俺もそれに付いていき、やがて下り階段に差し掛かったところで、俺は右隣の深白の肩に手を置いて言った。
「深白さん、家どこら辺にあるの?」
「……うるさいっ!!」
深白が大げさに手を振って、俺の手を弾く。初めて聞く、短い叫び。
「え?」
瞬間、俺の身体が傾く。先程の勢いでバランスを崩した足はもつれ、仰向けになり、階段に背を向けているのがわかった。奇妙な浮遊感が俺を包む。
落ちると、そう思った。だが、いつまでたっても身体は地面に叩き付けられない。咄嗟に閉じた目をそっと開けると、俺は葵に抱きかかえられていた。
「大丈夫か、きよ? どこか痛いところでも、あるか?」
「葵……。うん、大丈夫。ありがと」
また情けない所を見られてしまった。俺が頬を赤く染めながら礼を言うと、葵は俺をゆっくりと地面に降ろした。
……それにしても、やはり葵の運動神経はずば抜けている。不安定な階段の上で、よく一瞬で俺の身体を受け止められたなと、俺は純粋に感心した。俺は何気なく聞く。
「そういえば葵、何でここに?」
「私は、たまたま忘れ物を取りに来て……。それより、南野」
俺の問いには優しく答えると、葵は階段上の深白に語りかける。深白はそれにやっと気を取り戻したように、呆然と開いていた口を閉じた。
「今のは洒落になんねぇぞ、私がいなかったら、きよは死んでたかもしれない。……わざとじゃないのはわかるけど、謝るべきなんじゃないか?」
「……!」
「葵……」
葵は、低く語気を強くして深白に言った。深白はその言葉に初めて動揺すると、頼り無く視線をうろろさせていた。俺は何も言えず、葵は深白から視線を逸らさない。
しばし息もつけないような静寂が、圧力となってのし掛かる。深白は一筋の汗を流し、唐突に身を翻して走り出した。
「おいっ!!」
葵は叫び、追いかけようとするが、俺がその腰に食らいついて何とか抑える。
「葵、いいんだって!! 私がしつこかったからだよ!!」
「きよ、でも……」
「…………」
「わかったよ。でも、気を付けろよ」
「うん……」
俺の必死な弁明に、葵は仕方ないというように肩の力を抜く。もう、深白の姿はどこにも見えなかった。
正直言うと、さっき言ったのは全てが本音ではない。怒った気持ちもあった。悲しい気持ちもあった。
でも、今ここで葵が追いかけていくのは、何か違うような気がした。それをしたら、もう深白とはずっと分かり合えないような気がしたのだ。
その後、俺と葵は校門まで一緒に帰ることにした。
俺の頭の中には、さっきの怯えたような深白の表情が、いつまでもこびりついて離れなかった。
後書き劇場
第二十一回「どっこいせ、あぁ何だこりゃあ」
はい、作者ですぱにょーん。
……すいませんでした調子こいてました自重しますorz
最近ですね、妙なことが起こるんですよ。え?何がって?聞きたいなら仕方ないですね~(←言ってない)、教えて差し上げましょう!
何かね、最初考えてたストーリーと違う所へ行くんですよ(爆)
いえ、大筋というか、重要な所などの『書こう!』と思った部分は書けてるんですが、その後の展開とか微妙な小ネタとかが変わるんですよ。何故かってそりゃあ……、原因は主にセリフ部分ですね。
地の文などのモノローグ部分は大分思っている通りに進んでくれるいい子ちゃんなんですが、キャラは喋り出すと止まらないこと止まらないこと!まさに、キャラが勝手に動いてしまうといった状況です。そんなこと言わせる気なかったのに、シナリオを無視して暴れ出す登場人物たちorz
例を挙げれば、前回の深白の発言。『……偽善者ぶるな、貧乳』とあったじゃないですか。本当はここ、『……余計なことを』だったんですよね(笑)。なーんでこうなったんだか、深白は初登場ながらに台本を無視するとんでもないひねくれ者、ということでしょうね。作者が思うには、多分美人のきよに嫉妬しちゃって、唯一のウィークポイントである胸を狙ったのではないかと(でも人によっては長所でもある)
とまぁ、こんな作者ですが、どうか末永くお付き合い下さると嬉しいですw
アホなことしか話してないですね、えぇ。
深白「……恥さらしだな」
俺「……(・_・;)」
で、ではまた次回!作者から、でした!!