転換17「守るための力」
どうも、作者です。
最近ふざけた話ばっかりでしたので、たまにはのどかな話でも。……のどかかなぁ(不安)
話は思い浮かんでも、それを文章にする力がない……orzそういう力、身につけていきたいですな(何この雑談)
では、本編へどうぞ~!
のどかに太陽が照らす、日曜日の昼過ぎ。俺は片手に手提げを持って、商店街を訪れていた。長袖のTシャツに青のジーパンを身に纏った俺の目的、それは決まっていた。
夕飯の買い出しだ。別に大げさな用事でもないが、前にも言ったとおり俺はこの姿になってからお使いを頼まれることが多い。だから今日のこの買い物も、別段特異なことでもないわけで。
俺たちの住んでいる町、初代町は海に面している港町だ。だから市場はもちろん、そこいらの店でも新鮮な魚介類を安く買うことが出来る。
とりわけ、今日のメインは鮭料理。俺は行きつけの魚屋に歩を進めていた。その時。
ドゴォオオオン!!
凄まじい轟音が遠くから聞こえてき、俺はビクリと身体を震わせる。音のした方を振り向くと、中心を取り囲むような人の集団。野次馬だな、と思いつつも俺はその人だかりへと小走りで向かった。
「がはっ!!」
俺がそこへ着いたとき、野太い男の呻き声が聞こえる。人の波をゆっくりとかきわけて覗いて見ると、尻餅をついているアロハシャツの男、それに対峙するように立つ一人の少女。
「いいぞー、嬢ちゃん!」
一人が言った言葉に、他の者たちも手を叩いて賛辞を送る。初代町の奴らは、無駄に血の気の多くノリの良い奴らが多い。このような喧嘩は、格好の見世物なのだろう。その中には、今の時間仕事中のはずの魚屋の主人もいた。
俺は内心で苦笑しながら『男と女の喧嘩』の異様さに興味を惹かれた。更に言うならば、今の状況はどう見ても少女が優勢にしか見えない。珍しく思いふと少女の方を見やり、気付く。
少女は半袖のTシャツにジーパンと、俺と似た活動的な服装で、腰に手を当て漫然と立っている。ふくよかにその存在を強調する胸と、女性らしさを損なっていないしなやかについた筋肉。茶髪のポニーテールが、そよそよと風に揺れていた。
「どうしたぁ? もう終わりかよ」
加えて、その男のような挑発的な台詞。間違えるはずもない。
「葵!」
「へ? ……きよ?」
俺が思わず叫ぶと少女、否、東堂葵は先程までの態度と一変、きょとんとした顔でこちらを見た。俺は若干呆れたような表情を葵に見せつけ、疑問の声で言った。
「……何してるの? こんなとこで」
「いや、まぁ喧嘩だけど。あ、でも違うぞ! 私から吹っ掛けたんじゃなくて、正当防衛だからな!?」
「本当にぃ?」
「好きでこんなことするかっての!!」
もっともな言葉に、俺はぷっ、と笑いを零す。葵がそんな奴じゃないのはわかっているから、冗談のつもりだったのだが。あわあわしている葵を、俺は少し可愛いと思った。
「畜生……、殺す!!」
突如、今まで全く動かなかった男が立ち上がり、葵に向かって走り出す。その右手にはいつの間にか握られていた、コンパクトナイフ。完全に、頭に血が上っている。
群衆は、さすがに焦りの色を浮かべていた。そしてもちろんそれは、俺も例外ではない。あのナイフをあの勢いで刺せば、人など簡単に殺せる。
葵が、殺される。
「……葵っ!!」
そう思った瞬間、叫びと共に咄嗟に体が動いてた。俺は葵の前に立ちはだかり、男と向き合った。葵の眼は、驚きに満ちていた。
「邪魔すんなクソガキィッ!!」
男は怒号を上げる。その叫びに腰がすくむも、親友を置いて逃げる気は俺には毛頭なかった。
男である、俺が守らなきゃ。その思いが、頭を駆け巡っていた。
「バカきよ! 危ないっ!!」
葵は我に返ったようにハッとすると、強引に俺の手を引っ張った。あまりに強く引かれたため俺は葵の後ろで尻餅をついて倒れる。だが葵はそれに構わず、突っ込んでくる男のナイフを持つ手を、右足で蹴り上げた。
「って!!」
瞬間、空へ弾けるナイフ。男は短く悲鳴を上げ、蹴られた右手を押さえる。葵はその右足を素早く地面に下ろし、それを軸足に反時計回りに回転し、男の側頭部へ回し蹴りを繰り出した。
男は今度は叫ぶこともできず、、白目を剥いて勢いよく倒れ込んだ。同時に、湧き上がる歓声。
「かっこいいぞー!」
「ヒヤヒヤしたけど、よく捌いたなお嬢ちゃん!!」
そんな歓声の中、俺はただ呆然としてその場にへたり込んでいた。ほっした思いだけが、胸にあった。
葵は気絶している男の元まで歩み寄り、地面に落ちているナイフを手に取った。
「こんな危ないもん持ち歩きやがって……。しかも勝手に気ぃ失うし、まだ怒りは収まってねーんだぞ」
言って、葵は恨めしそうに男の頬をつねる。そして『ふん』と鼻で息を吐くと、座り込んだままの俺の手を取った。
「で、だ。……自分が何をしたかわかってんのか? きよ」
人通りもそこまで多くない、公園にある公衆電話の脇。俺は何故か葵に腕組みをされて説教されていた。
「わ、私……、何かしたっけ?」
珍しく怒っているらしい葵の態度に、俺は理由がわからないので取り敢えず聞き返す。葵はその言葉に溜息をつくと、声を荒げて言う。
「何かじゃない。ナイフを持った男の前に出るなんて、死にたいのか!」
俺はやっと葵の怒りのわけを知った。葵は、俺の危険な行動を咎めていたのだ。
「でも、葵が危なかったし……」
「それできよが出てきて何になる!? 私はナイフくらい大丈夫だけど、それじゃきよは無駄死にだ!!」
葵の恐いほどの剣幕に、俺は言葉を詰まらせて俯いた。ちらりと葵の表情を窺うと、厳しい視線が俺を突き刺した。
「ご、ごめん……。私、葵が死んじゃうと思って、守らなきゃ、って思って。ほんとに、ご、め……」
言って、涙を流して嗚咽する。
自分の、大切な友人を守ろうとした。失いたくないから、守らなきゃと思った。でもそれは、余計なお世話だったのだ。いや、もしかしたら迷惑な行為そのものでしか無かったのかもしれない。
悔しくて、そんな自分が情けなくて。俺は恥ずかし気もなく子供のように泣いてしまった。
「きよ、きつく言ってごめん」
葵はそんな俺を、不意に優しく抱きしめた。葵の方が身長的に上なので、自然と俺は包み込まれるようになる。葵は悲しげに、でも諭すように言った。
「きよの気持ちは嬉しいよ。……でも、そのきよの優しさできよが死ぬのは、私見たくない」
葵の声は穏やかで、俺は何だか安心してしまい『うん……』と呟いていた。葵はそれを聞くと、先程までの態度が嘘のように唐突に破顔した。
「でも、きよが私のことそんな風に思っていてくれたのは、本当に嬉しいぜ。ありがとな」
「こ、子供扱いしないでよ……!」
あやすように俺の頭を撫でてくる葵に、俺は今更恥ずかしさが込み上げてくる。必死に葵の腕から逃れようとするが、葵は嬉しそうに笑って決して離そうとしない。
「ふぁっ、あ、葵! こんな所、で、んくっ、何!?」
それどころか、いつものように俺の胸にセクハラする元気まで出てきたようで。いきなりの刺激に戸惑う俺に、意地悪い笑みを浮かべて言った。
「だって、ここは子供じゃんかよ~」
「あぅ、え……? ~~~~っ!!」
俺は初め、意味が分からず間の抜けた声を漏らすが、それが先程の俺の言葉への返答だとわかると、一気に顔を真っ赤にする。俺は声にならない叫びを上げて肩を震わせ、飄々としている葵を睨んで、叫んだ。
「葵のアホ!!」
「着いた着いた! ここだよ」
「うわ、でっか……」
それから数十分、俺と葵は葵の家の前にいた。何故かと言うと、答えは単純明快。葵が『少しでも強くなりたいなら』と、自分の家の道場を見学していくように言ったんだ。そして、俺はそれに了解したのだが……。
それにしても、凄い。いかにも昔から続いてきた、という雰囲気の和風の家。辺りは塀に取り囲まれ、家は渡り廊下というのものがあるほどに大きい。そしてその隣に、家よりは小さいがそれでも体育館ほどある建物があった。
「あれが道場」
にべもなく、その建物を指差して葵が言う。木造の道場には、看板に墨文字で『東堂流』と書かれていた。
「葵の家って、お金持ちだったんだね……」
「家だけだけどな」
俺から思わず出た言葉に、葵がからからと笑って言う。
「さ、覗いて見るかー」
「うん」
その言葉とともに、葵が勢いよく扉を開ける。俺もそれに続いて入ると、中は想像以上に活気に溢れていた。白い胴着を身につけた小学校から中学校くらいの少年たちが、タイミングを揃えて正拳突きを放っている。まだ幼さを残している少年達は、みんな髪を短く切り揃えていて、中には坊主の子もちらほらと見られた。
「あ、先生こんにちはー」
「おぅ、頑張ってんなー! 親父は?」
「今日は師範はいないから、自主練だって」
俺たちが中に入っていくと、一人の坊主頭の少年がそれに気付いて駆け寄ってくる。俺と同じくらいの背丈しかない子供に葵は『そか』と言うと、視線を練習中の彼らにうつした。
ふと、少年が葵に問い掛ける。
「先生その人誰? 彼女?」
「あぁ、彼女!」
「いやいや、そこは否定してよ葵……」
わざとらしく満面の笑顔で答える葵に、俺は苦笑いで返す。少年は冗談だとわかっているようで、ケタケタと可愛らしく声を上げて笑っていた。
「私の学校の友達で、きよってんだ。今日はまぁ、見学のようなものだな」
「へぇ~。先生と違って、綺麗な人」
「そんなこと言うのはこの口かー?」
「ふひまへんでひは~! (すいませんでした~!)」
「……はは」
しこたま少年の頬をつねる葵に、笑いながら謝る少年。少年はようやくそれから解放されると、『きゃー』と言って練習に逃げるように戻っていってしまう。俺はその微笑ましさに、思わず笑みが零れるのを感じた。葵はそれを『……ったく』と、やはり微笑ましそうな笑みで見ていた。
葵の指示で、今度は一対一の組み手に入る。その途端、先程までのあどけなさは影も残らず、少年たちの表情は真剣そのものだった。それに、葵の家の道場だけあって年下とは思えない動きで、鍛えられていることがわかった。
「どうよ? きよ、入る?」
「……やめとく」
葵が顔を覗き込んで言った言葉に、俺は静かにそう言った。葵はそれにさして驚きもしないで、理由を尋ねた。俺は、答える。
「みんな真剣にやってるし……。片手間に出来るものでもなさそうだし、多分続かないと思うから、……かな?」
「そう言うと思った」
葵は最初からわかっていたかのように、口笛を吹いて言った。そして、ニッと笑うと俺に抱きついて言う。
「ま、私がいるから安心しろって。……私がいない時に変なおじさんに誘われても、ついてっちゃ駄目だぞ?」
「だから、子供じゃないって……!」
俺がからかわれたその言葉に反論しようとした時、ピリリリ、と携帯の着信音が鳴る。ひとまず葵も離れ、俺は携帯の画面を開く。
着信は、美樹からだった。俺は『何だろう?』と思いつつ、メールフォームを開いて内容を見る。そして、絶句する。
件名、『どうしたの?』。本文、『きよさん、今どこにいるの? 買い物終わった?』。
「…………」
固まった俺を見て、葵が何事かと携帯の画面を覗き込む。そして、呟く。
「あちゃー、買い物の途中だったのか……。悪かったなー、きよ、というか忘れるなよ」
「……お邪魔しましたっ!!」
「っはは、またなー」
声を出して笑う葵を尻目に、俺は全速力で商店街まで舞い戻るのだった。
……ちなみに。帰った俺は、後で美樹にこっぴどく注意された。
後書き劇場
第十八回「忙しさと楽しさ」
※今回の後書きは、いつにも増して作者が壊れております。神経に負担をかけたくないかたは見ない方が賢明です(笑)
どうも、作者なんですけども。
何か最近、アレなんですよね。前書きで言った通りにネタが浮かぶけども、文章が浮かばないっていうか。何が原因かをずっと考えていたわけです。そしたら、一つ思い浮かぶのがあったんで、女神さんに聞いてみたんですよ。
俺「もしかして俺って、文章力低い!?」
女神『今更でしょうがこのウジ虫』
俺「ショボーン……」
きよ「もっと本を読みなさい」
てな感じでした(え
最近、本を読む時間がとれないんですよねー(どうでもいい)。皆様に楽しんでもらえることを信条としているのに、これでは本末転倒……。少し不安になってまいりました(笑)
ということで、みんなはきちんと読書しなきゃ駄目だよ?(何だこの無理矢理な締め)
御意見・御感想いつでも待ってま~す!
以上、作者の愚痴でした!(あ