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転換13「どしゃ降りでも、男の子は走って帰れ!! ……女の子は?」

どうも、作者ですすいませんorz


更新、ほんっとうに遅くなりました!!

言い訳をさせてもらいますと、風邪でダウンしていました! えぇ、言い訳です! ゴメンナサイ!!


……いやぁ、怖いですねぇ風邪って(人事のように言うか)

でも、こんな小説でも待っていてくれている方たちがいると思うと、本当に申し訳ない気持ちです!

今度からは、健康管理も気を付けたいと思う作者なのでした!



……あ、でも学校のことで遅れるのは仕方ないかも(どっちだ


ではでは、本編始まりま~す♪

 ぱらぱらと雨の音が響く校舎。俺は玄関で立ち尽くしていた。

 京は先生に頼まれ事をされているようだったので、俺は放課後の人気の無い校内に一人なのである。そして、何故俺がそんな中ただただ立ち尽くしているかというと……。


 傘が、無いからだ。


 今朝は寝坊をしてしまい時間もなく慌ただしかったため、天気予報などを見る暇が無かった。だから傘など持っていない、当然といえば当然だ。

 京が傘を持っていれば、とも考えたが相合い傘などしたらまた根も葉もないことを言われそうだ。それに、多分京だって持ってきていないだろう。

 やっぱり、一気に家まで走るしかないかな。……俺がそう決心したとき、


「あら? きよじゃない」


 後ろから唐突に声がかけられる。それに振り向くと、そこには紅い髪をしたツインテールの少女、藤川朱菜がいた。


「あ、朱菜」


「何してんのよ? ぼへーっと突っ立って」


 俺が声をかけると、朱菜はにべもなく言った。俺は『いや~』と誤魔化すように笑うと、その後、ぽそりと言う。


「傘、忘れちゃって……」


「あぁ、そういうこと」


 朱菜はそう言って、合点がいったようにポン、と手を打った。そしてそれと同時に溜息をつきながら、傘置きまで歩いていく。


「天気予報見なかったの? 今日は大雨だって言ってたじゃない」


「面目ないです……」


 そのまま紺色の傘を広げて、小さい子に諭すように朱菜が言う。俺は朱菜の言葉に素直に反省するとともに、寝坊した自分をちょっと後悔した。

 早起きは三文の得とはよく言ったもんだ。……これからはできるだけ、早く起きるようにしよう。


「仕方ないわね……。ほら、途中まで入れてってあげる」


「え……!?」


 そんなことを考えていると、朱菜はそう言いながら視線をこちらに向けてきた。


 ここで一つ、俺の考えなのだが。

 確かに心が男の俺にとっては、男との相合い傘は決して良いものではない。これは殆どの人に当てはまるし、正常だろう。

 ……でも、女の子との相合い傘もそれはそれで恥ずかしいのだ。朱菜がそういう意味など微塵も含んでいないのはわかるし、純粋な好意に対してそういったガキみたいな態度をとるのもどうかと思う。

 それでも、やっぱり照れてしまう。これも、恐らく正常なはずだ、健全な男子なら。……多分。


「何やってんのきよ! 早く行きましょ?」


 ぶつぶつ言っている俺に痺れを切らしたのか(というかどう見ても怪しいことこの上ないのだが)、朱菜が声をかけてくる。


「う、うん」


 結局どうしようもないので、俺はそれに頷くことにした。




 雨の降るアスファルトを、一つの傘で歩いていく。雨足は強く、もちろん二人で入るには多少狭いが、傘が無いよりはどう考えてもましだ。傘を発明した人物は、まったくもって偉大だと思う。


「そういえば、神谷くんはどうしたの?」


 別に気まずくではなく、何となく無言のまま歩いていると、ふいに朱菜が問い掛けてくる。俺は目の前にある水たまりを避けて通りながら、答える。


「何か、先生に用事頼まれてるみたいだった」


「ふ~ん……」


 朱菜は興味があるのかないのかよくわからない感じに呟き、俺もそのまま歩みを進めようとする。だがその瞬間、肌を突き刺すような強風に煽られて、傘ごと後ろに引っ張られる。

 そのあまりの強さは、危うく二人ともがまとめて転んでしまいそうなほどだった。


「何よ今の風! っていうか、もうどしゃ降りじゃない……!」


 傘を手で抑えながら、朱菜が言う。気が付けば雨は先程の比にならないくらいに激しさを増しており、強風も相俟ってそこかしこから雨風が吹き荒れる状況だった。

 俺は目の前を手で覆ってみるがそれでも勢いは強く、たまらず目を閉じた。この状況では最早、傘が意味を無くしているに等しい。そこかしこから雨粒が襲い掛かってくる。


「何なのよいきなり~!?」


「前に進めない~……!」


 朱菜も俺も、思わず愚痴を言う。そんな俺たちの身体は傘の守りを失ったので、いわゆるびしょ濡れ状態だった。


「きよ~! あんたん家まで、確かまだ結構かかるわよね!?」


「うん! そうだけど~!」


 轟音にかき消されないように、二人ともが自然と大声で叫んでいた。俺が答えると、朱菜は今となっては邪魔な傘を閉じながら、叫んだ。


「じゃあ、ひとまずあたしの家で雨宿りしましょう! 走るわよ!!」


「わかったー!」


 俺は頷くと、飛ばされない鞄を一旦の傘代わりにして、朱菜の家まで全速力で走っていった。












「ついたー!」


 走ること約五分、俺たちは朱菜の家に滑り込む。唸るような風の音を遮るように玄関のドアをバタンと閉めて、俺は肩で息をしながら膝に手をついた。


「はぁっ……、もうびしょびしょよ……!」


 朱菜も息を切らしながらに言う。その言葉通り、朱菜は頭から爪先までがまさに『びしょびしょ』だった。……もちろん、俺も言うまでもない。ワイシャツや靴下までに水が浸透し、足踏みをすればぐじゅぐじゅと音が鳴った。衣服類が張り付いて気持ち悪い。


「とにかく、着替えましょ! タオルとか持ってくるから待ってて」


 朱菜はそう言うと靴下ごと靴を脱ぎ捨て、奥へ走っていった。 俺は手持ち無沙汰になり、何となく周りを見回してみる。

 靴箱の上には、可愛らしい熊のぬいぐるみが客を出迎えていた。壁に掛かっている花たちは、殺風景な玄関をほのかに彩っており、上品な印象を受けさせる。靴箱や床なども塵一つないぐらいにピカピカで、綺麗な家だなと素直に思った。何かうちと違って、育ちの良さが家にも出てるみたいな、そんな感じだった。


「お待たせ、きよ!」


 そんなことを一人でつらつらと考えていると、ポタポタと滴をたらしながら朱菜が戻ってくる。


「はいっ、タオル!! まず先に足拭いてあがっちゃって!」


 そう言って、白いタオルを手渡される。顔の近くで持っていると心地良い石鹸の香りに一瞬意識が向くが、すぐに気を取り直して言われたとおりにする。靴と靴下を順に脱ぎ捨て、水の滴る足の裏を拭く。

 それが終わると、頭にタオルを被せながら朱菜の家へと足を踏み入れる。だが、足を拭いていても身体中から滴が落ちているような気がする。さっきまでの綺麗な床を思うと、少々心苦しい。


「朱菜……。水、垂れちゃってるけど……?」


「あぁ、いいのいいの! この際しょうがないわ!!」


 不安になって聞いてみたが、家主は気にしていないようだった。申し訳ないが、御好意にあずかることにしよう。


「それより、着替えはあたしの服を使うとして……! まず濡れた身体をどうにかしないとね!!」


 俺に向き直って、朱菜が言う。まぁ、確かにそれはその通りだ。せっかく家で雨宿りをしたからといって、冷えて風邪を引いたら元も子もない。……しかし、一体どうするつもりなのだろうか?


「お風呂に入るわよ、きよ!!」


 笑顔で朱菜が言った言葉に、俺は『あぁ』と納得する。成る程、身体を温めるのなら確かにそれが手っ取り早いだろう。タオルで拭くといっても限界はあるだろうし。

 俺はごく普通に朱菜の意見に賛成した。


「そうだね。じゃあ、朱菜が先でいいよ?」


 『雨宿りさせてもらってる身だし』とこれまた一般的な俺の意見。だが、朱菜は呆れたような口調でとんでもないことを言ってのけた。


「何言ってんの? 一緒に入るに決まってるじゃない!」


「……え!?」


 瞬間、固まる俺。そして、それと同時に頭の中にフラッシュバックされる思い出。

 そう。俺の意思ではないにせよ、俺は女の子(といっても実の妹だが)と一回風呂に入ってしまっていたのだ。何か、なし崩し的に。

 美樹は楽しかっただろうが、俺にとってはひたすらに恥ずかしかった時間だ。曰わく、あんな恥辱は二度とごめんだということで……。


「な、何で一緒に入るのさ!?」


 当然のごとく、反論する俺。少々語気が強くなってしまったのは、先程の思い出補正だろう。


「何でって、一人が入ってるのを待ってたらその間に風邪引くでしょうが!」


 対する朱菜も負けてはおらず、腕組みをして堂々と正論を言ってくる。そう、正論を。この場合、確かに風邪を引いては駄目だし、表面上は同性同士だし、朱菜の言い分の方が正しいのも頷けるのだが……。


「で、でも……」


「でも、何?」


 言葉に詰まった俺に、朱菜の厳しい視線が刺さる。俺は居たたまれなくなって目線をあちこちにずらすが、状況は変わらず。結局、顔を俯かせて消え入るように一言、言った。


「は、恥ずかしい、から……」


 あまり言いたくなかったが、正直な意見だ。やはりというか何というか、気まずい空気のまま俺が黙っていると、しばらく立ってから朱菜がようやく口を開いた。


「……萌え落としのつもり?」


 だが、朱菜から発せられた言葉は全くと言っていいほど俺の予想外の言葉だった。朱菜は腕組みをしながら、ジトーッとした目でこちらを見据えていた。

 そのまま、唖然としている俺に向かって朱菜は、何故か頬を赤くしながらこう言った。


「そんな可愛い仕草をしながら可愛い理由喋って逃げようたって……! 葵なら落とせても、あたしはそうはいかないわよ!!」


「いや、あの、別にそんなつもりじゃ……」


 本当にそんなつもりはなかったのだが、弁明する俺を余所に朱菜は叫んだ。


「とにかく! 反論は許さないわよ!!」


 そして、濡れたワイシャツの袖を掴まれる。


 あぁ、やっぱりこうなるのか……!

 俺は自分の押しに弱い性格を呪いながら、風呂場へと引きずられていくのであった。













「はあぁ、疲れたぁ……!!」


 脱衣場で、俺は力無くため息をつく。あの後結局俺は朱菜と一緒に風呂に入り、世話焼きな朱菜に隅から隅まで世話されたわけだ(そこ! 卑猥な想像しない!!)。当然俺に拒否権は無く、風呂に入って温まったのはいいものの、精神的には疲れるという本末転倒な結果に陥っているわけだ。

 ……そして、前から思っていて、今回のことで確信に変わったことが一つ。朱菜はやっぱり、美樹に似ている。


 別に、美樹が朱菜に似ているでも構わないが、世話焼きなところが非常にそっくりだ。だから何だという人もいるだろうが、まぁちょっと言いたくなっただけだ。

 話を元に戻そう。


 今、俺はお風呂から丁度上がったところで。朱菜が用意しておいてくれた着替えをきている。

可愛らしい水玉模様のピンクのパジャマだった。気持ち的に俺にはちょっと可愛すぎだが、折角用意してくれたものを断るのは失礼だ。なので着ているわけなのだが……。

 俺の今の身体は、朱菜よりも少し小さいため、幾分か大きく感じるのだ。ブカブカ、という程ではないが、袖で手が隠れてしまう感じだ。……まぁ、さして支障があるわけでもないので別にいいが。


「きよ~!」


 そうしていると、リビングの方から朱菜に呼ばれる。俺はバスタオルを首にかけたまま、リビングへと向かった。


「何? 朱菜」


「外、ますますすごいわよ。テレビ付けたら、台風だって」


「え……、そうなの?」


 朱菜の言葉に、俺は狼狽する。風呂に入っている間に少しは雨足も弱くなるかと思ったが、甘かったらしい。事実、窓の外を見るとさっきよりも増して暴風が吹き荒れ、酷い状態だった。


「っていうか、きよ!」


 そのまま窓の外を見ていると、いきなり朱菜が声を荒げる。何事かと思い振り向くと、すぐ近くに朱菜がいた。


「まったく! ちゃんと髪拭きなさいよ……! 風邪引いたらどうすんの?」


 そう言って、俺の首のバスタオルでゴシゴシと髪を拭きにかかる。


「わ、わかってるって!!」


「わ、か、っ、てない~!!」


 もう子供じゃないのだから恥ずかしいのだが、朱菜の手はますます力を強める一方で。……やっぱり、A型なんだと思った。


「……というか、着替え大きかったわね」


「まぁ、微妙に……」


「それはいいとしてさ?」


 着替えの大きさは程なくスルーされる。そのまま髪を拭きながら、朱菜が話しかけてくる。俺は顔だけ上げて、視線で『何?』と問い掛けた。


「きよ、今日泊まってったら?」


 あっけらかんとかけられた言葉。驚いたには驚いたが、理由は言われなくてもわかる。俺はおずおずと口を開いた。


「……いいの?」


「こんな状況で、帰せるわけないでしょうが!」


 『当たり前だ』という風な朱菜。……まぁこの状況ならさすがに、俺もそう思う。


「……よろしくお願いします」


 だから、素直にお邪魔することにした。俺の言葉に朱菜は『ん』と言うと、今度は俺の家の電話番号を聞いてきた。


「……何でそんなの?」


「連絡しなきゃいけないじゃない」


 さも当然のように言う朱菜。俺は短くツッコミを入れる。


「いや、私がやるから!」


「いいわよ別に。あたしがやるから」


 だが、朱菜は聞く耳持たずだった。今日はずっとお世話になりっぱなしだったので、せめてこういうことぐらい自分でしたかったのだが。


「えぇ、えぇ。はい、じゃあそういうことで」


 考えているうちに電話が終わったようだった。……早いな、しかし。


「さぁて! 夕飯にしましょ? 今作るわ!」


 朱菜は受話器を置くと、台所に向かいながら楽しそうに、そう切り出した。


「あ、手伝うよ!」


 慌てて、俺が声をかける。そこまで凄い腕は俺には無いが、いつも母さんや美樹の料理を手伝っているため、そこそこは出来ると自負している。……だからこそ足手まといにならないと思って言ったのだが、朱菜は首を横に振った。


「気持ちはありがたいけど、大丈夫! 座ってていいわよ!」


「でも……、今日ずっとお世話になりっぱなしだし! 何か、悪いよ」


 これは、正直な気持ちだった。それでなくとも、朱菜たちには常日頃から気を遣ってもらってるのだ。こんなことまでやってもらっては、申し訳がない。

 だが、朱菜はそんなことは全く気にしていないかのように、むしろ嬉しそうに満面の笑顔で言った。


「そんなことないわよ! あたしが好きでやってんのよ! お客様が来たら、もてなしたいじゃない? ……だから気にしなくていいわよ」


 その笑みは本当にそう思っている笑みで(別に俺がそういうものを見抜く力を持っているわけではないが)、俺も自然と笑みがこぼれていた。


 ……『誰かの為に何かをしてあげたい』、か。

 俺は純粋に、朱菜を優しいなと思った。












「いっただきまーす!!」


 大きなテーブルに、二人の快活な声が響き渡る。結局、夕食はカレーだった。別に大好物という程ではなかったが、朱菜が俺の為に作ってくれたのだと思うと、いつも以上に美味しく感じられた。……人間というものは、不思議な生き物だ。

 そして、食べながら俺はずっと気になっていたことを、朱菜に聞いた。


「ねぇ、朱菜。……御両親は?」


 言ってから、何かの事情があるかもしれないと自分の失言を恥じた。だが、朱菜は全くそんな様子もなく普通に答えた。


「あぁ、仕事の関係で海外にいるのよ」


「そうなんだ……」


「そ。だから、この広い家に一人ってわけ」


 あっけらかんと言う朱菜。だけれども、いやだからこそ何故か俺は悪いことを聞いてしまったような気がして。


「あ、ご、ごめんね……」


 気が付けば謝っていた。


「何謝ってんのよ。別に家族仲が悪いわけじゃないのよ」


 慌てて朱菜がフォローを加える。


「でも……」


「別に寂しくもないわよ? あたしには、かけがえのない親友達がいるしね。ね、きよ?」


 しゅん、と落ち込んだ俺に朱菜が肘を付いてニッと笑いかける。親友……。朱菜の心の支えに、俺も入れているのだろうか。何だか、それはとても嬉しいと思った。


「あ、朱菜! ……困ったことがあったら、何でも相談に乗るから!」


 だからだろうか。そんな言葉が素直に出てきていた。女になってから、朱菜を含めて三人は俺の心を支えてくれた。だったら、俺も助けたいとそう、思ったのだ。

 朱菜は、そんな俺の思いを知ってか知らずか。


「ばかね、きよったら……」


 嬉しそうに、そう微笑んでいた。













「さ、ここがあたしの部屋よ!」


 初めての、朱菜の部屋に入っていく。

 あれから、テレビなどを見ながら時間をつぶし、只今の時刻は11時30分。そろそろ寝ようと思って朱菜の部屋へ来たのだ。部屋へ入ると、ぬいぐるみでいっぱいだった。ベッドには勿論のこと、棚やタンスの上などにも熊や犬などの可愛らしいぬいぐるみたちがあったのだ。思わず、俺は目を丸くした。


「驚いた? ……あたしこういう可愛いのが好きなのよ。集めちゃうのよね~」


 照れくさそうに笑う朱菜。そうやっている姿は、女の子らしくて非常に可愛いと思う。


「可愛い趣味だね」


 笑顔でそう言った俺に、朱菜はほっとしたような笑みを浮かべる。理解されなかったら、とでも思っていたのだろうか。まぁ、今更どんな趣味があろうとも、それで三人を嫌いになることなんてないのだが。


「それじゃ、電気消すわよ~」


「うん」


 取り敢えず朱菜の言葉に頷く。

 朱菜にはベッドがあったが、本人の希望により今は床に布団を敷いて二人で寝ている。


「それじゃ朱菜。おやすみ~」


 とはいえ、別段することもないと思ったので、電気も消したことだしと俺は朱菜に声をかけた。


「何言ってんのよきよ? 夜はこれからでしょ!」


 しかし、朱菜の返答は違うものだった。『え?』と俺は返す。朱菜はニヒヒ、と笑うと(暗くて見えないが、絶対に笑っている)言った。


「今日こそ、神谷くんとのこと! 聞かせてもらうわよ~!!」


「え、えぇっ!?」


 朱菜はすごく楽しそうだが、俺は全くの反対だ。第一、無いのに。しかし、朱菜はそんな俺を全然気にもとめず、俺の耳元で囁いた。


「……きよ。今夜は、寝かせないわよ?」


 つ、つ……。


「使い方間違ってるぅ~!!」


 フッ、と楽しそうに息を吹きかけてきた朱菜に、俺は精一杯の声で叫ぶのだった。

後書き劇場

第十二回「出番は色々と大変なんです」


きよ「こんにちは、神谷きよです」


女神『女神で~す!』


きよ「今回も作者不在ということで、俺たちがお送りさせて頂きます」


女神『ところできよ?』


きよ「ん? 何?」


女神『私、もう二話に渡って出番無いんですが?』


きよ「ギクッ!! ……えぇ~と、それは」


女神『どういうことですか、きよ?』


きよ「し、知らないよ! 作者に聞いてくれよ!!」


女神『まったく! どうなってるんですかね、あのクソ作者! 私は人気があるっていうのに……!』


緑「私よりは、ましだけどね……」


きよ「!? ……女神、今誰かいなかったか?」


女神『えぇ~? 気のせいだと思いますよ?』


きよ「(絶対誰かいた……!!)」


女神『まぁいいです。それより、きよ。そろそろやっておきましょう?』


きよ「あ、もうそんな時間か」


女神『そうですよ~♪』


きよ「じゃあ、行くぞ~! せ~の!!」


女神『御意見・御感想は随時お待ちしておりま~す☆』


きよ「ここまで見てくれて、ありがとうございました!!」


女神・きよ「では、また次の話でお会いしましょう♪」




Fin

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